走って唐津

最近は、週末が近づいてくると憂鬱になる。長い距離、山を走らないといけないからだ。自分が組んだトレーニングスケジュールに沿ってるだけだから、嫌ならやらなきゃいいのだけど、今年もUTMFにエントリーしてしまったのだから仕方無い。しかも今週は50km走という、レース本番までに組んだスケジュールの中で2番目に長い距離のメニューだった。

50kmも山の中を走るとなると、少なく見積もっても10時間以上はかかる。夜明けと共にスタートしても、ゴールは日没との勝負になるだろう。

週末が近づいてきた水曜の夜、ああ嫌だな憂鬱だなとグチグチ呟いていたら、妻が旅行を絡めてみたらどうかと言った。スタート地点近くの旅館に泊まって次の日の朝に家まで走るのはどうかと言う。それはいいアイデアだけど、せっかく旅館に泊まるなら朝ご飯を食べたい。旅館の朝食を食べずに帰るのはさすがにもったいない。そうだ、ゴール地点を旅館にして、そこまで走って行けばいいのでは。

ということで、走って唐津へ行くことにした。

家から背振山地の中央に位置する金山まで行き、そこから背振をひたすら西へと縦走して、山を抜けたところにある旅館まで行くルートだ。家から金山の登山口まではロードだが、そこからはほとんどがトレイルでアップダウンも多く、鍛えるにはもってこいだ。トレーニングに向きすぎて、しんどいということに目をつぶれば理想的なコースと言える。

出発は朝6時半。日の出前で真っ暗だが、家を出て早良街道を南下している間に夜が明けた。金山の登山口に着いた頃にはすっかり明るくなり、いよいよ唐津まで続くトレイルの旅が始まった。

コースプロファイル的には、最初にドカンと登って金山、井原山、雷山と背振山地の中でも大きな山が続くが、西へ進むにつれて標高が下がっていく前半勝負のコースに見えた。

実際、雷山を越える頃までは順調で、後はもう大きな山は羽金山くらい。予定よりも早く着くかもなと高をくくっていた。

しかし後半も細かなアップダウンが続き、なかなか走れない。しかも山頂と山頂をそのまま繋げたような直登直下のコース取りが多く、とにかくしんどい。前半は平均キロ12分ペースで進んでいたものの、次第にキロ13分を超えるようになり、キロ14分台が近づいてきた。

ゼエゼエ言いながら浮嶽への急登を登っていると、妻から旅館にチェックインしたとLINEで連絡が入った。夕食の時間は18時だと言う。

あと2時間。10時間以上走ってきて、泥と汗にまみれた状態で夕食の席に着く訳にはいかない。風呂に入りたい。そう考えると17時半には到着する必要がある。1時間半で残り10キロ。ギリギリのラインだ。

浮嶽の山頂を超え、日が暮れ始めて薄暗くなってきたトレイルの中を必死で走った。十坊山山頂手前の分岐で、唐津方面に折れて林道に出る。久しぶりの舗装路でスピードをあげて下り続けると、谷口の集落が見えた。

やっと背振山地を抜けた。あとは旅館のある海岸まで約3km。時間は17時を過ぎ、キロ6分で進んでもギリギリだ。みかんのビニールハウスが並ぶ畑の真ん中を何とか止まらずに走りきり、そして海岸が見えてきた。

17時32分、浜崎海岸でゴール。GPSで僕の進捗を確認していた妻が部屋から降りてきて、出迎えてくれた。家からドアtoドアで11時間2分かかった道のりを、妻は車で50分だったらしい。車はすごいねなんて言いながら部屋に案内してもらって、急いで大浴場で汗を流した。

そして待望の夕食。山を走り続けた体で食べるご飯は格別だった。呼子のイカと初物の白魚と鮑と佐賀牛。佐賀の味覚を堪能した。ゴールを唐津にして正解だった。カラカラになった体には糖類も脂質もタンパク質もアルコールもよく染み渡る。たらふく食べて飲んで、朝までぐっすり眠った。

走って旅行に行くとご飯がうまい。これはちょっとした発明ではないか。またどこかご飯のおいしいところへ、家から走って行きたい。

山岳遭難のリスクを低減するテクノロジー

山に行くときは、だいたい1人だ。今までに誰かと一緒に山を歩いたり走ったことは、レースを除いたら数えられるくらいしかない。

元々あまり人とわいわいコミュニケーションするようなタイプじゃないし、山へ行くというのは街中の喧騒から離れて静かな自然の中に身を置く行為だと思っている。だから1人で行くことが多く、なるべく人の少ない山に行きたがる。

しかし単独行は、遭難時のリスクが高い。単独行の遭難者は、遭難したときに死亡・行方不明になる確率が、パーティを組んでいる登山者の約2倍程度になるそうだ。

自分は30代後半で山に目覚めて、山に通うようになった。色んな本やブログを読んだりして自分なりに山について考えてきたつもりだけど、誰かに直接教わったり訓練を受けたことがなく、山岳遭難のリスク対策は万全とは言えないだろう。

だからこそ、積極的にテクノロジーに頼ることにしている。

山に行くとき、特に初めてのコースを通るときは、毎回事前にルートをTrail NoteでGPXファイルに書き出して、SUUNTOのGPSウォッチやスマートフォンの地図アプリGeographicaに読み込ませて持って行く。地図データを事前にキャッシュしておけば圏外の場所でも使えるし、予備のモバイルバッテリーも持っていくことで電池切れのリスクも低減できる。GPSで現在地がわかるので、ルートを外れたらすぐに気づくことができ、道迷いのリスクは大幅に減らすことができる。

道迷いの次に多い遭難理由は滑落だ。どんなに気をつけて通行していても、足元のトレイルが崩落してしまった場合は避けられない。特に単独行の場合は深刻だ。怪我をして動けなくなったり、そのまま気を失ってしまったり、命を落とす事故に繋がる可能性が複数人でいる場合と比べたらずっと高くなる。

だから滑落に対しては、事故にあった後の対策が重要だ。単独行で意識を失ったり、圏外の場所から動けなくなったら救助を呼べない。如何に早く気づいてもらい、正確に自分の場所を伝えられるか。

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IBUKI GPSはそんな課題を解決するために開発された、GPS端末とWebサービスのソリューションだ。会社を辞める前から開発を手伝わせてもらっていて、今日ようやく個人向けの販売開始にこぎつけた。Makuake(マクアケ)という新しい商品や体験を応援購入できるサービスで、今日から先行販売が始まった。

www.makuake.com

IBUKI GPSは軽量・省電力のGPS端末で、内臓しているSIMを通じて通信を行い、3分に一度自分の位置情報をWebサーバーに送信する。その位置情報の履歴を地図上にマッピングして表示してくれるWebサービスと連動しているので、ページのURLを家族や友人に送っておけば、ほぼリアルタイムに自分の現在地をライブ配信できる。

去年の暮れに試作段階だった端末を借りてから、山へ行くときには毎回持っていき、登山口で入山する前に必ずLINEでライブ配信ページのURLを妻に送るようになった。自分にとっても何かあった時の安心感につながるけど、特に喜んだのは妻だった。

山へ行くときは必ず帰宅予定時間を伝えていたけど、どうしても予定よりも時間がかかってしまうこともあった。そんな時、iPhoneを探すアプリで共有している僕の位置情報を見るのだけど、位置情報が点でしか表示されないから、進んでるのか戻ってるのかよくわからなかったそうだ。それが、時系列に線で見えるようになった。これは僕が今年、脊振山地を半分縦走したときのログ。タイムシフト再生で見ると、山の中を進んでいる様子がよくわかる。

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我が家ではこのIBUKI GPSにココヘリを組み合わせて、何かあった時の対応フローを決めている。IBUKI GPSは3分に一度位置情報を送信するが、LPWAで通常の4G回線に比べたら繋がりやすいもののどうしても電波が届かないエリアもある。だから位置情報が動かなくなって1時間以上経過し、その間に何の連絡もなく、電話しても通じない・連絡が取れない場合は、ココヘリに電話して救助を要請するということにしている。ココヘリの電話番号と会員IDを記入した紙は冷蔵庫の扉に貼ってあるので、いつでも参照可能な状態だ。

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もちろん紙の地図とコンパスを駆使した読図力や、山での経験値、純粋な体力など、自分の頭や体を鍛えることも大切な要素だ。新しいテクノロジーはそれらを否定するものではなく、足し算、掛け算で遭難リスクに備えることができる。これからも積極的に、新しい仕組みを取り入れていきたい。そして今日から先行販売が始まったIBUKI GPSも、よりよい仕組みに改善していきたい。

Road to UTMF

UTMFが中止になった。残念だけど仕方がない。去年の12月にエントリーしてから3ヶ月ちょっと、最初に立てたトレーニング計画に沿って走り込んできた。

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だいたい計画通り、きれいにほぼそのまま走ってる。やっぱり最初に決めてしまうという作戦が良かったな。体重も当初目標にしていた65kgを切るところまできた。サンディエゴで100マイル走った時の体重だ。こっちは食事の内容を全部考えて作ってくれた妻のおかげ。感謝してもしきれない。

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昨日はLIVE配信後にやけ酒あおってふて寝して、今日はやけくそになってラーメン食べた。明日からはちゃんとしたい。

トレイルスイーツ

UTMFに向けて、去年の12月から日々計画に沿って走り込んでいる。加えて減量もしている。ブクブクと太って腰の周りにまとわりついた脂肪をUTMF本番までに5kg以上落とそうという魂胆で、ようやく先日目標体重に達した。

減量は大変だ。どれだけ長い距離を走っても、その分お腹が空いて補給するから全然痩せない。結局、食事制限するしかない。食べたいものを我慢しないといけない。大好きな鶏の唐揚げは週に1度。ラーメンも週に1度。毎週買ってたHISADAのチーズは隔週に。糖質を摂っていいのはお昼だけ。厳しいけど、贅肉背負って170kmも富士山の周りを走るのも大変だし仕方ない。

ただし、山を走っている時だけは例外だ。どれだけ食べてもいい。むしろ積極的に高カロリーなものを摂らないと走り続けられない。そうだ、普段は我慢している糖質満載の甘いものを持っていこう。そう思って、毎週山へスイーツを持っていくようになった。山の中でスイーツを食べるのが楽しみになった。毎週毎週、雨でも雪でも暴風でも山に通い続けるといい加減飽きてくるし辛いけど、今日はあれが食べられると思ってがんばれるのだ。

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最初のきっかけはセブンイレブンのチョコタルトだった。いつものように山へ持っていくおにぎりを買おうと寄ったコンビニでちょうどいいサイズのタルトを見つけた。これは良さそうと思って三瀬峠から金山を登り切った時に山頂で食べた。これがうまかった。外側はバリバリ硬いチョコとサクサクタルト生地に覆われているものの、中にたっぷりチョコクリームが入っていててクリーミー。山を走ってると口の中の水分が少なくなるからクリーム系はありがたい。いきなり当たりを引いた去年の年末。ここからトレイルスイーツの探求が始まった。

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次にハマったのがバームクーヘンだ。義理の妹が群馬県のGARBAっていうバームクーヘン専門店の詰め合わせを贈ってくれて、それを毎週山に持って行って食べた。この一口大のサイズ感。走りながらちょっとずつ食べられるから、行動食に最適だった。そして今まで食べたバームクーヘンの中でも一二を争う美味さだった。

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全部食べ終わってからコンビニのやつも試してみたけど、やっぱり今ひとつおいしくない。そもそもバームクーヘンはモソモソしてるから口の中の水分が全部もっていかれて走ってる時はしんどい。

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だけどGARBAのバームは違った。しっとりしてて滑らか。群馬から取り寄せてUTMF本番のドロップバックにも入れたいレベルだ。

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コンビニスイーツで当たりだったのがこのセブンイレブンのフレンチクルーラーだ。パリパリの食感が楽しめるチョコ、ふわふわでモソモソしない生地、そしてしっとりなめらかなクリーム。山でスイーツに求めたい要素が全部入ってる。しかもザックに入れててもぐちゃぐちゃにならない。クリーム系でこれは重要な要素なのだ。

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これはぐちゃぐちゃになってしまった苺のクレープ。ザック背面のメッシュポケットに入れて走ると、着地の振動でスイーツは揺られ続け、半端な強度ではすぐに崩壊してしまう。まあ味は変わらないから美味しいんだけど、汗や泥にまみれた指先で崩壊したクレープのクリームを舐めとるのは、シンプルに汚い。

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コンビニスイーツ以外によく持って行ったのがさかえ屋のお菓子だ。福岡の人以外はあんまり知らないかもしれないけど、南蛮往来というお菓子が有名で、家の近所にお店があるから山へいく前日に寄って買っている。

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もちろん名物の南蛮往来もおいしいんだけど、最高だったのがこの北海道産バターどらやき。やっぱりね、山はクリームなんだよ。なめらかさっていうのが何よりも重要。餡子ってちょっとモソモソして口の中の水分を持って行きかねないんだけど、そこに北海道バターが潤滑油のようにからむのね。まじでうまかった。

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これは反則だけど、まあ仕方ない。油山牧場もーもーらんどのソフトクリーム。冬はね、寒くてなかなか食べられないんだよね。あそこ牧場で木がないからいつも風が強くてね。立ち止まってるだけで凍えそうになるから走り続けないといけなくて、多少暖かくならないと食べられないわけ。それでこの前の週末、3月になってちょっと気温も上がってきたしそろそろ行けるかと思って久しぶりに買ってみた。甘さが控えめなんだけど濃厚でね、ほんとにおいしいんだよね。だけど生憎の雨模様、体はびしょぬれで3口目くらいから体温が持っていかれて寒くなっちゃって。あわててウィンドシェル着込んで走りながら残りをたいらげた。体は芯から冷えたけど、おいしかったな。

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だんだん切り株までおいしそうに見えてくる。来週は何持っていこうかな。

雪の油山から脊振へ

福岡ではここ数日雪が降り続け、山が真っ白になっていた。こんなチャンスはなかなか無いので、雪を堪能するため山へ行った。

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最初は家からいつもの油山を登るルートへ。普段登り慣れた道が、いつもと全然違う表情を見せてくれる。

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油山からは荒平山へ。油山の山頂までは踏み跡があったけど、そこから先は動物の足跡しかなかった。細長い足跡は多分鹿で、丸いやつが猪だと思う。

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脇山へ降りて、椎原へ向かう。油山が可愛らしく思える山容。ここからが本番だ。

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椎原へ向かう途中に牛がいた。カメラを向けたらうんこし始めた。チャーミングなやつだ。

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椎原登山口から椎原峠を目指す。メタセコイアの森だ。

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止まると寒いから歩きながらおにぎり食べる。

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だんだん雪が深くなってきた。最初は踏み跡をなぞっていたけど途中で先行していた人を追い抜いてしまい、自分でラッセルしながら進んだ。

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もうすぐ椎原峠というところで、降っていた雪が激しくなってきた。このまま1人で進むのも危ないなと思って、今日はここで引き返すことにした。

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もときた道を引き返す。下りは自分の足跡があるから楽だ。うひょーとか言いながらふかふかの雪を蹴散らして楽しく駆け降りた。

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どんどん降雪が激しくなってきた。あそこで引き返して正解だったと思う。

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下山して集落に降り、ロードを走って帰った。山の上よりも風が強くて寒いくらい。家に帰ったらIBUKIを見ていた妻がちょうど帰宅時間ぴったりに風呂を沸かして待っていてくれた。足先が冷え切っていたので、風呂が天国だった。

僕は九州出身だから、雪を見るとつい楽しくなって雪の中に突っ込んでいきたくなる。東北出身の妻は雪を見てもただ面倒だと感じるようで、外に出たがらないけど。福岡でこんなに雪が積もる機会はめったいないんだからもったいないと思う。次はもう少し装備を充実させて脊振や金山の山頂まで行きたいな。

飯盛山から四山一周

今日は飯盛山から高地山、叶岳、鐘撞山、高祖山と反時計回りに一周してきた。

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家から飯盛山までロードを走って向かう。正面から望む飯盛山は綺麗な三角。

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飯盛山は山頂手前の傾斜が激しく、両手で岩やロープを掴みながらよじ登る箇所がいくつかある。400mに満たない低山なのに、なかなかパンチが効いてる。

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飯盛山から高地山を越えると、糸島への眺望が開ける。今日は曇ってたけど雰囲気がある。Ghost of Tsushima をやってから、この辺りの海岸を眺める度にモンゴル人の襲来に思いを馳せている。

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叶岳を超えて降る途中に鎮座している岩。叶岳の山頂にある神社は六百年くらい前、京都の愛宕山から分霊して建立したらしい。何度も通った愛宕山の名をこんなところで見るなんて。縁ですね。

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鐘撞山の山頂でおにぎり。山に来る時はいつもゆかりおにぎりと決まっている。少し酸味があるのがいいのだ。

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鐘撞山からはこれから目指す高祖山と飯盛山へと戻る稜線がよく見える。

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今日最後の山頂、高祖山。ここまで何度となく見えていた玄界灘から一転、ここからは南側の田畑と山々が覗いてた。さあ帰ろう。

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飯盛山の登山口まで降りてきた。今日は沢山の人とすれ違った。飯盛山の山頂も帰りには十数人いたと思う。シーズンかな。

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家に帰ってシャワーを浴びて、西新で焼きちゃんぽんを食べて姪浜の風呂でサウナを堪能した。充実した1日だった。

UTMFエントリーした

今週からUTMFのエントリー受付が開始した。最初に来年の大会についてアナウンスがあった時、ああやるんだなくらいにしか思っていなかった。ふと、自分のITRAのポイントどうだったっけと思って見に行ったら意外とクリアしていた。一昨年のサンディエゴで走った100マイルと、去年のおんたけの100kmでちょうど10ポイント。せっかくだしと思ってエントリーしてみた。

抽選だし、今年エントリーしていた人たちが優先で残る枠が少ないから、当たる確率は低いと思う。それでもトレランを始めた頃、いつか自分もUTMBやUTMFに出たいなと憧れたレース。もしも当たった時のために、この緩み切った体を鍛え直さないとと思って今朝は山へ行った。

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山へ行くのは久しぶりだ。今年はレースがことごとく中止になって、目標もなかったから、たまに朝何となく近所を走ってるくらい。登りの脚がだいぶ衰えてるだろうなと思ったけど、意外と登れた。心肺はきつくてずっとハアハアいってたけど。

最近暖かいからか、11月も終盤だというのにあまり紅葉が進んでなかった。UTMFの抽選結果が発表される12月4日には、見頃を迎えているだろうか。

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夏は水

夏は一番好きな季節だけど、それでもこの季節のロード走はきつい。特にソーシャルディスタンスが求められる昨今、なるべく人のいない場所を選んで走るから河原とか田んぼとか周囲に建物の少ない場所を走ることになる。いくら朝でも、直射日光はきびしい。

今日は木陰と沢の水を求めて山へと向かった。あまり時間がないから山頂まで行かず、片江の展望台で折り返し。水場を巡って腹がはちきれるくらい飲み、頭から何度もかぶり水。山から降りるとシメの滝行。やっぱり夏は水のあるところがいい。

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サンダルで走る

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私の趣味はランニングで、特に山を走るのが好きです。

元々は運動がとにかく苦手で、ランニングはもちろん他のスポーツもやってなかったのですが、6年前に友人が家に遊びにきた時に履いていたサンダルがきっかけで走りはじめました。

それがルナサンダルっていう、アメリカ人がシアトルで作ってるサンダルです。「何そのサンダル、かっこいいね」って言ったら、とりあえずこの本を読めって後日「BORN TO RUN」という本が送られてきました。人類、つまりホモサピエンスは走ることに特化して進化したっていう主張の本なんですけど、見事にはまってしまって、本を読み終わってすぐに当時新風館にあったアウトドア系のお店に会社の昼休みに行ってサンダル買って走り始めました。

それからずっと、普段はサンダルで走っています。冬はさすがに足が霜焼けしそうなので靴を履くのと、レースに出る時はガツガツ下りを攻めるために専用の靴を履くんですけど、暖かくなったら普段はだいたいサンダルです。

サンダルで走ることの何がいいかと言うと、まず気持ちがいい。ソールの厚さが11mmで、ペラペラなので足裏の感覚がダイレクトに伝わるんです。草の上と土の上とアスファルトの上とで足裏に伝わる感触が全然違って、大地を触ってる感触がある。それがまず楽しいんです。

後はやっぱり、人間の体が持つ本来の構造を使って走れる、ということです。よくサンダルで走っていると言うと「怪我しないの」って聞かれるんですけど、実は大きな怪我はしにくいんですね。小さい怪我、例えば山を走ってて石に爪先ぶつけて痛いとか、滑って転んで擦りむいたりとか、そういうのはあるんですけど、膝を痛めたりとかそういう大きな怪我は逆にしにくくなります。

なんでかって言うと、怪我しないようなフォームでしか走れないからです。ぺらぺらのゴム1枚で走ってるようなものなので、例えば踵から着地するとか、体に無理が生じるようなフォームで走ると痛いんですね。だから自然と体に負担がかからないような走り方になります。

他にも、足の指が自由に動いて地面をつかもうとするのが楽しいとか、山を走ってて暑くなったらそのまま沢にじゃぶんと入ってクールダウンできるとか、良いことがたくさんあります。開放感があって気持ちいいし、自然と一体になれる感覚と、自分の足とサンダルだけでどこまでも行けるっていう真の自由が手に入ります。

みなさんもぜひ、この夏はサンダルで山を走ってみてはいかがでしょうか。でもその前にかならず、BORN TO RUNを読んでからにしてください。この宗教に入門するための経典です。

油山

今朝は山へ行った。家から1キロほど走ると梅林緑道というトレイルヘッドに着く。ここから油山北側の稜線を登っていく。

油山は福岡市民にとって、最も馴染み深い山だ。幼少期を南区で過ごした僕にとっても、山といえば油山だった。小学校の遠足やボーイスカウトのキャンプで、何度となく訪れた山。

標高は597メートルと低い里山だけど、東には片縄山、西には荒平山が両脇を固め、北側稜線のこぶにはそれぞれ片江山、妙見山と名がついている。今日は北側稜線の入り口から、片江山を経て妙見山頂まで登った。

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空は雲ひとつない快晴。家を出た時はきりりと冷えた空気が肌寒かったけど、登っていくうちに体が熱くなって稜線を吹く風が心地良い。今朝は時間がなかったので、油山の山頂まで行かず妙見で折り返す。帰りはずっと下り。朝日に照らされた稜線を気持ちよく走って降りる。

登りはきつい。息が切れてはあはあ言いながら重力に逆らって足を一歩ずつ上へ上げ続ける運動だ。下りは全然違う。うねうねと曲がりくねった細い山道をびゅんびゅん飛ばしながら走る。ジェットコースターのような疾走感の中で、感覚を研ぎ澄まして瞬時に進むルートと足を置く場所を判断し続ける。忍耐の登りと集中力の下り。そういう変化があるから、舗装路よりも山道を走る方が楽しい。

帰りは妙見鼻の分岐を西に折れ、徳栄寺の境内まで一気に降りた。

Kyoto Mount Chop! 13th ワイルドソロの思い出

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やってきましたマウントチョップ。前回がワイルドもマイルドだったし、前々回は松尾坂1回の少しマイルドなワイルドだったので、久しぶりにワイルドすぎるワイルドが帰ってきました。松尾坂2回に焼杉まで。胸が熱くなります。

僕自身も去年6月に100マイルを走ってから、おんたけ100kmや三十六峰が中止になり、レースは前回のマイルドチョップを走っただけ。こんなに期間空いたことはあるのかというくらい久しぶりのがっつりトレイルです。前々回のチョップでワイルドソロ9位という輝かしい成績を残したものの、半年間の怠けライフの末に前回は39位と見事な凋落。年明けから挽回を誓って2ヶ月ちょっと走り込んできたので、どこまで復活してきたかの腕試しのつもりで挑みました。

ココ最近は忙しく前日はちょっと体調が悪くて心配したものの、当日の朝起きたら嘘のように元気になっていて、こりゃいけるぞと、雲行きの怪しい天気も久しぶりの雨のトレイル楽しむぞと、ポジティブ満開の前向きさでスタートラインに立ちました。フレディのコール&レスポンスに続いてのいつもの唱和。

キョーート!マウントー!チョーーーップ!!!

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撮影:近藤さん (以下、僕が写ってる写真は全て近藤さん)

序盤は順調。北白川児童公園をスタートしてパブテスト病院脇からいつもの瓜生山を巻いていくトレイルへ。前の人に続いてせっせと登っていきます。畝ちゃんと平田さんがすぐ後ろにいて、この2人には負けられない!と勝手な対抗心を燃やしてどんどこ飛ばしました。京都一周トレイル63番から谷を降りて比叡アルプスの登り。まだ雨も降ってないしちょっと暑いくらい。ウィンドシェルも脱いで手袋も外して半袖で水をぐびぐび飲みながら登りました。

登りきって後ろを向いたら畝ちゃんがいない!これはチャンスと快調に下りのトレイルを飛ばし、石鳥居を超えて、水飲対陣之跡を超えて、梅谷を超えて八瀬の市街地に降りてきました。ケーブル駅の横に最初のエイド。ここまで9kmを1時間18分。かなり快調です。コーラを飲んで、今子さんおすすめの生八ツ橋をいただいて、いざ最初の松尾坂へ。

f:id:nmy:20190310101311j:plain つづら折りの連続をひたすら登り続けて西山峠を超え、スキー場跡へと向かう直登をよじ登った先にありました。今回のクイズタイム!

f:id:nmy:20190310101326j:plain 口が臭いって嫌やなー。

f:id:nmy:20190310101331j:plain おしりやったら普通やなー。

f:id:nmy:20190310101358j:plain 脚の先やったら常時にぎりっぺやなー。

f:id:nmy:20190310101437j:plain 三択だと思ってたけど4番あるんやなー。

f:id:nmy:20190310101645j:plain 答えの前に焦らしてくるスタイルもすっかり定着。

f:id:nmy:20190310101731j:plain 本当に良い景色見られたなー。

f:id:nmy:20190310101932j:plain そして意外にもあっさりと正解発表!胸でした〜。

f:id:nmy:20190310102110j:plain 正解発表の後には恒例のトリビアが。後ろ脚の付け根やったら胸ちゃうやーんと思ったけど、カメムシは後ろ脚の付け根に胸があるんだった。勉強になります。

f:id:nmy:20190310102634j:plain 登りは苦手でいつもちょいちょい追い抜かれるけど、多少は想定範囲内。松尾坂を登りきってこっからまた挽回や!と横川を目指して走ります。まだまだ快調。この辺から雨が降ってきたけど体もホットです。

f:id:nmy:20200826162250j:plain 競合い地蔵から東海自然歩道を走って下ってるとまたチャンピオンベルトを巻いた近藤さんが。本日3回目です。雨の中お疲れ様です!

f:id:nmy:20190310110659j:plain 第2エイド、横川の駐車場に到着。ここまで調子もよくて丹羽薫さんに「早いね」なんて言われて有頂天。ウッキウキでうどん食べました。ごちそうさまでした!

平田さんが追いついてきたけど、トイレに行ってるスキにこっそり出発。

f:id:nmy:20190310113702j:plain 横川から仰木峠への道は始めて通ったけど、一回谷に降りてからエグい登りがあってビックリ。しかもすぐ終わるやろと思ったら結構あるし。手こずって時間がかかったからか、その後の仰木峠から大原への下りで平田さんについに追いつかれた!

大原の町に降りたら雨が本降りに。信号待ちしてたら平田さんが「雨でコース短縮ならないですかね」とか都合のいいことを言い出すので「虫がよすぎるでしょ!」とか言ってワイワイ突っ込んだりしながらファミマへ。

f:id:nmy:20190310114910j:plain 今日、最大の失敗はココ。それはファミマで水しか買わなかったこと。ここまで快調だったし、まだジェルも沢山あるからまあいいかと水だけ1リットル買って補充して、買い物中の平田さんを置き去りにしてすぐ出発。

ファミマから焼杉への登山口までの舗装路を走っていると、時計の針が11時50分を指す。運命の正午がついに間近になってきた。

実は、レース当日の昼12時は、息子の大学受験合格発表の時間だったのです。

f:id:nmy:20190310122122j:plain 最初は正午だとちょうど大原のファミマあたりかなと思ってたけど、ちょっと快調で突っ込みすぎて、今日一番キツイ焼杉山の登りに差し掛かっていた。あと5分...。スマホを取り出して、合格した受験番号が表示されるはずのページを開く。雨粒がスマホの画面に降り注ぎ、うまく操作できない。

何とか準備完了して、ハアハア息切れしながらスマホの画面を凝視して焼杉を登る。隣にはいつの間にか追いついてきた平田さんがいて、今から合格発表なんだとか、うまくページが表示されないとか、サーバーが重くなってきたとか、電波がこの先つながるか心配だとか、画面から目を離さずに一方的にまくしたてた。

そして迎えた運命の正午。何度リロードしても、画面が真っ白で接続できない。アクセスが集中してるんだろうと思って少し時間を置いてリロードするけど、焦って気が気じゃなくて1分がめちゃくちゃ長く感じる。やっと画面が表示されたけど、まだ発表されてない。焦れる。リロードしながら焼杉山を登り続ける。2分経ち、3分経ったころ、ついに表示された。合格者の受験番号が書かれたPDFへのリンクがある。降りしきる雨とびしょ濡れの手袋と震える指先に苦戦しながらも、狙いを定めてタップした。

表示された記号と数字の羅列。息子の受験番号を探す。情報の洪水に焦ってどの辺かよくわからない。1、2、3、4...あれ、番号がない。頭が真っ白になる。まさかそんなことがと思って、よく確認したら二桁目が違ってた。ここじゃない。もう少し戻って、この辺にあるはず。息子の番号。あった。あれ、ほんとかな?本当にこの番号だっけと確認する。あってる。じゃあさっき見た数字は焼杉の見せた幻覚じゃなかったか、もう一度確認してみる。あってる。間違いない。この番号だ。合格だ。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおやったああああああああああああああああああああああああああああ」

焼杉山が震えるくらい力いっぱい叫んでいた。隣を並走してくれてた平田さんがおめでとうと声をかけてくれる。ありがとう平田さん。さっきは置いていってごめんね。結構離れて後ろから登ってきていたトリオの人たちも大声で何があったのかと叫んでいる。息子が、合格したんです!僕も大声で応じた。みんなが集まってきて、祝福してくれた。

ああ、やったんだ。本当によかった。あいつの努力が報われたんだと思って、とにかく嬉しかった。涙は雨に紛れるから助かった。何度もやったやったと呟いて、そのまま息子に電話しておめでとうと伝えて、後は興奮して何喋ったか覚えてないけど、いま山を走ってるから後でまたかけるねって言って電話を切った。

ふと気がついたら、平田さんはいなかった。これまで散々トイレやファミマで置き去りにしてきたんだから当たり前です。

f:id:nmy:20190310123559j:plain しばらく嬉しくて嬉しくて、これまでの色んなことが頭の中を駆け回っていた。そうこうしている間に、一番しんどい焼杉の登りも残り半分くらいになってる。辺りは濃い霧が立ち込めていて、雨も降り続けてだんだん寒くなってきた。脚も重たくなってきた。

f:id:nmy:20190310124851j:plain いくつもの偽ピークを経て、焼杉山頂に到着。寒くなってきたからウィンドシェルを着て、ジェルで補給して、次の翠黛山を目指す。

f:id:nmy:20190310131953j:plain 焼杉からの翠黛山と金比羅山は、大した登りはない。どちらかと言うと尾根沿いで走りやすいトレイルのはずだけど、なぜか体が動かない。お腹が空いてきた。またジェルを1つ空ける。そして次々と後続のランナーに追い抜かれる。

f:id:nmy:20190310133251j:plain ああ、金比羅山はこんな感じだったな、このむき出しの尖った岩が金比羅山って感じ。ここから江文峠まで下りだなーとか考えてる。馴染みの道だし、下り基調で特に問題のないトレイルのはず。それでもスピードは出ない。どんどん追い抜かれる。ウィンドシェルもびしょびしょで更に寒くなってきたからレインウェアに着替えた。

f:id:nmy:20190310143548j:plain 江文峠を超えて、瓢箪崩山の登りへ。ここで完全に撃沈。松尾坂や焼杉の登りなど、急で激しい登りがいくつもある中で、よりによって一番楽な部類の瓢箪崩山の登りがこんなに辛いなんて。里山の低山なのにぐやじぃ...。

何とか山頂を超えて、ボーッとしながら緩やかな下りの尾根を歩いていたら後ろから畝ちゃんが走ってきた。心配して声をかけてくれるけど、曖昧な返事を返す元気しかなかった。焼け石にかける水と化したジェルを飲み込んで、少しでも温まろうとレインウェアのフードを被って紐も絞って進む。八瀬まで降りたら、何か食べられる。

f:id:nmy:20200826162846j:plain フラフラ下ってると本日4回目の近藤さんがいた。息子が受験合格したんですよって報告する。おめでとうおめでとうと祝福してもらって元気が出てきた。わっしょいわっしょい。

f:id:nmy:20190310152448j:plain 下りきったところの湧き水をごくごく飲んだ。八瀬のエイドはもうすぐだ。進み始めたら寺島さんがやってきた。キツイっすねーとか言いながらロードを走っていくけどついて行けない。しばらくロードを走ってようやくエイドに到着。今子さんがいる。バナナとドーナツとクリームパンと生八ツ橋とポテトチップとこれは中村さんが出張で買ってきた海苔を揚げたなんかおつまみみたいなビールが飲みたくなるやつなんですって言われてもりもり食べた。寺島さんがコンタクトが亡くなって仕方なくここでレース終わらないかなとか都合のいいこと言っていて、今子さんが突っ込んでる。沢山食べて、笑ってたら元気が出てきた。

でもまだ関門30分前だから大丈夫ですよ、という一言でふと気づいた。そうか、制限時間があるのだった。チョップで制限時間なんて、今まで意識したことなかった。もしかしたらゴールできないかもしれない可能性に、今日初めて気がついた。

f:id:nmy:20190310161719j:plain エイドを出て2度目の松尾坂に挑む。既に時刻は16時を過ぎ、ただでさえ曇っていた空が更に暗くなってきた。元気は出てきたけど、脚に力が入らない。筋肉在庫が空になっていた。さすがに甘くなかった。やっぱり長い距離を走ってないと筋肉在庫量の最大値が減っていくんだろうな。年が明けて2ヶ月間、週末に20〜30km山を走ってただけじゃ長いレースに耐えられる脚はそう簡単に戻ってこない。そういうことなんだろうなと実感しながら残った微力で松尾坂を登る。

途中、西山峠のあたりで他のランナーの方にゴール制限時間が18:30だと教えてもらった。残り2時間で約8km。このまま順調に行けば十分間に合う時間だった。それでも、もし何かあったら、間に合わない時間だ。

f:id:nmy:20190310164312j:plain 登りきったゲレンデは霧に覆われ、何も遮るものがない野原は強風が吹きつけてめちゃくちゃ寒い。ここからは水飲対陣の後の沢から石鳥居までのちょっとした登り以外はほとんど下り。この辺からは誰とも会わないし、ずっと走りやすいお馴染みのトレイルが続くので黙々と走った。

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f:id:nmy:20200826163109j:plain 9時間35分40秒、ワイルドソロ28位でのゴールでした。いやはや、色々あったけど楽しかった。息子の合格祝いのウィニングランにしては無様だけど、久しぶりのワイルドなチョップを堪能できました。やっぱりチョップは最高です。降り続ける雨の中、エイドや誘導でボランティアし続けた方々には頭があがらないです。

f:id:nmy:20200826163126j:plain というウォーミングアップを経て、もちろん本番はさざんか亭。ウォーミングアップでは補給がうまく行かなかかったから、本番での補給は万全です。ハイドレーション(ハイボール)は常に切らさないよう気をつけました。補給は重要ですね。

雪の持越峠

先週はあんまり走れなかったし昨日はサボったし、今日こそ距離を踏もうと思ったけれど、午後から予定があって12時までには帰ってきたい。そうするとトレイルで20km以上走るのは時間的に厳しい。というわけで持越峠を超える35kmの峠走にした。京都は昨日から雪が降っていて、家の周りでも少し積もってる。これは北山の方はやばいかもなと思ったけど、まあ舗装路なら何とかなるやろうと朝8時に出発。

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福王寺の交番から高雄方面へ。北へ進むと少しずつ雪が深くなっていく。歩道に積もる雪も数センチくらいだったのが、いつの間にか10センチを超えてきた。

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高雄の集落はすっかり雪の中。高山寺を過ぎると歩道がなくなり、狭い車道の端っこを走る。車が跳ね飛ばしたグシャグシャの茶色い雪が積み上がったところ。進みにくいし、足先が冷えて冷たいし、たまに通り掛かる車が新たな氷水をぶっかけてくる。

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杉の里トンネルの上の旧道は車両進入禁止で、動物の足跡しかない新雪を踏みしめながら進んだ。ふかふかの雪に足を突っ込むたびにキュッキュと音がする。楽しくなってきた!

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中川を超え、持越峠を目指して更に北へ。このあたりになると積雪が20センチを超えてくる。車もほとんど通らないので、車道の雪の少ないところを進むんだけど、車輪に踏み固められて凍ってめちゃくちゃ滑る。登りだしなかなかスピードが出ない。

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持越峠の手前でホイールローダーとすれ違った。こんな雪の日に大変だなと思ってしばらく進み、持越峠の登りに差し掛かったら道路が綺麗に除雪されてる!道路脇に積み上げられた雪の跡が真新しく、さっきのホイールローダーに違いない。ありがたやありがたや。

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と思ったのもつかの間、持越峠を登りきったところでちょうど除雪が終わってた。

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しかしこの下りが最高だった。雲ヶ畑の集落に出るまで、全く踏み跡のない真っ白なふかふかの新雪で覆われた道が続く。童心に返ったように夢中で一気に駆け下りた。僕は九州出身で、子供の頃に雪の上を駆け回った記憶なんて無いけど。最高に楽しかった。

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雲ヶ畑の小学校の前の自販機でリアルゴールドを飲んだ。夏は街中を走ると暑いから、持越峠を超えて雲ヶ畑によく来ていた。そんなとき、この自販機で飲むリアルゴールドが最高なのだ。久しぶりに飲んでみるかと買ってみたら、死ぬほど冷えてて口の中がちょっと痛いくらい。止まってると寒いので一気に飲んでまた走り出した。

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山幸橋までいつもなら走りやすい緩やかな下りが続く。今日はグチャグチャとフカフカとツルツルが交互にやってくる退屈しない路面状況。脚の筋肉の在庫が切れかかってきた。

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どうにかこうにか山幸橋へ。ここまで来たらもう雪も少なく走りやすい。それでも雪と格闘した脚は既に重く、キロ6分超えると帰る時間も遅くなるのでなんとか5分台で走らないとと思ってがんばって帰った。全部で35km。雪の峠道を堪能できて楽しかったけど、ヘトヘトになりました。

トレイルランニングフォーラム

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今日は朝5時半に起きて、伏見の龍谷大学で行われるトレイルランニングフォーラムへ。朝のランニングセミナーはチケット購入時に講師が選べたのだけど、国内トップランナー勢揃いっていう感じでめちゃくちゃ豪華。僕は奥宮さんのセミナーを選択。人に走り方を教えて貰うのは初めてだったけど、ランニングフォームの細かいところまでかなり詳しく説明してくれて、すごくわかりやすかった。1時間半の講習の中でみっちり教えてもらえて、お土産大量にもらった気分。すぐに身につくものではないけれど、日々走る時に1つずつ思い出しては意識していけば、少しずつ良くなっていくと思う。

いやーいいこと聞いたなーと思って鴨川から会場まで走って戻る道中、自分のフォームに取り入れて走ってたつもりだったけど、奥宮さんから直々に姿勢を指摘してもらった。姿勢気をつけていきたい。

フォーラムの内容では、鏑木さんと上田くんの対談がすごく良かった。去年、怪我や病気で苦しんだ2人。特に鏑木さんが去年の信越に出場を決めたくだりや、初めて完走を目標に走って一般ランナーの目線に気づいた話が胸に響いた。50歳を超えて得た新たな視点。いい話を聞かせていただきました。

しかし朝から夕方まで、こんなにみっちりトレイルランニングの話聞くことなんてなくてもう頭がパンクしそうだった。いろんな立場の人がいろんな視点で全然違う話をしていて、トレイルランニングは多様性を受け入れる懐の深さがあるなと思った。自分の流儀に従って、自分のスタイルで付き合っていきたいっす。

San Diego 100 その3

前回:https://ninomiyateppei.com/entry/2018/07/30/182624

Dale's Kitchen

夜中の3時半、115km地点の第10エイドDale's Kitchenを出発した。最もきつい登りが終わり、ここからは大きな登りはもうない。細かなアップダウンで下り基調の走りやすいトレイルが続く。ただ、もう脚の筋肉は終わりが近づいていた。制限時間までは1時間30分の貯金がある。ゆっくりでも走り続ければ間に合うはずだけど、走り続けられるかどうかが問題だった。

去年はDale's Kitchenまで登りきったところで脚の筋肉を使い切り、次のTodd's Cabinに着いたのは制限時間ギリギリ。背後に迫った制限時間に終われ、焦って必死に動かない脚を引きずって何とか走り続けたものの、次のエイドPenny Pinesに着いたのは制限時間の4分後だった。

ここからは背後に迫ってくる制限時間との戦いであり、動かない自分の脚との戦いだ。手持ちは貯金90分と終わりかかった脚。あまりいい手札じゃない。

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121km地点、第11エイドTodd's Cabinに着いたのは朝の4時48分。去年は明るくなっていたエイドも、まだ真っ暗だった。貯金は72分まで減ってきた。このエイドにも、ドロップバックはない。持参したMag-onのジェルはとっくに在庫切れだったので、エイドに置いてあったCLIFのジェルをいくつかザックに入れた。アメリカのジェルは甘くて好きじゃないんだけど、贅沢は言ってられない。脚を引きずりながらすぐに出発した。

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去年制限時間に引っかかってリタイアしたPenny Pinesに向かう途中、ようやく夜明けを迎えた。温度差が激しすぎて、デジカメのレンズ内部に霜が降りていて写真が全部ボケボケになってる。

寒さも一段落してきたけど、脚はなかなか動かない。下り基調の走りやすいトレイルだけど、脚を置く度に下りの衝撃が脚に響いて痛い。去年泣きながら走った下り。今年は朝日に照らされてキラキラしていた。


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130km地点、第12エイドのPenny Pines 2に着いたのは朝6時18分。あの場所に帰ってきた。あれから1年、やっとここから続きができる。貯金は72分のまま減ってない。行ける行ける。

エイドのテーブルには、沢山の食べ物が乗っていた。よくよく見るとRICE BALLSと書かれたタッパーにまん丸のおにぎりが入っている。まさかアメリカのエイドでおにぎりが食べられるなんて! 嬉しくて1つ取り出して口に放り込んだら、芳香剤の味がした。香水に漬けられたようなお米の塊。何とか咀嚼して飲み込んだものの、その香りに胃が堪えきれずに逆流してしまった。せっかくのおにぎりなのに申し訳ない...。

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残り50km。ここからは未知の領域だ。脚の筋肉はとうに使い切り、着地する度に右膝に痛みが走るようになっていた。

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東側のアンザボレゴ砂漠から日が登り、PCT沿いの山々が朝日に照らされてあまりに美しい。

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走ると着地の衝撃で右膝に鈍い痛みが走る。ちょっと走っては歩き、痛みが収まったらまた走る。その繰り返しで何とか進む。気持ちの良い快晴の朝で、絶景の下り基調の走りやすいトレイル。これ以上無い環境のはずだけど、楽しむ余裕はもうなかった。痛みを我慢しながら、走って歩いてを繰り返した。

136km地点、第13エイドのPionner Mail 2 を超えた。残るエイドは1つ。ゴールまであと25km。まだ朝の8時前だけど、既に暑い。気持ちのいい朝なんて一瞬だった。また暑さとの戦いが再開した。もう、いい加減にして欲しかった。

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走って歩いての繰り返しで、後続のランナーに抜かれ続けた。みんな追い抜いて行くときに「Keep on moving!」とか「Almost done!」とか声をかけてくれて、とにかく励ましてくれる。みんな条件は同じはずで、自分だって辛いはずだけど、ひたすら励ましてくれるのが本当に嬉しかった。

絶景の続くPCT。右膝の痛みと、2日目の暑さでもうボロボロだったけどたまに走りを交えて進んだ。だんだんと歩きの割合が高くなってくる。もう膝の痛みが耐えられないくらいになっていけど、進む以外になかった。

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最後のエイド、Sunrise 2に到着した。10時を過ぎて、また暑さでフラフラだった。エイドの人にボトルを渡して、たっぷり氷の入った水をお願いした。補給の間、曲がらない膝をかばいながら何とか椅子に腰掛けた。

隣の椅子に座った男性がいきなり「去年、Penny Pinesでリタイアしただろ」と声をかけてきた。「去年、あそこで君を見たよ」と言う。「ヴィンスだ」そう名乗った彼に「テッペイです」と応える。僕の名前はだいたいアメリカ人に正しく伝わらない。「テペイ」か「テッピ」くらいが関の山で、正しく「テッペイ」と発音されたことがない。自分のゼッケンに書かれた綴りを見せて「テッペイ」だと言うと、彼は正しく発音してくれた。もうゴールしたようなもんだよと続ける彼に、いやいや膝が痛くてここからが大変なんだよと言う。最後は握手して別れた。「ゴールで会おう」

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ゴールまであと14km。あと3時間42分以内に到着すれば完走だ。ずっと歩きだと、ギリギリ間に合わないだろう。できるだけ走らないと。フラットか、ゆるい下りの続く走りやすいトレイル。遮るものの何もない、直射日光の灼熱トレイル。Buffに氷を入れてもらって出発したら、いきなり悪寒がして震え始めた。炎天下なのに。もう体温調節機能がおかしくなってる。

もう歩いていても右膝が痛く、体温がめちゃくちゃになって寒かったり暑かったりする。残り何キロあるのかわからない。SuuntoのGPSウォッチは電池が持たないから、1分に1回GPSをチェックするモードに設定していて距離なんて当てにならない。貯金はもう60分を切っていた。あとどれくらい余裕があるのかわからない。

次々に後続のランナーに追い越され、その度に励まされる。ありがとうありがとう。膝は痛いし、めちゃくちゃ暑い。水が足りるかどうかも心配。あと少しなのに最後の最後までこんなに苦しいとは。

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歩いて歩いて歩いて、たまにちょっと走ってを繰り返し、やっとカヤマカ湖畔に戻ってきた。ゴールの制限時間まであと1時間を切っている。ここからどれだけ進んだらいいのか、よくわからない。もう全く走れなくなっていた。歩くスピードを上げる以外にできることはない。

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ぐるりと湖畔を迂回すると、やっとゴールが見えてきた。去年、井原さんを迎えにきたところ。去年はここから井原さんと一緒にゴールまで歩いたけど、ゴールテープの直前で僕は道を外れた。リタイアした自分には一緒にゴールテープを切る資格がないと思ったからだ。でも今年は自分の脚でここまで来た。僕がゴールする番だ。色々なものがこみ上げてきた。

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31時間19分。制限時間41分前に完走した。堪えていたものが堰を切った。

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号泣していたら、コースディレクターのスコットさんやゴールにいた人たちみんながお祝いしてくれた。

バックルを受け取ってテントの方に向かおうとしたら、いきなり悪寒がして震えが止まらなくなり、脚も動かずにその場に崩れ落ちて救護の人に抱えられ、テントの中のコットに運ばれてしまった。寒気がして全身が震えるので、毛布を被せてもらってしばらく寝ていた。ゴール後の感慨に浸ったり、ご褒美のブリトーを頬張ったり、ラストランナーを拍手で迎えたりすることはできなかった。これが僕の限界だったんだと思う。

ボロボロだったけど、何とかゴール出来て良かった。のそのそとコットから起き出して帰る時に、色んな人からおめでとうと声をかけてもらった。ああ、本当にゴールできたんだなと思った。本当によかった。

本当に、よかったよ。

San Diego 100 その2

前回:https://ninomiyateppei.com/entry/2018/06/29/122338

Pine Creek

58km地点の第5エイドPine Creekに到着したのがスタートから9時間後の15時。去年のタイムより1時間弱早く、制限時間よりも2時間以上早い。1日で最も気温の高い時間帯に、コース中最も標高が低く暑い場所を超えた。水が無くなった時はどうしようかと思ったけど、何とか乗り切れた。制限時間の貯金も2時間あるしこれは行けるぞと、手応えを噛み締めながら出発した。

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ここから次のエイドまで登りが続く。去年は夕方に差し掛かる時間だったのでまだましだったけど、今年は15時過ぎ。めちゃくちゃ暑い。ガレた登りと暑さでクラクラしてくる。

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道端のサボテン。転んで突っ込んだらめちゃくちゃ痛そう。

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しばらく進むとやっと木陰のある森が現れた。直射日光を浴びなくても良い場所、何時間ぶりだろう。更にコース中唯一の沢を横切った。アメリカの沢の水飲むのは怖かったからやめといたけど、頭からじゃぶじゃぶ浴びた。

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森を抜けるとまた灼熱の登り。次のエイドまでずっとこの繰り返し。道端に座り込む人が増えてきた。60kmを超え、そろそろ脚がずっしりと重くなってきた。

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登り続けて2時間くらい。ようやくフラットになってきたけどまだ暑い。もう17時なのにまだまだ暑い。去年のこの時間は涼しくなってきてたのに、さすがに今年は異常だ。水も残り少なくなってきて焦る。

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前のエイドを出発して2時間半、ようやく70km地点の第6エイド、Penny Pines に到着した。ドロップバックに入れておいたライトを取り出して、これから訪れる夜のパートに備える。

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ハチのたかるスイカを頬張って出発した。

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ここからはあまりアップダウンもなく、木陰のあるトレイルも多く、気温もやっと下がってきた。多少疲労はあるけど、気持ちよく走れた。

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甘い物続きだったから、日本から持ってきたコーヒーゼリーが苦くてめちゃくちゃうまかった。このタイミングでドロップバックに仕込んでおいた自分を褒めたい。

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去年妻がサポートに来てくれたA7 Meadowsに到着。ちょうどこの辺りに座って、ジュリアンのアップルパイを食べさせてもらったことを思い出す。去年は真っ暗だったけど、まだ明るい内に来ることができた。去年よりも1時間くらい早い。行ける行ける。

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このホットサンド、トルティーヤにチーズを挟んで焼いただけなんだけどめちゃくちゃうまい。エイドの人にデリシャスデリシャス!って言いながら何枚も食べた。

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夜のパートに入る前に記念に1枚撮ってもらった。鼻水出てるけど、まだ元気そう。

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エイドを出てしばらく走ると、夕焼けに照らされた草原を通過した。草が黄金色に光っていてめちゃくちゃ綺麗だった。この後、20時過ぎに日没。さあここから、夜の森だ。

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腰にUltrAspireのLUMEN600、頭にsuprabeamのV3airを装着して、二灯体制で進む。腰に付けたLUMEN600がめちゃくちゃ明るくて良かった。この後朝まで、腰は電池交換無しで明るさをキープできて最高だった。

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89km地点、第8エイドのRed Tailed Roostを通過。ついに距離は半分を超えた。日が暮れて気温も下がってきたのでドロップバックから長袖と手袋を取り出す。ここから次のエイドまで一気に700mくらい下る。

次のエイドまでの下りは細いシングルトラックで、下ったら折り返して同じ道を登るので前を行くランナーみんなと道を譲り合ってすれ違う。すれ違う度にみんな「Good Job」とか「Nice Work」とか声をかけてくれる。僕も人生で最もグッジョブと言った日になった。

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両脇から葉っぱのない尖った枝が張り出していて、ちょうどスネの辺りの皮膚を引っ掻いていく。むき出しの脚はすぐに傷だらけになった。大したことないひっかき傷だけど、長いトレイルを走っているとこういう細かいストレスが辛さを助長する。下りっぱなしのガレたトレイルで、大腿四頭筋の在庫も切れかかり、膝がもうそろそろ悲鳴をあげようかという頃。しかしこの後、この道を登り返すのがしんどいことはわかりきっている。下りの内に貯金を作っておかないといけないと思い、下りのトレイルを走り続けた。

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103km地点、第9エイドのClibbets Flat に着いたのは夜中の0時過ぎ。制限時間までの貯金は減ってきたものの、まだ1時間50分ある。

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座って一杯と思ってコーラを飲んでいたら、いきなり寒さで体が震え始めた。さらに吐き気がしてコーラを吹き出してしまった。

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パタゴニアのあったかい長袖に着替え、ウィンドシェルも着込んで、手袋もして、焚き火にあたりながら何とか震えを抑え込む。それでもまだ寒い。食べないと体が温まらないけど、吐き気がするので仕方がない。このままじっとしていたら更に冷えると思い、補給もそこそこにドロップバックからジェルだけ取り出してエイドを出た。

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ここから12km先のエイドまで、さっき下ってきた道をそのまま登り返す。エイドを出てすぐに、太腿の筋肉が固まって全然動かないことに気づいた。スピードも出ないから体も暖まらない。脚も重く、ここまで順調だったのにどんどん後続のランナーに抜かれ始めた。風が強く吹く度に寒くて体が震える。ジェルを飲み込むとしばらくは燃料に火が灯って体が温まる。30分くらしてくるとまた寒くなるのでジェルを摂る。その繰り返しで耐え続けた。

しばらくジェルで体を動かし続けると、だんだん脚も動くようになってきた。さっきのエイドを出てから追い抜かれてばかりいたけれど、ようやくエンジンがかかって踏ん張れるようになった。

これなら行けるとひたすら両足を動かして登り続ける。30分毎にジェルを摂っていたので、持っていたジェルの在庫が切れてしまう。後は体を動かし続ければ体温は何とかなる。そう思って登り続けていると、ふとしばらくコースマーキングを見ていないことに気付いた。1/4マイル毎にマーキングがあるから、数分間マーキングがなかったら戻れとブリーフィングで言われていたけど、もう10分以上見ていない気がする。まさかこのタイミングで、この真っ暗な真夜中の森でロストなんかしたくない。ジェルももうない。止まったら凍える。やばいやばいとだんだんパニックになってきて、くるりと振り返り来た道を駆け下り始めた。

しばらく下るとランナーとペーサー2組の集団が前からやってきた。焦って「ここはライトウェイか!?」と聞いたら。みんな「ライトウェイだよ」と言う。ほっとした。もう一度同じ道を登り始めた。

登りきって115km地点、第10エイドのDale's Kitchenに着いたのが夜中の3時半頃。貯金は1時間半まで減ったけど、何とか踏ん張れた。去年リタイアとなった130km地点まであと15km。ついにリベンジの時が近づいてきた。100kmを超え、100マイルレースの核心に触れる戦いが始まった。

San Diego 100 その3」へつづく