San Diego 100 その2

前回:https://ninomiyateppei.com/entry/2018/06/29/122338

Pine Creek

58km地点の第5エイドPine Creekに到着したのがスタートから9時間後の15時。去年のタイムより1時間弱早く、制限時間よりも2時間以上早い。1日で最も気温の高い時間帯に、コース中最も標高が低く暑い場所を超えた。水が無くなった時はどうしようかと思ったけど、何とか乗り切れた。制限時間の貯金も2時間あるしこれは行けるぞと、手応えを噛み締めながら出発した。

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ここから次のエイドまで登りが続く。去年は夕方に差し掛かる時間だったのでまだましだったけど、今年は15時過ぎ。めちゃくちゃ暑い。ガレた登りと暑さでクラクラしてくる。

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道端のサボテン。転んで突っ込んだらめちゃくちゃ痛そう。

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しばらく進むとやっと木陰のある森が現れた。直射日光を浴びなくても良い場所、何時間ぶりだろう。更にコース中唯一の沢を横切った。アメリカの沢の水飲むのは怖かったからやめといたけど、頭からじゃぶじゃぶ浴びた。

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森を抜けるとまた灼熱の登り。次のエイドまでずっとこの繰り返し。道端に座り込む人が増えてきた。60kmを超え、そろそろ脚がずっしりと重くなってきた。

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登り続けて2時間くらい。ようやくフラットになってきたけどまだ暑い。もう17時なのにまだまだ暑い。去年のこの時間は涼しくなってきてたのに、さすがに今年は異常だ。水も残り少なくなってきて焦る。

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前のエイドを出発して2時間半、ようやく70km地点の第6エイド、Penny Pines に到着した。ドロップバックに入れておいたライトを取り出して、これから訪れる夜のパートに備える。

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ハチのたかるスイカを頬張って出発した。

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ここからはあまりアップダウンもなく、木陰のあるトレイルも多く、気温もやっと下がってきた。多少疲労はあるけど、気持ちよく走れた。

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甘い物続きだったから、日本から持ってきたコーヒーゼリーが苦くてめちゃくちゃうまかった。このタイミングでドロップバックに仕込んでおいた自分を褒めたい。

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去年妻がサポートに来てくれたA7 Meadowsに到着。ちょうどこの辺りに座って、ジュリアンのアップルパイを食べさせてもらったことを思い出す。去年は真っ暗だったけど、まだ明るい内に来ることができた。去年よりも1時間くらい早い。行ける行ける。

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このホットサンド、トルティーヤにチーズを挟んで焼いただけなんだけどめちゃくちゃうまい。エイドの人にデリシャスデリシャス!って言いながら何枚も食べた。

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夜のパートに入る前に記念に1枚撮ってもらった。鼻水出てるけど、まだ元気そう。

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エイドを出てしばらく走ると、夕焼けに照らされた草原を通過した。草が黄金色に光っていてめちゃくちゃ綺麗だった。この後、20時過ぎに日没。さあここから、夜の森だ。

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腰にUltrAspireのLUMEN600、頭にsuprabeamのV3airを装着して、二灯体制で進む。腰に付けたLUMEN600がめちゃくちゃ明るくて良かった。この後朝まで、腰は電池交換無しで明るさをキープできて最高だった。

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89km地点、第8エイドのRed Tailed Roostを通過。ついに距離は半分を超えた。日が暮れて気温も下がってきたのでドロップバックから長袖と手袋を取り出す。ここから次のエイドまで一気に700mくらい下る。

次のエイドまでの下りは細いシングルトラックで、下ったら折り返して同じ道を登るので前を行くランナーみんなと道を譲り合ってすれ違う。すれ違う度にみんな「Good Job」とか「Nice Work」とか声をかけてくれる。僕も人生で最もグッジョブと言った日になった。

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両脇から葉っぱのない尖った枝が張り出していて、ちょうどスネの辺りの皮膚を引っ掻いていく。むき出しの脚はすぐに傷だらけになった。大したことないひっかき傷だけど、長いトレイルを走っているとこういう細かいストレスが辛さを助長する。下りっぱなしのガレたトレイルで、大腿四頭筋の在庫も切れかかり、膝がもうそろそろ悲鳴をあげようかという頃。しかしこの後、この道を登り返すのがしんどいことはわかりきっている。下りの内に貯金を作っておかないといけないと思い、下りのトレイルを走り続けた。

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103km地点、第9エイドのClibbets Flat に着いたのは夜中の0時過ぎ。制限時間までの貯金は減ってきたものの、まだ1時間50分ある。

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座って一杯と思ってコーラを飲んでいたら、いきなり寒さで体が震え始めた。さらに吐き気がしてコーラを吹き出してしまった。

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パタゴニアのあったかい長袖に着替え、ウィンドシェルも着込んで、手袋もして、焚き火にあたりながら何とか震えを抑え込む。それでもまだ寒い。食べないと体が温まらないけど、吐き気がするので仕方がない。このままじっとしていたら更に冷えると思い、補給もそこそこにドロップバックからジェルだけ取り出してエイドを出た。

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ここから12km先のエイドまで、さっき下ってきた道をそのまま登り返す。エイドを出てすぐに、太腿の筋肉が固まって全然動かないことに気づいた。スピードも出ないから体も暖まらない。脚も重く、ここまで順調だったのにどんどん後続のランナーに抜かれ始めた。風が強く吹く度に寒くて体が震える。ジェルを飲み込むとしばらくは燃料に火が灯って体が温まる。30分くらしてくるとまた寒くなるのでジェルを摂る。その繰り返しで耐え続けた。

しばらくジェルで体を動かし続けると、だんだん脚も動くようになってきた。さっきのエイドを出てから追い抜かれてばかりいたけれど、ようやくエンジンがかかって踏ん張れるようになった。

これなら行けるとひたすら両足を動かして登り続ける。30分毎にジェルを摂っていたので、持っていたジェルの在庫が切れてしまう。後は体を動かし続ければ体温は何とかなる。そう思って登り続けていると、ふとしばらくコースマーキングを見ていないことに気付いた。1/4マイル毎にマーキングがあるから、数分間マーキングがなかったら戻れとブリーフィングで言われていたけど、もう10分以上見ていない気がする。まさかこのタイミングで、この真っ暗な真夜中の森でロストなんかしたくない。ジェルももうない。止まったら凍える。やばいやばいとだんだんパニックになってきて、くるりと振り返り来た道を駆け下り始めた。

しばらく下るとランナーとペーサー2組の集団が前からやってきた。焦って「ここはライトウェイか!?」と聞いたら。みんな「ライトウェイだよ」と言う。ほっとした。もう一度同じ道を登り始めた。

登りきって115km地点、第10エイドのDale's Kitchenに着いたのが夜中の3時半頃。貯金は1時間半まで減ったけど、何とか踏ん張れた。去年リタイアとなった130km地点まであと15km。ついにリベンジの時が近づいてきた。100kmを超え、100マイルレースの核心に触れる戦いが始まった。

San Diego 100 その3」へつづく