山岳遭難のリスクを低減するテクノロジー

山に行くときは、だいたい1人だ。今までに誰かと一緒に山を歩いたり走ったことは、レースを除いたら数えられるくらいしかない。

元々あまり人とわいわいコミュニケーションするようなタイプじゃないし、山へ行くというのは街中の喧騒から離れて静かな自然の中に身を置く行為だと思っている。だから1人で行くことが多く、なるべく人の少ない山に行きたがる。

しかし単独行は、遭難時のリスクが高い。単独行の遭難者は、遭難したときに死亡・行方不明になる確率が、パーティを組んでいる登山者の約2倍程度になるそうだ。

自分は30代後半で山に目覚めて、山に通うようになった。色んな本やブログを読んだりして自分なりに山について考えてきたつもりだけど、誰かに直接教わったり訓練を受けたことがなく、山岳遭難のリスク対策は万全とは言えないだろう。

だからこそ、積極的にテクノロジーに頼ることにしている。

山に行くとき、特に初めてのコースを通るときは、毎回事前にルートをTrail NoteでGPXファイルに書き出して、SUUNTOのGPSウォッチやスマートフォンの地図アプリGeographicaに読み込ませて持って行く。地図データを事前にキャッシュしておけば圏外の場所でも使えるし、予備のモバイルバッテリーも持っていくことで電池切れのリスクも低減できる。GPSで現在地がわかるので、ルートを外れたらすぐに気づくことができ、道迷いのリスクは大幅に減らすことができる。

道迷いの次に多い遭難理由は滑落だ。どんなに気をつけて通行していても、足元のトレイルが崩落してしまった場合は避けられない。特に単独行の場合は深刻だ。怪我をして動けなくなったり、そのまま気を失ってしまったり、命を落とす事故に繋がる可能性が複数人でいる場合と比べたらずっと高くなる。

だから滑落に対しては、事故にあった後の対策が重要だ。単独行で意識を失ったり、圏外の場所から動けなくなったら救助を呼べない。如何に早く気づいてもらい、正確に自分の場所を伝えられるか。

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IBUKI GPSはそんな課題を解決するために開発された、GPS端末とWebサービスのソリューションだ。会社を辞める前から開発を手伝わせてもらっていて、今日ようやく個人向けの販売開始にこぎつけた。Makuake(マクアケ)という新しい商品や体験を応援購入できるサービスで、今日から先行販売が始まった。

www.makuake.com

IBUKI GPSは軽量・省電力のGPS端末で、内臓しているSIMを通じて通信を行い、3分に一度自分の位置情報をWebサーバーに送信する。その位置情報の履歴を地図上にマッピングして表示してくれるWebサービスと連動しているので、ページのURLを家族や友人に送っておけば、ほぼリアルタイムに自分の現在地をライブ配信できる。

去年の暮れに試作段階だった端末を借りてから、山へ行くときには毎回持っていき、登山口で入山する前に必ずLINEでライブ配信ページのURLを妻に送るようになった。自分にとっても何かあった時の安心感につながるけど、特に喜んだのは妻だった。

山へ行くときは必ず帰宅予定時間を伝えていたけど、どうしても予定よりも時間がかかってしまうこともあった。そんな時、iPhoneを探すアプリで共有している僕の位置情報を見るのだけど、位置情報が点でしか表示されないから、進んでるのか戻ってるのかよくわからなかったそうだ。それが、時系列に線で見えるようになった。これは僕が今年、脊振山地を半分縦走したときのログ。タイムシフト再生で見ると、山の中を進んでいる様子がよくわかる。

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我が家ではこのIBUKI GPSにココヘリを組み合わせて、何かあった時の対応フローを決めている。IBUKI GPSは3分に一度位置情報を送信するが、LPWAで通常の4G回線に比べたら繋がりやすいもののどうしても電波が届かないエリアもある。だから位置情報が動かなくなって1時間以上経過し、その間に何の連絡もなく、電話しても通じない・連絡が取れない場合は、ココヘリに電話して救助を要請するということにしている。ココヘリの電話番号と会員IDを記入した紙は冷蔵庫の扉に貼ってあるので、いつでも参照可能な状態だ。

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もちろん紙の地図とコンパスを駆使した読図力や、山での経験値、純粋な体力など、自分の頭や体を鍛えることも大切な要素だ。新しいテクノロジーはそれらを否定するものではなく、足し算、掛け算で遭難リスクに備えることができる。これからも積極的に、新しい仕組みを取り入れていきたい。そして今日から先行販売が始まったIBUKI GPSも、よりよい仕組みに改善していきたい。