San Diego 100 その1

San Diego 100は、去年初めて挑戦した100マイルレース。そして初めてゴールすることなく、途中で終わったレースだ。80マイル地点の第12エイド、Penny Pines 2 の関門時間に4分間に合わず、その場でエイドキャプテンにゼッケンを渡した。25時間走り続けて手元に残ったのは参加賞のTシャツくらいで、出場した証のゼッケンすら返さないといけないのかと悲しくなった。

あれから1年。この日のためにやれることはやってきたと思う。直前の調整はそんなにうまく行かなかったけど、5月は京都一周トレイルを走ったり距離を稼げたし、1週間前から暑熱順化もやって何とか仕上げ、この日を迎えることができた。朝5時、泊まっていたロッジからスタート会場のカヤマカ湖まで歩いて向かいながら、この1年間のことを思い返していた。

夜明け前のカヤマカ湖

受付のテントでゼッケンを受け取り、安全ピンでパンツに留め、バナナとマフィンをもらって食べた。一緒にもらったコーヒーを飲みながら妻と井原さんにスマートフォンから行ってきますの挨拶をしてスタートラインに並ぶ。去年現地でサポートしてくれたMiekoさんも、とにかく序盤はゆっくり行くようにとアドバイスをくれた。用意してきた想定ペースでは、本格的に暑くなるまで去年と同じくらいのペースで行く予定だった。ただ、今年は更に気温が高くなる予報。念を入れて267人の参加者の内、200番目くらいの後方に並ぶことにした。

スタート前

レースディレクターのスコットがスタートラインに登場すると、大きな歓声があがる。いよいよだ。気持ちはどうしても焦る方に作用する。1週間近く会社を休んで、妻を置いて一人で飛行機に乗って、何十万円もかけてやってきておいて、完走できなかったとか絶対ありえない。もちろん誰も攻めたりしないだろうけど、そういうプレッシャーが背中を押してくる。そいつをぐっと飲み込んで、少なくとも序盤はゆっくり、楽しんでいこう。あらためてそう自分に言い聞かせた。そして朝6時ちょうど、レースが始まった。

San Diego 100 は全長162km、累積標高4,429m、制限時間32時間。制限時間が短く走り続けないとゴールができないことと、直射日光に曝され続ける日中の暑さと夜の寒さが最大の難敵。累積標高はそれほど多くないが、ゴロゴロした大きな石が多くて足を捻りやすいテクニカルな下りや、一度始まるとひたすら続く長い登りがいくつかあり、タフでハードなコースだ。

Elevation Map

まずポイントになるのが、とにかく暑い時間帯をどう乗り切るか。特にコース前半、A3 Sunrise(34km地点)から A5 Pine Creek(58km地点)までが最も暑くなることが予想され、ここで熱中症にならずに体調を保ったまま乗り越えられるかどうかが肝になりそうだ。実際去年はA4 Pioneer Mail に着いた時点で既にフラフラで、暑いはずなのに悪寒がして全身の震えが止まらず、その後も胃腸をやられて吐き続けて大きく時間をロスしてしまった。

また、夜間は寒さ対策が必要になる。更に夜中の一番寒い時間帯は A8 Red Tailed Roost(89km地点)からA9 Clibbets Flat(103km地点)まで一気に700m以上降りてから折り返し、もう一度A10 Dale's Kitchenまで来た道を登り返すという、コース内で一番ハードな区間と重なる。ここをどう乗り越えるかというのもポイントだ。

そこを超えると、残り45km。最後は制限時間の間隔がシビアになってくる。去年はこの迫りくる制限時間との勝負に負けてしまった。何とかここまでに貯金を残しつつ、最後は気合で制限時間との追いかけっこに勝つしかない。今日これまで、そんなイメージを何度も何度も反芻してきた。いよいよ、答え合わせの時だ。

スタート直後

スタートしてまずは湖畔を南下して林道に入り、緩やかな登りが始まる。がんばれば走れるゆるい傾斜だけど、逸る気持ちをおさえて、登りは全部歩き通した。周りもみんな歩いている。先はまだまだ長い。とにかくゆっくり行こう。

Middle Peak への登り

6時過ぎの気持ちいい朝で、過ごしやすい気温。全部登りきってしばらく下ると、全コースの中でも珍しい、木陰のある森を通る。ああ、こんな森だったなー、本当に一年ぶりに帰ってきんだなーと、感慨に浸りながら気持ちよく駆け抜けて、すぐに12km地点 A1 Paso Picacho に着いた。

A1 Paso Picacho

このエイドでは、お揃いのピンクのランニングスカートを履いた女性が出迎えてくれる。去年はカウボーイブーツを履いてたけど、今年は普通のスニーカーだった。まだまだ序盤、水はたっぷり残ってるので補給せず、バナナとスイカ、ポテトを頬張って出発。

Stonewallの大きな岩

次はStonewallという、巨大な岩がゴロゴロしている山を登る。つづら折りで傾斜もたいしたことはなく、巨岩の間を気持ちよく登った。

Stonewallからカヤマカ湖を望む

登りきって下りに入ると、カヤマカ湖へ戻っていく。最高の景色だ。

第2エイドのChambersはカヤマカ湖、スタート地点の対岸にある。エイドに向かう人と、エイドから戻ってくる人が湖畔ですれ違う。

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まだスタートして3時間弱。朝の9時頃だけど、次のパートから本格的な暑さとの戦いが始まる。念のためにここからBuffを取り出して氷を入れてもらい、首の後ろを冷やす。ハイドレーションも片方のボトルを氷水に、もう片方を氷入りのTailwind(スポーツドリンクみたいなやつ)にして、更に予備の500mlのソフトボトルにも水を入れてもらった。

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アイスBuffは後ろの方に山程氷が入れてあって、1時間くらい持つ。1時間だけ暑さを軽減してくれるバフ魔法みたい。Buffだけに。加えて頭にも少しづつボトルの水をかけながら進んだ。これはチョップの打ち上げの時にノリさんが教えてくれたこと。飲むだけじゃなくて、体にかけながら進むといいと。

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もう一つ今回工夫したのが、味噌汁のもとを持ってきたこと。塩分補給のため、たまに取り出して舐めてた。ジェルみたいに個包装だから便利。

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まあ、どれだけ暑さ対策を入念にしても、暑いものは暑い。遮るものは何もなく、直射日光を常に浴び続ける。汗なんかすぐに蒸発してカラカラ。

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ゆるやかな登りのトレイルを走り続けると「この先、氷」の看板が。それこそ正に、今一番欲しいものです。

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第3エイドのSunriseに到着。ここまで想定ペース通りで調子がいい。11時を過ぎて、ここからが暑さとの戦いの本番。氷と水を沢山補充して、去年熱中症に苦しんだパートへと向かう。

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この辺からしばらくPCTを通る。Pacific Crest Trail はメキシコ国境からカナダ国境まで4000km以上続くロングトレイル。去年、いちごちゃんが通った道。そして僕が暑さにやられた道。

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ゴロゴロ大きな岩が並ぶ山を超えると、左手にアンザボレゴ砂漠が広がる稜線に出た。

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絶景だ。しばらく見とれて写真を撮ってたら地元のランナーが美しい砂漠だろ!って自慢してきた。間違いないです。

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カメラマンのスターンさんに撮ってもらった写真。ここは相当暑かったと思うけど、元気そうだ。

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去年、震えが止まらずに30分くらい座ってて井原さんと別れた第4エイド Pioneer Mail。6時間42分で去年のタイムとは10分くらいしか違わないけど、体調は特に問題なさそう。ここを乗り切れた、行けるぞ。そんな気持ちになってた。

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甘かったね。このエイドでもらったアイスキャンディーよりも甘かった。

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エイドを出て見晴らしのいい稜線を進む。ここから、ノーブルキャニオンへ降りていく。

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問題はここからだった。どんどん谷へと降りていく。谷底に近づくほど暑くなる。午後2時。1日で最も暑い時間帯が近づいてくる。気温がどんどん上がっていく。

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谷底は林道になっていた。死ぬほど暑い。フラフラして走れない。追い越していく人が「Fucking ◯☓△□!」とか「ナンテ日ダ!」とか叫んでいく。去年よりもずっと暑い。水を飲んでもすぐに喉が乾く。まずい。

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林道が舗装路に変わるころ、持っていた水が全てなくなった。予備の500mlも空になった。全コース唯一のロードのパート。最も標高が低い場所で、最も気温の高い時間に、舗装路の上で干上がっている。頭がクラクラし始める。もしかしたらここで、熱中症で倒れて終わるかもしれない。それが一番怖かった。恐る恐る、スピードをゆるめて歩いた。次のエイドを、水を求めて。

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エイドの白いテントが見えた時、ついオーマイゴット!って言ってしまった。ああ神様助かったんだ!と思った。周りにいたランナーも一斉にガッツポーズしている。

15時過ぎに、58km地点の第5エイドPine Creekに到着。お腹いっぱいに水を飲んだ。最高に美味しい水。最高に冷たくて気持ちのいい氷。コーラとマウンテンデューを氷入れて何杯か飲んで、ポテトやらスイカやらバナナやらを食べた。ああ、助かった。今度こそ行けるぞと思った。

まあ勿論、そんなに甘いわけがなかったのだけど。

San Diego 100 その2」へつづく

京都一周チャレンジ

サンディエゴに向けて

今年の比叡山インターナショナルは惨敗だった。目標だった8時間切りはおろか、去年のタイム(8時間25分)よりも2分遅かった。去年の6月、サンディエゴの80マイル地点の関門に引っかかってから1年間、がんばって黙々と走行距離を積んできたはずだったのに、去年よりも遅いなんて。暑さと足の怪我による調整不足があったとは言え、それくらいカバーできるはずだった。カバーできると思っていた。

でも、できなかった。このまま行くと今年のサンディエゴも完走できないんじゃないか。自分は暑さに弱すぎるんじゃないか。不安が募った。もう1ヶ月を切って今更できることはあまりないが、それでもまだできることはある。

去年のサンディエゴでは、1日目のお昼頃から暑さで完全に参ってしまい、体の震えが止まらなくなったり、気持ち悪くて吐いたり、息があがってなかなか進めなくなったり、それまで順調だった貯金を全て使い果たしてカットオフタイムとの戦いになってしまった。木陰のない荒野で常に直射日光に晒され、日中は30度を超え、夜は摂氏一桁まで冷え込む過酷な気候。その対策が鍵なのは明らかだ。

そこで、週間天気予報で一番気温が高くなる日を選んで有給休暇を取り、京都一周トレイルを一気に走ることにした。全長約80km。100マイルの半分の距離だが、累積標高は同じくらい。

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京阪の伏見稲荷駅を朝の6:50にスタート。この時間でも既に観光客がちらほら。稲荷山の上の方までは観光客に混じって歩いて登る。

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5月の新緑が綺麗で気持ちいいトレイル。このあたりはまだ午前中、スタートしてまだ3時間弱くらい。それでもジワジワ暑さが忍び寄って来ていた。

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この日、京都市内の最高気温は32度。もちろん暑いけど、沢沿いのトレイルが多いので水を補給し放題。頭や体にボトルから水をかけながら進んだ。

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全行程の半分くらい、42km地点の鞍馬駅に妻が出張エイドを出してくれた。鶏の唐揚げにスイカにレッドブル。好きなものを山程用意してくれていた。最高のエイドでした。

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徐々に日が暮れてくる。家から一番近い京見峠や上ノ水峠のトレイルに差し掛かったときは、何度もこのまま帰りたいと思った。我慢して進む。

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六丁峠を超えるといきなり真っ暗に。ライトを点灯して進む。

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嵐山駅に着いたのは19:30過ぎ。もうここをゴールにしたい。でも今日はここから松尾山を超えて上桂まで。妻も待ってくれているので、仕方なく進む。

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普段なら何てことない低い松尾山の登り、めちゃくちゃしんどい。75km程度で脚が終わってたら、100マイルはどうなってしまうのだろう。

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最後の西山コース51番の標識を抜けて、市街地を通って上桂駅でゴール。13時間32分の道のりでした。しんどかった。ゴールしたらいきなり寒さで体が震えだし、おかしいなと思ったら翌日には風邪をひいていた。サンディエゴの2週間前だというのに、ついてない。

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比良山系縦走

週末、山に行ったらお昼すぎには帰ってきて、妻と一緒にお昼ごはんを食べるというルールを自分に課している。特に妻から何かを言われたわけでないけど、何となく自分の趣味にかまけて休みの日に丸一日家を空けるのは申し訳ない、せめて半日にしておこう、みたいな遠慮から来ているルールだ。毎週のことだしね。

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この前の週末は妻の妹が茨木から来ていて、土曜日は二人で出かけるという。これは一日中山に行けるチャンスだと思い、普段はなかなか行けない所に行こうと、比良山系を縦走してきた。朽木のスキー場から蛇谷ヶ峰を登って、ひたすら南下して権現山まで。

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もう天気が最高で景色も最高。とにかく気持ちよくて満喫しすぎて、金糞峠あたりで「あ、このままのペースだと権現山に付くまでに日が暮れてしまう」ってことに気がついた。そこから本気出してヒーヒー言いながら縦走路走って蓬莱山のゲレンデ登りきったら、傾き始めた太陽に照らされた尾根道がキラキラしていて、しばらく見とれてしまった。

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朝の9時半に朽木学校前のバス停をスタートしてから8時間20分後、和邇駅でゴール。また行きたい。

2017年の振り返りと2018年の抱負

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年末ですね。今週のお題「2018年の抱負」に乗っかって、2017年を振り返ります。

レースの結果

今年の目標だった100マイルレースの完走が果たせなかったのが全てですね。こうして改めて見ると、1年間、1度もロングレースの完走がないというのがまた悲しい。

ただ、良かった点もあります。チョップ、京北、東山の京都3連戦ではそれぞれ総合の順位が15位、26位、98位と、出場者の中でも上の方の順位でゴールできました。去年まではだいたい真ん中くらいが定位置だったので、ずいぶん上がってきました。6月のサンディエゴでのDNFが悔しくて悔しくて、中止になった9月の丹後ウルトラに向けてひたすら夏の間に走りまくったのが、走力の底上げに繋がったんだと思います。

月間走行距離

距離 コメント
1月 66km 去年の年末から1/22まで呆けて1度も走ってなかった
2月 200km 6月の100マイルに向けて毎月200km走ろうと決めて月末にギリギリ200km達成
3月 156km ちょっと脚に違和感あって1週間ちょっと休んだので200km未達
4月 225km 平日にロード、週末にトレイルを走る日々
5月 207km 今年も比叡山に出て、その後100マイルに向けて調整
6月 203km 100マイルレースは80マイル地点でカットオフ、2週間くらい放心してた
7月 343km 9月にロードのウルトラに出ることに決めて、ひたすらロードを走りまくった
8月 408km ロードは暑くて死にそうになるのでよく峠に行った
9月 195km 丹後ウルトラが台風で中止になって気持ちが切れそうになった
10月 233km 年内の目標を東山三十六峰のサブ3.5に切り替えて復活
11月 205km マウントチョップや京北を楽しく走った
12月 125km 三十六峰終わって2週間くらい休んだ
合計 2,565km 年初にぼんやり月200kmは走ろうと思ってたので、年2,400km超えて良かった

今年はよく走りました。真夏の一番暑い時にとにかく距離を踏んだことと、後はやっぱり1年間通して気持ちがあまり切れなかった(切れても1〜2週で復活してまた走り始めた)のが良かったと思う。去年までは信越とハセツネを完走した後に達成感でしばらく走らなかったりとか、時期によってムラがありました。暑いと走らなかったり、寒いと朝起きれなかったり。

走れば走っただけ速くなったり、強くなるんだということを知りました。だから好きだよ。

2018年の抱負

サンディエゴのリベンジです。今度こそ100マイル完走したい。抽選で外れる可能性もありますが、もし出られるなら今度こそ完走したいです。

今のところ決まっているレースは2/18の京都マラソンだけですが、比叡山、チョップ、京北、東山三十六峰は今年も出たいです。比叡山はサブ8を、三十六峰はサブ3を目標に。

後は、富士登山競走、おんたけ、上州武尊あたりに出たい気持ちがあります。富士登山競走とおんたけは、今年出た人の話を聞いてて楽しそうだったから。上州武尊は、これまで走れるコースを好む傾向があってこういう本格的な山岳コースに苦手意識があったから。後は抽選に外れたSTYの二次募集があるようだから、年明けにクリック合戦参戦してみようと思います。

走ること以外では「ちゃんとすること」がテーマです。後は悔いの残らぬよう、やりたいことを思いっきりやりたいです。

日本の国蝶は? Kyoto Mount Chop 10th

今回で10回目を迎えたマウントチョップ。僕自身は去年の秋に参加しただけで今回は2回目だったんですが、不思議と帰ってきた感というか、ホーム感を感じるんですよね。

スタート予定時間の8時を過ぎて寸劇が始まっても「ああいつものやつ始まったなw」とか言っちゃってね。「チョクマガ」とか今日初めて聞いたのに「あれねw」みたいな感じで爆笑して、しれっと常連みたいな顔して参加してきました。

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キョウト!マウント!チョーップ!

今回は西賀茂橋から山幸橋まで鴨川沿いのロードを走ってからトレイルに入り、向山を超えて二ノ瀬に降りて、竜ヶ岳から静原、江文峠から大原、焼杉山とナッチョを登って百井や花背を超え、芦生峠から貴船の方に南下して夜泣峠からもと来た道に合流して西賀茂橋まで戻る47kmのコースでした。

最初に公開されたGPXファイルでは江文峠から金毘羅山と翠黛山に登ってから大原に降りるコースになっていて、変更になったことに気付かず金毘羅と焼杉とナッチョ登らせるなんて鬼だ!と思ってました。当日の朝、近藤さんに言われなかったら1人で金毘羅山登るところでした。危ない危ない(実際は江文峠に誘導の方がいたので大丈夫)。

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スタート前、常田さんが近藤さんと僕に「勝手トリオで行こう!」なんて言ってくれてたんですが、スタートしてしばらくロード走ってたら常田さんがいない。スタートから僅か1km足らずでトリオ解散となり、ソロのレースが始まりました(ヒドイ)。

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去年のチョップでは後半、天ヶ岳へのシャクナゲ尾根の登りから失速して向山くらいまでグダグダで抜かれっぱなしでした。今回は最後まで走り続ける。後半もがんばる。そして去年よりも早いタイムでゴールする(距離も長いし金毘羅と翠黛山登ると思ってたから去年のタイム超えるのも大変だと思ってた)。そんな目標だったので前半は抑え気味に入りました。

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大原10名山の内、僕が唯一登ったことのない焼杉山。とにかくキツイ登りだと、そんな噂は何度も聞いていました。ここからが今日の本番。そんな焼杉の入口に丹羽さんと吉住さんがいてびっくり。世界のトップランナーのお二人ですよ。気合が入ります。

そうして登り始めた焼杉山。そこまで激登りという程ではないけど、ひたすら登りが続く嫌なタイプの登りです。息があがり、大腿四頭筋の貯金が尽き始めます。

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Q.国蝶って知ってる?

そんな中現れたこのマーキング。いきなり何なんだ。国蝶って。知らないけど、モンシロチョウかアゲハチョウか、そのあたりかな。

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モンシロチョウ?

うん、まあ最初に思い浮かぶのはそれですよね。

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ちがいます

ああ、そうですか。

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アゲハチョウ?

うん、本命はやっぱりアゲハかな。ゴージャスだし、国蝶に選ばれそう。

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ちがいます

違うんかい。

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正解は...

国蝶とかどうでもいいんですけど、既にちょっと気になってきている。正解は何だろう。

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←左

マーキングの正しい用途はこれですよね。コースを指し示して迷わないようにすること。それは分かるし有り難いと思う。でも今はいいから!

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言いたい

出た出た...。

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そろそろ正解言いたい

こうやってブログに写真並べてるとテンポよくマーキング出てきてるように思うじゃないですか。これ、実際は結構間隔空いてますからね。しかも焼杉山の厳しい登りで。そろそろ辛いし答えも気になるしでピクピクきてるわけです。

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こういう感じの登りが延々続くんですよ。まじでしんどい。

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日本の国蝶言いたい

あれでしょ、レーザーラモーンRGのネタ。あるある言いたいってやつ。

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←道せまいよ!!

こういうマーキングでの気遣いも有り難いんですけど、国蝶が知りたいんですよ。頼むよ。

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もうすぐ頂上!! 国蝶の答えは...Coming Soon!!

いよいよ来ました。Comingを一回Comeingって書いてからeを消してるところがキュートです。

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正解は...

ゴクリ...。

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オオムラサキでした!

知らねええええええええええええええええええ。

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大原地域では国蝶のオオムラサキを保護しています

大原だけにオオムラサキだったと。でも、このひたすら登り続ける厳しいパートにこういう遊びを仕掛けてるの良いですよね。辛さを一時忘れられるというか、気が紛れるというか。国蝶の答えを求めて進み続けたらいつの間にか焼杉山登り切ってるわけです。

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というわけで焼杉山登りきりました。これで大原10名山全て制覇です。いつか一筆書きやりたい。

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この前の台風21号の影響で、トレイルには沢山の倒木が。この写真、回転間違えてるわけじゃないですからね。一帯が根こそぎ横倒しになっていました。ある時は潜り、ある時は跨いで超えていきます。

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踏み跡がほとんどない箇所も多く何度かロストしてしまいました。ついマーキング無視して突っ込んでしまいます。しかしこのあたりは自然林で雰囲気も最高です。特にナッチョの山頂周辺や、天狗杉、旧花背と芦生峠の間あたり。

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紅葉もきれい。台風で落ちた枝の数々で、落ち葉のフカフカトレイルが枝だらけになってたけど。

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レースは前半抑え気味で入ったこともあって後半もそこまでペースが落ちず、貴船山超えたあたりからスパートもかけられました。しかし、やっぱり登りが苦手。特に急登だとすぐに大腿四頭筋の在庫が尽きてしまう。焼杉山とナッチョの登りでは、それまで同じペースで進んでた人に大きく差をつけられ、何人かに抜かれました。単純に腿の筋肉が弱いんだと思います。今後の課題ですね。

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8時間4分20秒でゴール。ワイルドソロの15位でした。すごいすごい。これまで15位とかそんな順位取ったことないので嬉しいです。何より、楽しく走れました。

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そして恒例の打ち上げへ。これがまあ、すごい盛り上がり。47kmも山を走った後なので、ビールがハイドレーション代わりなんですね。ひたすら飲んでしゃべって、入賞した人を表彰して、チョップの10回目をお祝いしました。マウントチョップ最高です。また次回も参加したいです。

私の癒やし

水が好き。走ってる時に飲む水が特に好き。水は冷たければ冷たいほどいい。走っていると冷たい水も温くなってしまうけど、沢の水や湧き水はいつも冷たい。

本当は浄水器とか通したほうがいいんだろうけど、構わずそのまま飲んでしまう。だって浄水器も浄水場も水道もない時代、井戸を掘り始めるもっと前の時代から、人がずっと飲み続けてきたのはそんな水のはず。山中の清らかな沢の水や湧き水は、数ある自然界に存在する水という選択肢の中でも至高の存在。私の癒やしです。

京都の湧き水、お気に入りのベスト3を紹介します。

第3位:京見峠の水 (杉阪の船水)

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多分京都で最も有名な水場だと思います。京見峠登って山の家はせがわを過ぎてちょっと行った所。ロードバイクで峠を登ってきた人も、車でわざわざタンク持ってくる人もよく見かける人気スポット。

柔らかくて、ほのかに甘くて、優しいお味。美味しいです。

第2位:ウジウジ峠とダルマ峠の間の水

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ここの水はとにかく冷たい。真夏でもキンキンに冷えてます。ここより冷たい湧き水はありません。多分ね。

愛宕山から首無地蔵を超えて林道をしばらく朝日峯の方に進んだ所、ウジウジ峠の手前にあります。ここから先はダートの林道が長く続きます。トレイルでも舗装路でもないどっち付かずな道だけど、特に夏場はここの冷たい水が恋しくてついこのルートを選択してしまいます。

第1位:紙屋川上流のお地蔵さんの水

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いつもお世話になっているお地蔵さんの水場。原谷から鷹峰を通って、紙屋川沿いに舗装路を登った上ノ水峠へのトレイル入口の手前にあります。東海自然歩道ですね。

まず立地。これからトレイルに入る前にここでボトルを満タンにしたり、トレイルから出てきた帰りがけは最後のご褒美として腹いっぱい飲んだり、トレイルの入り口にあるというのがまず良いわけです。そして味です。お地蔵さんの水だからでしょうか、柔らかくて優しいんですね。まさに私の癒やしです。

今週のお題「私の癒やし」

新たなる目標

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先週の日曜日に予定していた丹後ウルトラマラソンが台風接近のため中止になってから1週間。この3ヶ月間暑さと戦いながら死ぬほど走ってきたので心にぽっかり穴が空いたようで、全く走る気が起きずに酒ばかり飲んで過ごした1週間でした。

駄目、駄目、駄目ッ!

そもそも来年 San Diego 100 にリベンジするために、100km以上走り続けられる脚を作ろうと始めたウルトラのトレーニングだったのに、通過点が無くなったくらいでこんな調子じゃ駄目すぎる。早く次の目標 (通過点) を決めないと、このまま惰眠とアルコールとポテトチップスを貪り続ける日々を過ごしてしまう。というわけで年内のレースに一通りエントリーしました。

京都、京都、そしてまた京都。見事に京都。地元のレース3連発です。マウントチョップは恒例の打ち上げも申し込んだし、京北は後夜祭と宿泊まで申し込んだので、飲む気満々。普通にやってたらファンラン3連発で終わってしまうので、ちゃんと目標を定めないと練習で追い込めない。というわけで、年内の目標は東山三十六峰のサブ3.5にします。

三十六峰は初出場だった一昨年が3時間56分、去年が3時間41分だったので、今年は3時間30分切りを目標に。メニューは「ウルトラ&トレイルランニング コンプリートガイド」に載っている100マイルを目指すメニューを参考に自分で作成しました。というわけで、来週からまたがんばります。

ウルトラ&トレイルランニング コンプリートガイド

ウルトラ&トレイルランニング コンプリートガイド

サンディエゴから京丹後

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130km地点の関門に、4分オーバーの25時間19分でカットオフになったSan Diego 100から3ヶ月ちょっと。暑さ対策ができてなかったとか、参考にしたペースが良くなかったとか、関門時間を間違えてたとか、言い訳はいくらでも思いつくけど、関門時間にひっかかるということは単純に「遅い」ということだ、というシンプルな答えに行き着きました。100km以上走り続けられる脚ができてなかった、ずっと走り続けられる強い脚を作らないといけない。というわけでロードのウルトラマラソンに挑戦することにしたのが、サンディエゴから帰ってきて2週間後くらい。初めてのロードのウルトラマラソンとして、丹後ウルトラマラソンの100kmの部にエントリーしたのでした。

練習方法もこれまでの自分で考えたものから、人の作ったメニューをそのままやってみることにしました。岩本さんの書かれた「完全攻略ウルトラマラソン練習帳」。この本に載っている、フルでサブ3.5レベル、100kmのレースでサブ10を目指す練習メニューの通りに練習しました。7月は月間343km、8月は月間408km走りました。6月までは毎月200kmくらいだったので、距離は相当踏んできました。夏の京都でロードを走るというのは、とにかく暑さとの戦い。ロング走は朝早く家を出ても最後の方には日が昇ってしまうので、街中はとてもじゃないけど走れず、峠を超えて京北の方に行く作戦でしのぎました。

暑さでソツケンやいくつかのレースペース走が完遂できず、初めてのウルトラでいきなりサブ10という目標はかなり厳しい感じですが、距離だけは踏んできたという自信はついたので、とにかく完走したいです。あとは、明後日のレース当日に台風が来る予報なのが心配。逸れてくれることを祈るばかりです。

San Diego 100 の装備とペース表

来週に迫ってきた San Diego 100。初めての100マイルで、5つも置けるドロップバックに何を入れるか、昼は暑く夜は寒いという過酷な気候をどう凌ぐかなど、ずっと装備を悩んでいましたが、やっとさっきパッキングしました。

装備

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朝6:00のスタート時点だと寒いかもしれないけど、すぐに暑くなるだろうからタンクトップを着ることにしました。帽子もあんまり好きじゃないけど、暑さ対策として涼しそうなやつを新調。後は装備を最小限にしてドロップバックをフル活用する作戦です。ヘッドライトは2つ用意して、予備の小さい方をバックに入れておいて、もう1つを夕方頃に着くであろうエイドのドロップバックに託します。

  • ウェア
    • シャツ:Patagonia メンズ・ナイン・トレイルズ・シングレット
    • パンツ:North Face フライウェイトレーシングベリーショート
    • 靴:Altra ローンピーク 3.0
    • 靴下:Injinji Run Mini Crew Original Weight
    • 帽子:Mountain Hardwear Dipsea Trail Run Cap
    • 時計:Suunto Ambit 3.0 Sports
  • 持ち物
    • バック:Answer4 FOCUS Ultra
    • 水:SPECIALIZED Purist Bottle 22oz x 2
    • ファーストエイドキット:絆創膏、テーピング、ハサミ、予備の単4電池等
    • 補給食:Mag-onエナジージェル x 4、塩熱サプリ
    • ウィンドシェル:OMM Sonic Jacket
    • ヘッドライト:Black Diamond Spot 200 Lumen
    • その他:スマートフォン、防水デジカメ (Olympus TG-4 Tough)

ドロップバック

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ドロップバックは全部で5つ。3つは行きと帰りに2度通過するエイド、残り2つは1度しか通過しないエイドに置かれます。左上でこっちを見ているやつは勿論、今回も連れて行けません。

夜中に着くであろうA10のDale's Kitchenには長袖シャツや手袋を置いてどうしても寒い時に備えます。後はジェルを分散して入れて、シャツや靴下もいつでも着替えられるようにそれぞれのバックに入れました。補給食は基本的にエイドのものを食べるつもりだけど、食べ慣れた味のものも欲しいかなと思って柿ピーを入れてみました。

  • Sunrise (A3:34km 午前中, A14:147km 午前中)
    • 補給食:Mag-onエナジージェル x 4、ウィダーインゼリー、柿ピー
    • シャツ:Territory Run Co. Run Wild Run Free T-Shirt
    • 靴下:Tabio レーシングラン5本指ソックス
  • Pioneer Mail (A4:45km お昼頃, A13:136km 朝)
    • 補給食:Mag-onエナジージェル x 4、塩熱サプリ、ウィダーインゼリー、ワッフル
    • タンク:Mountain Hardware ウィックドクールタンク
    • パンツ:North Face Flyweight Racing Short
    • 靴下:Injinji Run Mini Crew Mid Weight
  • Penny Pines (A6:70km 夕方, A12:129km 明け方)
    • ヘッドライト:suprabeam V3air
    • 補給食:Mag-onエナジージェル x 4、マンゴーゼリー
    • シャツ:Teton Bros Trail Chick Tee
    • 靴下:Tabio トレイルラン5本指ショートソックス
    • その他:ワセリン
  • Red Tailed Roost (A8:89km 夜)
    • 補給食:Mag-onエナジージェル x 2、柿ピー
    • シャツ:Newline Imotion Tee
    • 靴下:Injinji Trail Mini Crew Mid Weight
  • Dale's Kitchen (A10:115km 夜中)
    • 補給食:Mag-onエナジージェル x 2、アンパン、柿ピー
    • 長袖:Patagonia Capilene3 Midweight Crew
    • 手袋:Patagonia Wind Shield Running Gloves

ペース表

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今回の目標は、何が何でも完走です。制限時間は32時間だけど、ギリギリを狙うと何かあった時怖いので去年30時間で走った人の経過時間そのまんまでペース表を作ってみました。でもまあ、このペースが妥当なのかどうかさっぱりわからないです。やるしかない。

比叡山インターナショナルトレイルラン2017を走りました

今年もやってきました、比叡山インターナショナルトレイルラン。僕は初めてのトレランレースだった2015年の第1回大会去年の第2回に続いて3年連続の出場です。

今年は6月にSanDiego100という100マイルのレースにエントリーしていて、約1ヶ月前の力試しの機会。ただ、僕にとって比叡山は最初のトレランレースであり、特別な思い入れのあるレースなので、単なる100マイルのための通過点にはしたくないと思っていました。

また去年のハセツネ以降、どこか不完全燃焼なレースが続いていました。トレランを始めた頃はとにかく完走という目標に向かって必死に走ってたのに「まあ完走はできますよね」という感じになってきて、全力で全て出しきって最後まで走りきるというような目標設定が難しくなっていました。

それで去年のハセツネは序盤から思いっきり突っ込んでみたんですが、案の定途中でペースダウンしてしまい、ラスト10kmは全力で走れたものの時既に遅し。その後のMount Chopも東山三十六峰も普通に走ったという感じで、今ひとつ燃えきれませんでした。

これじゃいかん。比叡山は特別なレースです。もっとこう、心の底から燃え上がるような、持てる筋力や持久力や精神力の全てを出し切れるような、もう一度そんなレースにしたい!

目標

というわけで、今年の比叡山のテーマは「全てを出し切る」ということにしました。出し切れたかどうか、レース中にどこかで辛くなって手を抜かなかったかどうか、それは自分が一番よくわかります。自分に対して嘘をついて誤魔化すことはできません。自分に言い訳をして最後まで手を抜かない、全てを出し切るレースにしたい、そう思いました。

具体的な目標タイムとしては「8時間30分」にしました。去年が9時間4分だったので、去年から30分以上短縮したいというのがその理由です。でも、目標タイムというのは難しいです。フルマラソンのサブ4やサブ3みたいな確立された基準もなく、その日の天候やトレイルの状況等によってタイムも大きく変わってきます。

なので目標タイムはあくまで目標とし、タイムが達成できようができまいがとにかく出し切ろうということを心に誓いました。

スタート

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当日の朝起きると外は大雨。第1回大会は気温が30度を超える灼熱地獄、第2回大会は曇り空で気温も高くない走りやすい天候、そして今年は雨という、毎年違ったバリエーションで飽きさせない演出が心憎いです。

雨のトレラン大会、最初はすごく嫌だったんですが、今回はちょっと楽しみでした。比叡山って普段からよく走りに来るんですが、わざわざ練習で雨の日を選ばないから雨の比叡山走ったことなかったんです。泥んこの比叡山走を楽しもう、そんな前向きな気持ちでスタート地点に向かいました。

今年も第2ウェーブでのスタートです。最初に50マイルの選手が、その10分後に第1ウェーブの選手がスタートし、その20分後のスタートでした。第2ウェーブだし前の方に並ぼうと思ったら思いの外前の方に行ってしまって2列目に。

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スタートして東塔までは鏑木さんの先導。先導のためゆっくりなペースとは言え、目の前で鏑木さんの走っている姿が見れて嬉しかった。そのままトレイルに入る箇所で鏑木さんに見送られて、大比叡を目指します。スタート2列目に並んだおかげでトレイルに入っても渋滞はなく、第2ウェーブの先頭集団の後に付けて順調に登っていきました。

前半20km

大比叡を過ぎてからの下りでは、先頭集団が結構早くて段々前との間隔が空いていきます。さすがに序盤も序盤なのであまり突っ込みすぎないように気をつけながらも、下りのトレイルを順調に飛ばしていきました。

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水飲対陣跡の手前あたりでふと、自分の周りに誰もいないことに気付きました。第2ウェーブの先頭集団が先に行って、第2集団との間にエアポケットが生まれているような状況。このあたりは普段よく走っているコースです。1人きりでお馴染みのトレイルを走ってると、いつもの練習みたいでリラックスして走れました。この不思議な状況が楽しくてあっという間に駆け抜けました。

比叡アルプスの登りに入ってからは前後の間隔も詰まって前の人についていく形に。この辺りから第1ウェーブの後ろの方の人達に追いついたので、追い抜ける箇所で前に出つつ登っていきます。

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ここまで結構順調で目標タイム通りに進めていたのですが、第1エイド手前の一回谷に降りてまた登る急坂で渋滞が発生。谷底で良い休憩になりますね、なんて前後の人と話しながら5分くらい待っていましたが、時計を見ると目標のペースからは少し遅れ気味。ちょっとまずいなと思いながらじっと待ちました。

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第1エイドに着いたのはスタートから1時間40分後。目標タイムからは10分遅れていました。水もあまり減ってなかったのでバナナとクリームパン食べて、常田さんに声かけてもらって、コーラを飲んですぐに出発です。

ここからは走りやすい区間も多く坂本への下り基調のトレイルを快調に飛ばして行きたいところでしたが、第1ウェーブの選手が前に詰まっているので後ろについて追い越しての繰り返し。少し遅れ気味だったので石段の下り区間に差し掛かっても脚へのダメージをあまり考えずにぐんぐん下って行きました。

坂本からは前半最後の大きな登りへ。比叡山高校のグラウンドの手前で天使の羽根が生えた看護婦さんがレッドブルを振る舞っていたので一杯もらいました。ここの登りは急な箇所も多く厳しい登りなんですが、普段からよく来るコースで何度も何度も登ったので、最近はもうあんまり苦手意識もありません。最初の頃はあんなに辛かったのに。もちろん今も辛いんですが、知ってる辛さというか「まだ登るの?」みたいな感覚がなくて「ああココ辛いところね、知ってる知ってる」みたいな、辛いことを受け入れられるようになっていました。

第2エイド

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第2エイドではお馴染みの鶴喜そばを堪能。毎年いただいてますがここで食べるそばまじでうまい。毎年おかわりしてうどんも頂いてしまいます。

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エイドを出発したのが3時間16分。目標からは6分遅れでした。スタート時点には結構降ってた雨もこの頃には気にならないくらいの小雨に。ここまでは快調。そこそこ頑張れてる。勝負はここから。

去年もせりあい地蔵までは頑張れました。せりあい地蔵までの横高山の登りは、頑張らないと登れないから、嫌でも頑張れる。でもそこで、一回気持ちが切れてしまうんです。せりあい地蔵を超えて、横高山と水井山の壁みたいな急登を超えた頃に、一回やりきった感を感じてしまう。そこから滝寺までが一番気が緩むポイントです。そこで踏ん張れるかどうか。

やるしかない。根本中堂を出て、延暦寺エリアから京都一周トレイルのコースに入り、清龍寺への下りの分岐に差し掛かったところで一段ギアを上げ、下りの林道を突っ走りました。

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せりあい地蔵を目指して

横高山の登り口は、第1回の時に熱中症で倒れた思い出深い場所です。ここに来るたびあの時のことを思い出します。今回もそう言えばと思い出し、塩熱サプリを3粒噛み砕いて登り始めました。

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登り慣れて苦手意識の無くなった坂本から比叡山への登りと違って、ここ横高山への登りは何度登っても本当にしんどい。とにかく単調。ずっと同じような斜度で、ずっと同じような景色で、トラバース気味に行ったり来たり。こういう単調な辛い登りが続く時は何か楽しいことを考えたり、意識を別のことに持って行けると楽なのでできるだけ他のことを考えたいけれど、全く考えられません。すぐに脚や腰の痛みや悲鳴をあげる肺や吹き出す汗に気持ちが持って行かれる。辛い辛いという思考に支配されてしまう。1番から始まって15番でせりあい地蔵に着く看板の表示も、あんまり見たくないのにふと5番とかが目について嫌な気持ちになる。まだ5番かよ...みたいな感じでとにかく体も心も持って行かれる。

そんなしんどい登りだけど、登りきるとご褒美が待っています。せりあい地蔵の施設エイドは毎年賑やかで、近づくとカウベルの鐘の音と大きな声援が聞こえてきて、一気にテンションが上がります。

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今年は登りきった所でいちごちゃんに写真を撮ってもらい、携帯コップを取り出してコーラをもらい、丹羽さんにボトルに給水していただいて、メロンやオレンジを頬張って堪能しました。ここまで26kmが4時間30分。目標タイムからは10分の遅れ。清龍寺の下りなんてかなり頑張って飛ばしたはずだけど、なかなか目標のペースに追いつけません。

横高から大尾山

横高山と水井山の山頂手前の壁みたいな急登を2つ超え、中だるみしがちな区間に突入です。そろそろ疲労が溜まってきて重い脚に下りの衝撃が堪えます。ゆるい登りもついつい歩きたくなる。周りのランナーも登りの途中に休憩している人がちらほら出てくる頃です。自分も止まりたい誘惑と戦いつつ、淡々と進みます。

横高山で溜まった疲労でどうしても脚が重く、やっぱりスピードは出ない。それでも走れるところは走るし、止まって休憩するのだけはやめよう。最低限踏ん張って、滝寺過ぎてから攻められるように周囲から遅れないように、人に抜かされたらできるかぎり付いていこうという方針で進みました。

やっぱり攻められず中だるみしたかなと思った区間ですが、後からStravaで振り返ってみると、仰木峠から大尾山も、大尾山から滝寺も、どちらの区間でも一応プライベートベストが出ていました。劇的に早くなったわけではないけれど、少なくとも去年よりも早かった。がんばりました。

滝寺を超えて

しかしそれでも、滝寺到着が5時間40分。目標ペースからの遅れは14分に広がっていました。去年のタイムと比べても10分早いだけ。去年からは30分縮めたいのに、がんばってもがんばっても縮まらない。目標タイムの設定をミスったか。無謀なタイムを設定してしまったんじゃないかと思い始めます。

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滝寺の私設エイドで頭からシャワーの水をかけてもらって、コーラをいただいて、ガンバフンバの掛け声にあわせてポーズを決めていざ出発。ここからは舗装路の登りです。

ここの舗装路は晴れてると直射日光が当たってめちゃくちゃ暑いんですが、今日は幸い曇り空。パワーウォークでガシガシ登っていきます。しんどいけれど、トレイルの登りに比べれば傾斜は緩やかで、いいペースで進めています。このままの勢いで第3エイドまで飛ばしていこうと思った所で現れた迂回路が曲者でした。このレースのために急遽切り開かれたという迂回路は、なかなかの急登。短いパートでしたがしっかり脚に堪えました。それでもこの辺りから何故か気持ちのスイッチが入って、苦手な登りにも関わらず誰にも抜かれませんでした。

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そのままの勢いで第3エイドに突入。6時間50分。ペース表を見ると目標ペースからの遅れが5分に縮まっていました。やっと縮まってきた。これは行ける。もうペース表は見ないで突っ走ろう。そう考えてジェルを入れ替えるついでに用意していたペース表をバッグの奥にしまいました。さあ行くぞ!

舗装路と林道だけ速い奴

トレイルランナーとしては恥ずかしい限りなのですが、僕は下りの舗装路や林道が得意です。登りは追い抜かれてばかりだし、テクニカルな下りは腰が引けて足さばきもうまいわけではありません。でも、舗装路や林道の下りはあんまり脚の筋力関係なく、重力にあわせて脚を回転させていれば早く走れるのです。

ここ第3エイドからの舗装路の下りは、全コースの中で最もスピードの出る区間。ここが僕の勝負どころです。キロ5分を超え、早いところではキロ4分半のペースでかっ飛ばしました。どんどん周りのランナーを追い抜いていけるので更にテンションが上がります。下りの衝撃や膝へのダメージなど一切気にせず、とにかく突っ走りました。

下りきって残り9km。目標の8時間半を切るには全コース通じてキロ10分12秒のペースを超える必要がありますが、この時点で時計は初めて10分12秒を超え、10分ちょうどくらいのペースになっていました。行ける行ける行ける。私設エイドでちそジュースをいただいて、和太鼓の応援を背に、横川への登りに挑みます。

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ここから横川への登りは、坂本や横高山や最後の登りみたいな派手さはないものの、地味にしんどいんです。他の箇所のような急登がないものの、琵琶湖展望台までのトレイルはかなり登りごたえがあります。もう40km走ってきてさすがに脚の筋肉の在庫が尽きかけた状況。息を切らせながらなんとか食いしばって登ります。全部出し切るんだと自分に言い聞かせて前へ前へ。琵琶湖展望台でアイスコーヒーをいただいて、いよいよ横川エリアへ。

ここの石の階段がまあしんどい。今回のレースで一番キツかったのはここなんじゃないかというくらい辛かった。鉄の手すりにしがみついて腕の力も総動員して登っていきました。

エイドの手前では野田さんがハイテンションで迎えてくれて、エイド前のトレイルへ。このエイド前のトレイル、毎回何でこんな所通されるんだ!と思ってたけど、今年は野田さんが待ってると思ったら足取りも軽く登りも小走りで駆け抜けました。

ゴールへ

横川のエイドを出たのが7時間40分。目標の8時間半まであと50分。残り5kmなのでちょうど1キロ10分のペースで進めば目標達成です。あとは3kmの林道の下りと2kmの登り。目標達成はギリギリのライン。痺れる展開です。

エイドを出て林道へ折り返すところで野田さんと2度めのハイタッチ。その瞬間、右足のふくらはぎにビリっと電気が走ったような感覚がありました。やばい、攣りそう。去年もこの林道で脚が攣ってスピードが出せず、ギリギリ9時間を切れなかった苦い思い出が蘇ります。走りながら塩熱サプリを取り出して2粒流し込むと、一度は痙攣が落ち着きました。

行ける行ける行ける。キロ4分台のペースで突っ走り、得意な林道の下りでラストスパートをかけました。しばらく走っているとまた痙攣が始まり、また塩熱サプリを取り出して食べての繰り返し。気がつくと塩熱サプリも残りが1粒に。保険のために残った1粒を大事にしまい。後は祈るように走り続けました。

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そうして迎えた最後の登り。林道を飛ばしたせいで息はあがり、脚もふくらはぎだけでなく脛や腿など色んな所が攣りかかった状態ですが、気合で突っ込んでいきます。あと2km。あと30分。前へ前へ。絞りきった雑巾から最後の1滴を絞り出すように脚を踏ん張って登っていきます。

参道に出る手前の急登に最勝寺さんがいて、写真を撮りながら「早いね」と声をかけてくれました。最終ランナーとして背中を押してもらった第1回から2年、確かに早くなりました。そしてレース中に、こうして色んな所で色んな人に声をかけてもらえるようになりました。去年ここで撮ってもらった写真はものすごいしかめっ面でしたが、今年は笑顔でした。

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最後の1km。今年は感慨に浸ったり感動したりする余裕もなく、もう必死。最後の1kmで全部出し切って空っぽになってゴールしたい。そう思ってペースを上げます。舗装路に入って、傾斜が更にきつくなり、壁のような登りを超えて延暦寺会館の前へ。やっと登りきった。やりきった。後はゴールするだけだと思ったところに、去年の信越を一緒に走った平井さんがいました。「走れ!」今年は平井さんの声に押されてゴールへ駆け込みました。

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8時間25分21秒。目標達成です。そして、持てる力の全てを出し切りました。ゴール地点には近藤さんといちごちゃんがいて、やりました!と喜びの声をかけたその瞬間、脚が攣ってその場に倒れ込みました。最初に左足の土踏まずが、その後に右脚のふくらはぎが逝ってしまいました。スタッフの方に伸ばしてもらい、しばらくゴール地点で醜態を晒し続けてしましました。

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あと少し攣るのが早かったら、目標タイムには届かなかったかもしれません。ギリギリでした。でもそんなギリギリのレースが出来たことが、本当に嬉しかったです。

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タイム振り返り

こうして実際のタイムと、想定していた目標ペースや去年のタイムと比較してみると、前半はほとんど去年と変わらないペースで、後半頑張れたということがわかります。特に滝寺を過ぎてからの残り15kmくらい。今年は全てを出し切るということがテーマで、最後に攻めに出ることができました。

ポイント 今年のタイム 目標ペース 去年のタイム
スタート 0km 0:00 0:00 0分 0:00 0分
(東山63番 7km) 0:50 0:50 0分 0:55 -5分
A1ロテルド比叡 10km 1:40 1:30 +10分 1:35 -5分
(日吉東照宮 16km) 2:24 2:15 +9分 2:25 -1分
A2根本中堂 19km 3:16 3:10 +6分 3:20 -4分
W1せりあい地蔵 26km 4:30 4:20 +10分 4:45 -14分
(仰木峠 30km) 5:18 5:10 +8分 5:35 -17分
W2滝寺 33km 5:54 5:40 +14分 6:16 -22分
A3仰木 37km 6:35 6:30 +5分 7:05 -30分
(元三大師道入口 41km) 6:56 7:00 +4分 7:30 -34分
A4横川中堂 45km 7:39 7:40 -1分 8:10 -31分
ゴール 50km 8:25 8:30 -5分 9:04 -39分

そしてやっぱり、サブ8.5という目標設定が絶妙でした。ギリギリの目標タイムがあったから、最後に何とか達成しようとして力を出し切ることができたのだと思います。そんな目標タイムを設定できたのも、これが毎年走っているレースで、日々の練習で走っているコースだからだと思います。本当に有り難いことです。

憧れ

今年は自分のレースが終わってから、ずっとゴール地点で他のランナーのゴールを見つめていました。今年から新設された50マイルのコース。自分がギリギリ走りきれたコースの後半部分をもう1週するのに、制限時間があんまり変わらないというありえない難易度のコースです。その出場者が皆、本当にかっこ良かった。自分もいつか、あんな風になりたいと強く思いました。西さんは残念ながら70km地点で関門にひっかかったそうですが、根本中堂に帰ってきた西さんは輝いて見えました。

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西さんも近藤さんも、めちゃくちゃ早い。自分の叩き出した渾身のタイムよりも1時間以上も早く走りきるんです。いつか自分もこんな風になりたい。でも今は、自分のペースで少しづつ進みます。

まずは来月の100マイルへ。その後のことは、また来月考えます。

シンプルなルール

6月に予定している初めての100マイルレースに向けて、1月の末から日々走り込んでいます。目標ちゃんと決めておかないと途中でやめちゃったり惰性で走りそうだったので、週に50km、月に200km走るという目標を決めて走っていました。

2月は目標通り200km走れて、3月も前半で100km走れたからこの調子で後半もと思っていた先々週、左の膝が痛くなってしまいました。とにかく距離稼ぐことを目標にしてたので、あんまり練習にメリハリをつけられず、疲労抜きのジョギングとがんばって走る日の区別が曖昧になっていて、とにかくがんばるという感じになってたんですね。それだと走る時はいつもどこかしら脚に疲労がたまった状態で走ることになるのでしんどいし、その割に追い込みも中途半端になるのでそんなにタイムも伸びないし、挙句に膝痛くなっちゃったし、ということでトレーニング方法見直しの必要性を感じてました。

そんな気持ちで何気なく見た先週のランスマが、去年の富士登山競走に向けたトレーニングをする回の再放送でした。そこで、鏑木さんが「練習で全力を出しきれなかったら本番で全力出せない」みたいなことを言ってたのを聞いてハッとしました。そしてチーム100マイルの練習で、どんなに傾斜のきつい上りでも走りきるというのをやっていて、これだと思いました。

そこで今朝は「歩かない」というシンプルなルールを決めて、成就山を登ってみることにしました。

成就山というのは仁和寺の裏にある山で、3km程度の登って下るコースに八十八のお堂が並ぶ、四国お遍路のミニチュアのある山です。大きな石段が続く上りもあり、236mという低い標高だけどいつもは割りと序盤から歩いて登る箇所も多い山です。これまではもちろん、全て走って登ったことはありませんでした。今日はとりあえず、行けるところまで走って行ってみようと思いました。

次のお堂まで何とか走ろう、次のお堂を過ぎたらそのまた次のお堂までと思って何とか走り続けました。急な石段の箇所ではステップを細かく刻んでなるべく大股にならないように気をつけながら、とにかく脚を動かし続けます。しんどくて何度も歩こうかと思ったけど、我慢し続けて16分34秒、何とか山頂まで走りきりました。

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区間の過去のタイムを見ると、そんなに早いタイムではありませんでした。細かいステップでちょこちょこ走るよりも、パワーウォークでがしがし登る方が早いっていうことなんでしょう。それでも過去一番きつかったです。これは良い練習になるなと思いました。

今まで一度も走りきることができなかった上りも、単純な1つの「歩かない」というルールのおかげでそれだけ守ってれば何とかなるということがわかりました。今後はそういう絶対に守るルールを意識しながら、メリハリをつけて走ろうと思います。とりあえず明日は、キロ6分くらいのゆるいジョグで疲労回復にあてようと思います。

ハセツネ2016を走ってきました

日本山岳耐久レース (ハセツネCUP) を走ってきました。僕にとって初めてのハセツネです。先月の信越五岳に続く、今年の2大メインレースとして挑んだこの大会。今回は完走するだけでなく、タイムに拘る、自分の全てを出し切ることに拘る、それがテーマでした。

目標はサブ15。更に、最初から全力で突っ込んで13時間台でのゴールを目指そう。体力の温存なんて忘れて、最初から全てを出し切りたい、そして全てを出し切った先にある、自分の限界に挑戦したいと思っていました。

今思うと、ちょっといい気になっていたんだと思います。先月の信越五岳を完走できて、もっと行ける、もっとやれると思っていました。でもそんな脳天気に突っ込んで行ける程、ハセツネは甘くなかった。日本山岳耐久レースと冠されたこのレースで、山の厳しさを教えてもらいました。

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朝から降り続けた雨は、スタート前に止みました。五日市中学校のグラウンドに、目標タイム毎に列を作って並びます。僕が並んだのは12時間台の列。13時間台の列がなかったので、1つ前の列に紛れ込みました。

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それでもスタート地点からはるか後方。このままだとまともに渋滞に引っかかってしまうんじゃないか。既に焦り始め、スタートから1分30秒後、ゲートを越えたところからいきなり全力で突っ走ります。

息を切らせながらロードを走りきり、廣徳寺を越えて最初のトレイルに入るところからいきなりの渋滞。変電所を抜け、今熊神社の石段を登った先でもまた渋滞。渋滞を抜けると次の渋滞までになるべくいい位置を確保しようと気合で走ります。普段は歩くくらいの上り坂でもおかまいなし。そうして前の方の位置を確保すると、周りのペースがめちゃくちゃ早く、自分が遅くて渋滞悪化の原因になったら嫌なので更にペースを上げました。

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そうしてペースアップの循環にはまること1時間21分。十分13時間台の狙えるタイムで入山峠を越えました。

入山峠からは醍醐丸までの登り基調のトレイルへ。気がつくと、全身が汗でびしょ濡れになっていました。気温はそこまで高くはないものの、午前中降り続けた雨で湿度が限界まで高まっていたんだと思います。霧に覆われた多湿の森。ミストサウナの中を走ってるようでした。フラスクに入れた麦茶は全て飲み干し、ハイドレーションパックの水に手を付け始めていました。

そして、早くも脚が重く上がらなくなってきました。レースはまだ序盤、10km程度進んだだけです。いくら何でも早すぎます。そして少しづつペースが落ち、周囲から遅れ始めました。

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醍醐丸を登りきったのは3時間5分。そして第1関門の浅間峠に到着したのは、辺りもすっかり暗くなった4時間33分。もう既に、サブ15もギリギリのペースまで落ちていました。脚が重く、汗ばっかりかいて息があがり、なかなか思うように走れずに焦りました。第一関門ではヘッドライトを装着し、ポールを取り出して、妻につくってもらったゆかりおにぎりとウィダーインゼリーを食べて、トイレに行って、到着から10分後に出発しました。

日が暮れると、ようやく蒸し暑さが収まって涼しくなってきました。第1関門からはポールが使えるので、重い脚を腕でカバーしながら進みます。ここから三頭山を超えるまで、15km近く登り基調の続くハードなパート。前の人のペースに合わせて、ポールを駆使して進み、飛ばしすぎないように気をつけました。

そうしてたどり着いた32km地点の西原峠。ここで空になったジェルのゴミとジェルを入れ替えるためにバックを下ろした時、あまりに軽すぎることに気づきました。もしやと思ってハイドレーションパックを取り出してみると、水がほとんど入ってませんでした。呆然としました。

ここから唯一の給水ポイントである第二関門まで、約10km。間にはコース最高峰の三頭山がそびえ立ちます。三頭山への厳しい登りを水なしで進むなんて、さすがに無謀なんじゃないか。リタイアも頭をよぎりました。でも、行けるところまで行ってみることにしました。

とにかく、汗をかかないように少しづつ登る作戦で進みます。体温が上がると汗が出るので、少し登って息があがってくると止まり、体が冷えてきたらまた進む。最後わずかに残っていた水も、3口目であっさり尽きました。

だましだまし進むも、だんだん頭がクラクラしてきます。何度も何度も道端に座り込み、呼吸を整えて体を冷やします。そうして何とか三頭山を登りきり、山頂に到達。ついに登りきりました。

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後は5km下れば給水です。もう水が飲みたくて飲みたくて、気が狂いそうでした。あまり急いで体温が上がると汗が出ますが、かまわず走りました。後は下っていけば水が飲めると、そう信じて。

しかし梢口峠を過ぎたところで、また急登が現れました。もう嫌だ。水、水、水、水、水、水、水、水、水、水。意識も朦朧とし、その後も何度も出てくる登りを休み休み進みました。

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そうしてついに第二関門、月夜見駐車場の灯りが見えました。第二関門、9時間35分での到着です。ここでもらえるのは1.5リットル以内の水かスポーツドリンクのみ。念願の水ですが、勢い余って飲みすぎるとまたすぐ無くなってしまいます。少しだけ飲んだ久しぶりの水はめちゃくちゃ美味かったです。一緒におにぎりとチョコレートデニッシュを食べました。ようやく生き返った心地がしました。

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通過タイムはもうサブ15でのゴールが厳しくなってきていました。仕方ないから、とにかく完走を目標にしよう。あっさりと目標を切り替えて出発しました。

第二関門からは御前山と大岳山の2つの大きなピークを超えていきます。

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御前山を登りきった頃、GPSウォッチの電池が切れてしまいました。辛うじて現在時刻は確認できるものの、ペースや距離はわからない状況です。いよいよタイムはどうでもいいと感じるようになってきました。とにかく無事に完走しよう、そうしよう。

集中力も切れて、ぼんやりと御前山を下っている時でした。急な岩場で足を滑らせ、体が前のめりに中に浮き、前面から足元の岩に向かって倒れ込みました。咄嗟に持っていた左手のポールを前に突き出し、岩肌への直撃を免れます。その衝撃でポールはポッキリと折れ、右膝を強かに打ち付けました。

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ハセツネのために先週買ったばかりの Black Diamond のトレラン用ポール。でも、もしポールの代わりに手を付いていたら、折れていたのは僕の骨だったかもしれません。僕の代わりに犠牲になってくれたんだ、そう思いました。

打ち付けた右膝からはたくさん血が出ていたので、もしかしたらパックリ切れてしまったのかと心配しました。貴重な水を膝にかけて泥を落としてみると、4箇所に切り傷があるだけ。これなら何とか止血できそうです。ファーストエイドキットから絆創膏を取り出して貼り付け、血で滑ってすぐに剥がれるのでテーピングでぐるぐる巻きにしました。折れなかった方のポールを杖の代わりにして、右膝をかばうように歩き出しました。

何とか御前山を下りきり、痛む右膝を引きずって大ダワへ到着したのが午前1時丁度。出発から12時間が経過していました。大ダワには、救護エリアらしきものが見えます。

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怪我した右膝を見てもらおうかとそちらに向かってみると、そこはリタイアした人のための場所でした。ハセツネでは第二関門の給水以外、一切の補給やサポートが禁じられています。ここで救護を受けるということは、それはリタイアすることとイコールなのです。自分の力で何とかしないといけない。ハセツネの厳しさを、改めて思い知りました。

大岳山は、岩場の続く厳しい山です。三頭山、御前山と越えてきた2つの山。その最後に位置する最後の難関、大岳山。最初は何とか登っていけたものの、頂上付近の鎖場が強烈でした。片方のポールと、空いた手と、両足の全てを駆使して登り、何とか山頂に到着。

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急峻な登りの後は、急な下りの岩場です。御前山で派手に転んだ記憶も新しく、とにかく怖かった。足を滑らせたらさっきの怪我どころじゃ済みません。慎重に下っていきました。

大岳山を下りきり、走りやすい下りを飛ばしていると、今日始めて沢の流れる音が聞こえてきました。あの貴重で希少な水が、勢いよく流れる音です。テンションが上って更にスピードを上げると、天然の水場がありました。

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第二関門での給水は1.5リットルと限られた量でしたが、この湧水に制限はありません。やっと、お腹いっぱい、嫌というほど水を飲みました。フラスクにも給水し、頭からかぶって出発しました。

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最後の関門、長尾平の第三関門には13時間49分で到着しました。ベンチに座って、バックに残った最後の補給食、アンパンを取り出します。こしあんが甘くて美味しくて、さっきくんだばかりの湧水と一緒にいただきます。

ふと、自分は何をしてるんだろうと思いました。

東京の山奥までやってきてここまで14時間近く進んできたのは、ベンチに座ってアンパンを満喫するためじゃなかったはずです。水がなくなったからだとか、GPSウォッチの電池が切れたからだとか、転んでポールが折れたからだとか、膝を怪我したからだとか、そうやって諦める理由ばかり探して、完走すればいいやなんて呑気にアンパンを頬張る自分が急に情けなくなりました。このままじゃ駄目だ。食べかけのアンパンをバックに押し込んで走り出しました。

情けなくて悔しくて、涙が出てきました。やがて涙は後悔の嗚咽と共に溢れ出し、全力で走りながら号泣していました。せめて最後に、全てを出し切ってゴールしたい。こんな情けない言い訳ばかりのままレースを終えたくない。出し切ってやりきって、それで駄目なら仕方ないけど、自分に負けるのだけは嫌でした。

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日の出山で東京の夜景を眺める間もなく、写真だけ撮って後で見ようと走り出しました。走りやすい下り基調の金比羅尾根。息が切れてもお構いなしに全力で走り続けました。シングルトラックの細い道でしたが、沢山の人に道を譲ってもらいました。すみません、ありがとうございます、右を失礼します。そう小声で声をかけ、スピードは緩めずに疾走しました。

残り5kmの標識を越えた頃にはもう14時間50分を超えていました。いくら何でもサブ15はもう絶望的です。でも、それでも良かったんです。とにかくやりきろう、全力を出し切ろうと走りました。

残り1kmの標識を超え、最後のロードも駆け抜けて、15時間26分06秒でゴールしました。男子総合で626位。第三関門の735位から、100人以上を追い越してのゴールでした。

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反省ばかりのレースになりました。調子にのって最初に突っ込みすぎたこと、給水の配分を誤って水を切らしたこと、GPSウォッチの設定を誤ったこと、そして何より、自分に言い訳をして早々に目標を諦めたこと。でも、最後の最後にがんばれて良かったです。

去年初めて比叡山のレースに出てから2年半、順調に色んなレースを完走してきました。それでちょっといい気になってたんだと思います。サブ15どころか、もっと行けるんじゃないか。それが無理そうだと分かると、無理だった理由を探して小さいプライドを保とうとする。そんな自分の弱さに直面したレースになりました。

帰りの電車で京都の山が見えてきた時、この京都の山々でもう一度出直そうと思いました。今年は11月にMount Chop、12月に東山三十六峰を走ります。大好きな京都の山でまた、がんばりたいです。

Black Diamondのトレラン用ポール、ディスタンスカーボンZを使ってみました

ハセツネが第1関門以降でポール使用可というので先日買った、Black Diamondのトレランポールを試しに行ってきました。行く前に小川壮太さんの動画で予習。ダブルポールで登る方法と、下りで体の外に突くっていうのが参考になりました。

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実際使ってみると、色んな持ち方ができるっていうのが面白かったです。登りではストラップに手を通して、グリップを握らなくても支えられるのが楽でした。普通に握ってると握力必要になってくるけど、ストラップが勝手に支えてくれるので握る必要がないんです。ただ、長時間ストラップを手首に押し付け続けると辛くなってくるのかも。

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一方下りだと素早くポールを動かさないといけないので、ストラップは使わずに頭の方を軽く握って、手首のスナップでポールを前後に動かしていくと突きやすかったです。ジグザグに下っていく時に外側にポールをついてスキーで斜面を下っていくときみたいに突くのが楽しかった。新しい下りのトレイルの楽しみ方を発見した感じがありました。あと下りはスピードが出るので素早く動かす必要があって、カーボンの軽いポールにして良かったなと実感できました。2本で285g。奮発した甲斐があった。

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バックには、最初バンジーコードを使って縦に装着してました。全く揺れることもなく安定してて良かったけど、走りながら装着できないのが難点でした。

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そこで途中でバンジーコードの下の方に刺してみました。これは走りながら後ろ手で装着できた。多少揺れる感じはあったけど、これでも十分走れる感じでした。ハセツネでは最初縦に装着しておいて、第1関門を超えたら取り出し、一時的に使わない区間が出てきたら横向きに装着すると良さそうでした。

Black Diamond(ブラックダイヤモンド) ディスタンスカーボンZ BD82334 110cm

Black Diamond(ブラックダイヤモンド) ディスタンスカーボンZ BD82334 110cm

ハセツネの装備

一週間後に迫ってきました日本山岳耐久レース (ハセツネCUP) 2016。信越五岳の疲労がやっと抜けてきたところで、もう来週ハセツネです。

今日は持っていく装備を引っ張り出してきて、足りないものがないか、バックにちゃんと入るのか確認しました。ハセツネは初めての挑戦。エイドがなく給水を1度受けられるだけという厳しいレギュレーション。今回はサブ15を目標にしたので、ゴール目標時間は午前4時。ライトや水や補給食など持っていくものが多いけど、何とか全部バックに入りました。後は当日おにぎりとかパンとかを潰して何とかねじ込みます。

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  • ウェア
    • 1. Tシャツ:Newline Imotion Tee
    • 2. ランパン:Patagonia M's Strider Shorts 5in
    • 3. シューズ:Altra LONE PEAK 3.0
    • 4. 靴下:Drymax Trail Run 1/4 Crew-Turndown
    • 5. 手袋:The North Face フィンガーレストレッキンググローブ
    • 6. 帽子:The North Face ランナーズハイワークキャップ
    • 7. 時計:Suunto Ambit 3.0 Sports
  • 持ち物
    • 8. バック:Nathan Vapor Wrap
    • 9. 水:ハイドレーションパック 2L
    • 10. 水:Nathan フラスコ 300ml x 2
    • 11. 補給食
      • Mag-onエナジージェル x 12、塩熱サプリ
      • 好きなもの (おにぎり、ゼリー、ワッフル、アンパンあたりを予定)
    • 12. レインウェア上:The North Face トライアンフレインジャケット
    • 13. レインウェア下:The North Face ストライクランニングパンツ
    • 14. ストック:Black Diamond ディスタンスカーボンZ 110cm
    • 15. ヘッドライト:Suprabeam V3air
    • 16. 手持ちライト:ジェントス閃 SG-355B
    • 17. ファーストエイドキット:絆創膏、テーピング、ポイズンリムーバー等
    • 18. カメラ:Olympus TG-4 Tough
    • その他 (スマートフォン、地図、予備の電池)

ウェアは基本的にTシャツとランパンのみといういつものスタイルになりそうです。信越五岳で雨が1日中降り続ける中でも結局Tシャツ1枚で何とかなったので、今回もよっぽどのことが無ければ大丈夫だろうと、ウィンドシェルは持っていかないことにしました。雨が激しくなるような予報じゃなければ、帽子とレインウェアの下も置いていきそう。

靴は信越の豪雨の中で最高の水捌けと最高のグリップを発揮してくれたローンピーク3.0。あれだけ1日中雨が降り続けても足に何のトラブルもなかったので、もう個人的にめちゃくちゃ信頼してます。ハセツネはどんなコンディションになるかわからないけど、Drymaxと一緒にどんな路面でも対応してくれそうです。

水はハイドレーションパックに2L満タンに入れて、フラスコにも水か麦茶を入れて全部で2.6L持ちます。僕は水が好きでいつも沢山飲む方だけど、これ以上持つと流石に重すぎるしスペースもないので、何とか第2関門の給水ポイントまで飲みすぎないように気をつけながら凌ぐつもり。補給食もできれば固形物を沢山食べたいけど、もうバックに入れる余地がないのでジェルを多めに持って、後は当日詰められるだけおにぎりやパンを突っ込もうと思います。もうあんまりスペースないけど。

ポールはつい一昨日、東京出張のついでに買ったばかり。高かったけど奮発してカーボンのめっちゃ軽いやつを買ってしまいました。まだ1回も使ったこと無いので、宝の持ち腐れにならないよう、明日山に行って試してみます。

信越五岳2016を走ってきました

9月18日に開催された、信越五岳トレイルランニングレース2016を走ってきました。僕にとっては初めての100kmを超えるレースです。

昼夜を問わず降り続けた大雨で、道と泥と沢とが渾然一体となった混沌のトレイルは完全に未知の世界、想像を超える大冒険の旅になりました。

スタート前

目が覚めて枕元に置いていた時計を見ると夜中の0時過ぎでした。まだ2時間程度しか寝ていないのに、興奮してすぐ目が覚めてしまいます。窓に激しく打ち付ける雨音が聞こえ、不安が的中したことを知りました。どうやらひどい天気になりそうです。

泊まっていた斑尾高原ホテルから送迎バスで数分、スタート地点のレストランハイジで朝食を取り、トイレへと続く長蛇の列に並んでから用を足してスタートゲートに向かいました。位置に付いたのがスタート10分前、中盤やや後方からのスタートになりました。雨は降り続けているものの気温はあまり低くなく、レインウェアも帽子も脱いでバックにしまいます。Tシャツとランパンのみ。さあ、スタートです。

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1A 斑尾山の登山口まで

スタートしてからすぐに右に折れてしばらく坂を登った後、ゲレンデを横断するところで、道の両脇に応援の人達がずらりと並んでいて声援の花道が形成されていました。その中に同じビルで働く西さんがいて、手を振って声をかけてくれました。西さんは平井さんのペーサーとして参加されていたので、5Aでまた会えたらいいなと思いながら手を振り返して走り抜けました。

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しばらくフラットな林道を気持ちよく走っていると「この先、蜂がいます!」という声が。恐る恐る進むと道端で何人かの方がポイズンリムーバーを使っていました。こんなに雨が降ってるのにまさか蜂が出て来るなんて。心配して駆けつた石川弘樹さんも1人1人に「大丈夫ですか?刺されていませんか?」と声をかけられていました。

1Aまではフラットな道が続き、とにかく飛ばしすぎないように、それだけを肝に命じて進みました。飛ばしすぎていないか時計を見るも、長丁場をバッテリーが持つよう60秒間隔のGPS取得にしていた為かデタラメな数値が並んでいます。これは自分の感覚を信じるしかない、そう考えて進むこと18.5km。1A通過は目標タイムの丁度1分前。前半突っ込んで後半グダグダになるのがいつものパターンですが、今回はリラックスして走れました。

2A 斑尾山の登りと下り

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1Aから2Aまでは、斑尾山を登って下る5.4kmの道程です。スタートしてから徐々に強くなっていた雨ですが、ここまでそれ程気になっていませんでした。でも登り始めてすぐ、雨の影響を実感します。ドロドロになった地面が滑って中々踏ん張れません。足を取られて滑り落ちる人までいました。ただでさえ急な登りもあるのに、脚の筋肉余計に使ってしまって嫌だなと思っていましたが、深刻なのは山頂を過ぎてからの下りでした。

ジグザグに下っていく、普段なら気持ちよく走れる感じのトラバース。ここがどんなに気をつけても、どんなにゆっくり足を置いても、老若男女問わず、盛大に滑ってずっこけます。全身泥まみれになって、もうみんな笑っていました。何やっても転ぶので、途中からはお尻をついて天然の滑り台を楽しみました。手も足もお尻も背中も何もかも泥まみれ。下りきってやっと終わったと思ったところで、最後に1回転するほど滑って胸まで泥だらけになり、そのまま2Aに突入しました。

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真っ先にバケツに用意された水で両手の泥を洗い流し、そうしてやっと補給です。水とクエン酸とコーラを1杯ずつもらって、バナナと巨峰を頬張れるだけ頬張って出発しました。ここで目標タイムから10分以上の遅れ。あの下りでタイムロスしてしまったと、少し焦り始めました。

3A 袴岳と林道

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2Aを出て湿原を抜け、袴岳の登りに入ったところで「去年の比叡山で最終ランナーだった方ですか?」と声をかけられました。びっくりして「何で知ってるんですか?」と質問で返してしまいましたが、何と僕のブログを読んで下さっている方でした。かっとび伊吹にも出られて近藤さんのこともご存知なんだそうで、近藤さんの膝の具合を心配されていました。今回の信越でも僕の書いたペース表も参考にして下さったそうで、めちゃくちゃ嬉しかったです。自分もレースに出る前は必ずブログを検索して他の方の体験を参考にするので、同じように誰かの参考になればと書いておいて本当に良かったなと思いました。お名前を伺うのを忘れてしまったのが心残りですが、土砂降りになってきた雨の中、胸に熱いものを頂いて別れました。

4つの登りがあると事前に聞いていた、袴岳への登り。登っている間にいくつ目だかわからなくなって、やっと登り終わったと思ったらまた登りが。今度こそと本当に登りきって始まった下り。つるつる滑って何度か転倒した末、緩やかな下りの林道に出ました。

事前に調べた色んなブログ記事で、ここで飛ばすと脚を使いすぎるから注意と書かれていたのを思い出しました。ちょっと早いかなと思ったら少し緩めて、またちょっと早くなってきたなと思ったら緩めての繰り返し。小刻みな小股のステップを心がけ、タタタと下っていきます。

舗装路に出る手前、雨が止んで妙高山が見えました。気持ち良く走れた林道の終点で、やっと止んだ雨に今日初めて見れた絶景。いい気分になって3Aに突入しました。3Aでは、妙高のお豆腐とトマトがとにかく絶品でした。

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美味すぎてそれぞれ3つ4つ頂いていたとき、大雨の影響でコースが変更になったことを知りました。8Aを過ぎたあとのラスボス、瑪瑙山に登らずに7kmショートカットするコースになったんだそうです。ショックでした。信越五岳の110kmを、最後まで走り切りたかった。雨も止んできたのに何でだよ、泥だらけだった斑尾山だって超えられたのにと、生意気にもその時は思っていました。この後更にひどくなる雨と、振り続けた雨がトレイルをどう変貌させるのか知りもせずに。

4A 関川から黒姫へ

3Aからは関川沿いのだらだら登り。晴れていると遮るものがなく暑さとの戦いになるそうですが、今日は雨。3A手前で一瞬止んだ雨もすぐに再開されました。暑さはないものの、じわじわと腿の筋肉を消費してくる微妙な登り。頑張ればスピードも出せる斜度ですが、まだまだ序盤。時々歩きを交えながら脚を使い果たさないようにゆっくり進みました。

その道中、妻からLINEで4Aに到着したと連絡が入りました。今朝早く京都を出発して、4Aのある黒姫高原に応援に来てくれることになっていたんです。途中のかぶり水や宴会隊の私設エイドでも元気をもらって、妻の待つ4Aを目指しました。

関川沿いの長い長い林道と舗装路がようやく終わり、蕎麦畑を抜け、少し登ってからトレイルに入りました。さすがにこの頃には、脚の色んな筋肉に疲労を感じ始めていました。エイドでモリモリ食べてたし、降り続く雨にもTシャツ1枚で全然寒くないけど、徐々に重くなっていく脚。それでも妻の待つ4Aまであと少しあと少しと自分に言い聞かせ、最後のトレイルを駆け抜けました。

4Aには新調したショッキングピンクのスニーカーと星柄の雨合羽を纏った妻が傘をさして待っていました。この土砂降りの雨の中、1時間半も前から待っていたそうです。差し入れのレッドブルとおにぎりをもらって、写真を撮ってもらい、水の補給やジェルの入れ替えを手伝ってもらいました。がっちり握手をして、元気をもらって出発です。

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5A 黒姫の林道から笹ヶ峰

4Aが51.5km地点。これまで比叡山インターナショナルトレイルランの50kmが最長のレースだった僕にとっては、ここから未知の領域に入ります。4Aを出てゲレンデを登ってすぐに、長い長い黒姫山の登り林道区間です。更に雨脚は強くなり、土砂降りで前方もよく見えません。

でもここに来ていきなり、脚に力がみなぎってきました。林道は傾斜がきつく走れないけど、パワーウォークのスピードはどんどん上がっていき、前を行く人をがんがん追い抜いていけます。不思議な、始めての感覚です。これまでのレースでは、基本的に体力や脚力は減る一方でした。スタート時がマックスで、段々と燃料を使い切っていくように脚は終わっていくものでした。きっと、妻の応援のお陰だと思います。そして前の人をまた1人かわすと、更に気分が上向いて、もっと脚に力が入っていきました。そうして何人も何人も追い抜いて、7km続いた林道を登りきりました。

なんか、楽しかったです。登りきった後の急な岩場の下りも、周りの人と危ないですねとか、気をつけましょうねとか声をかけあって降りていきました。降りきったところの川にかかる1人ずつしか通れない吊橋を順番待ちしてる間も、前後の人と「次の5Aに着いたら何をするか」という話題で盛り上がりました。

吊橋を超えてからの登りは激坂だったけど、これまでのズルズル滑るドロドロ道と違い、緑色のすべり止めみたいなものが敷いてあってグリップが効きます。ガシガシ登りきると気持ちのいい白樺の森が広がっていて、5Aまで一気に駆け抜けました。

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トイレに寄ってからドロップバックを受け取り、軒下のベンチに腰掛けてTシャツを着替えました。どうせこの後また濡れるんだけど、束の間だけでも乾いたTシャツの感触を楽しみたかったんです。ドロップバックに入れてたウィダーゼリーを飲んで、追加のジェルとライトを取り出して、日が傾いてきて少し気温も下がってきたので帽子と指ぬきグローブを装着しました。準備万端。ドロップバックを戻して食べ物を貰いに行くと、なんとカレーライスがありました。

まさかカレーが食べられるなんて。前日の説明会でも聞いてなかったので感激して、ペロリと平らげました。おかわりしたかったけど、時計を見ると5Aに着いてもう11分も経っていることに気づきました。せっかく目標タイムに追いついたと思ったのに。目標タイムにエイド滞在時間を加味してない僕がバカでした。後ろ髪を引かれながら5A出発です。

6A 沢登りと林道

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5Aを抜けると、しばらくフラットな道が続きました。周りにはペーサーと一緒に走る人達の姿が。もしかしたら会えるかもと期待していた西さんの姿は、5Aにありませんでした。先に行ったんだろうな、ちょっと寂しいななんてしょぼくれながら、トボトボと進みました。

一旦舗装路に出て干上がった乙見湖を超えると、トンネルの脇に急な階段が現れました。登りきると比較的フラットな林道へ。時刻は17時過ぎ。日没の刻が迫ってきました。実はこれまで、夜のトレイルを走ったことがほとんどありませんでした。初めて出場した比叡山のレースで、制限時間手前の2時間くらいが唯一のナイトトレイル。あの時はスイパーの皆さんと一緒だったけど、今回は1人です。だんだん膨らむ不安と共に暗さが増してきて、73km地点の給水ポイントに着いた時にはすっかり暗くなっていました。

そこでヘッドライトを装着し、黒姫山西側の登りに突入します。しかしここが最大の難所でした。道が、川になっていたんです。何を言ってるかわからないと思いますが、水たまりとかのレベルではなく、上の方から冷たい水が結構な勢いで流れ落ちて来るのです。あたりは真っ暗。深さもわからない川に脚を突っ込んで登っていきます。最早トレイルランニングではなく、沢登りでした。

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渡渉ポイントは更に恐怖でした。降り続いた雨で増水した沢は濁流と化していました。いくらロープがあるからと言って、こんな濁流を渡るとは。ここへ来て、瑪瑙山がショートカットされた判断の正しさを痛いほど痛感しました。黒姫山の裾野を少し登るだけでこの有様なのだから、瑪瑙山がどういう状況になっているか、想像するだけで恐ろしい。暗闇の中1人孤独にこの沢を登って、そして下りました。用意していたハンドライトは使いませんでした。ヘッドライトのみ。両手は空けて、バランスを取るために使いました。

そうして命からがら下りきり、林道に差し掛かった時に、自分の中で何かが弾けました。今となっても、あれが何だったかわかりません。6Aまでの数キロメートルの間、涙が止まりませんでした。声を上げて嗚咽を漏らしながら、ひたすら突っ走りました。キロ5分台で6Aまで。何人もの人を次々に追い抜いて、フルスロットルで駆け抜けました。何かが、降りてきたんだと思います。脚の痛みは一切なく、心肺も正常なまま、涙は流れ続け、過去の色んな光景が頭を過りました。今まで走ってきて初めての体験でした。

7A 戸隠神社へと続く道

6Aにいたことは、ほとんど覚えていません。手早くシャリ玉やバナナを頬張って、さっさと飛び出したんだと思います。続くゆるい登りの舗装路も走れました。まだ、6Aまでの爆走の余韻が残っていたんです。

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このあたりまで来ると、もうほとんど周りに人がいなくなりました。数組追い抜いたくらいで、ほぼ1人旅が続きます。舗装路から戸隠神社への真っ直ぐな参道へ入ると、真っ暗な参道にぽつんと、自分のヘッドライトの明かりしか見えませんでした。

奥社から木道へ入っても、ずっと走り続けることができました。6Aまでの湧き上がる激情が引いた後の凪のような心境だったけど、脚は回り続けていました。ほとんど無心で6Aから7Aまでの6kmを駆け抜けました。頭がぼーっとしていたと思います。

そうしてたどり着いた7Aで「二宮さん!」と声を掛けられて我に返りました。諦めていた、西さん平井さんペアに会えたんです。

まさかここで会えるとは。嬉しくて嬉しくて、ヘッドライトの消し方もわからず手で抑えて記念撮影してもらいました。我慢していた今日3度目のトイレに寄ってもらって、3人一緒に7Aを出発しました。

8A 瑪瑙山の麓まで

90km近く続けてきた1人旅、ここから勝手に寄生して3人旅にしてもらいました。6A手前の林道で何かが降りてきて始まった快走も、7Aに着く頃に全てを使い切っていました。小刻みにアップダウンを繰り返す水たまりだらけの道を、先を行く2人に何とか食らいついて行きます。

レース終盤に差し掛かっても雨はひたすら振り続け、最早水を避けるという概念がなくなっていました。この辺りまで来ると、むしろ水の中を走った方が泥濘んだ土を踏むより早いことに気が付きました。林道は大抵真ん中と両端が盛り上がっていて、車のタイヤ跡が凹んで水たまりになっています。その凹みの方がタイヤで踏み固められて、固く走りやすいということを知りました。もう少し早く気付きたかったけど。

西さんと平井さんに引っ張ってもらって、いよいよ最終エイド8Aに到着です。もしかしたら雨の影響で8Aで急遽終了なんていう最悪の事態まで想像していたので、着いた時にはゴールまで走り続けられそうなことを知ってホッとしました。瑪瑙山へは行けなくなったけど、もう気持ちはゴールに向いていました。

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8Aではずっと楽しみにしていたお蕎麦を2杯いただきました。ネギもたっぷり入れてもらって、温かい汁が体に染み渡りました。西さんと巨峰もたらふく食べて、出発です。最後の林道へと向かいます。

ゴール

8Aを出てしばらくゲレンデの脇を気持ちよく下っていると、周囲に行き先を示す標識がないことに気づきました。最後の最後でまさかのロスト。左へ曲がる道を見逃していました。大した距離じゃなかったけど、後ろから付いて来られた方々に申し訳ない気持ちで分岐点まで戻りました。

そして始まったラストスパート。ゴールまで10km以上あったと思うけど、これまで優しくペーサーを努めていた西さんがここで発破をかけ、平井さんもそれに応じて走り出しました。

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もう何もかもが限界の僕は、ペーサーにタダ乗りの癖にお2人にペースを合わせてもらう始末。情けなくて必死で食らいつき、それでも限界を超えて息が上がると、先頭を行く平井さんがペースを落としてくれました。息を整え終わればまた走り、息が上がると歩きに移行してくれ、そうして限界ギリギリのスピードで進んでもらいました。少しの舗装路と最後の給水ポイントを抜けて、ラスト7kmの林道に突っ込みます。

脚の痛みは不思議と何も感じませんでした。100km走ってきて、まだこんなに脚が動くことに驚きます。前を行く人達を次々に追い越して、更にペースが上がっていきました。

そして聞こえてきたゴール地点の歓声。林道を抜けたところに、いきなりゴールゲートが現れました。何かがこみ上げてきて、両手で顔を覆いました。しばらく余韻に浸ってから、3人で手をつないでゴールしました。

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17時間22分56秒。当初の予定通り瑪瑙山へ行っていたら、目標としていた19時間は切れなかったかもしれません。それでも僕にとっては立派な、誇るべき結果でした。完走した420人の内、198番目。僕にとっては初めての、完走者の半分より上の順位です。最高でした。7Aから勝手に付いていった僕を引っ張ってくれた、西さんと平井さんのお陰です。

地点 タイム 目標差 総合順位
1A 斑尾山菅川登山口 (18.5km地点) 2:18:52 -1分 --
2A 斑尾高原 (23.9km地点) 3:42:50 +12分 380位
3A 妙高高原 (38.5km地点) 5:59:04 +9分 --
4A 黒姫高原 (51.5km地点) 8:12:58 +13分 317位
5A 笹ヶ峰高原 (63.1km地点) 10:41:56 +12分 256位
6A 大橋 (81.0km地点) 13:46:20 +26分 217位
7A 鏡池 (87.0km地点) 14:44:26 +24分 --
8A 戸隠スキー場 (92.3km地点) 15:49:08 +29分 205位
ゴール 飯綱高原 (103km地点) 17:22:56 (-108分) 198位

公式サイトで確認できた速報タイムGPSのログから各エイドの通過時間を並べてみました。結局、斑尾山の泥んこ下りと、5Aから6Aの間の沢登りで苦戦したのが響き、8Aまでの目標タイムには届きませんでした。それでも、後半徐々に順位を上げていけたなんて初めてのことです。4Aに応援に来てくれた妻、何度も抜きつ抜かれつしながら進んだ前後のランナー、7Aからお邪魔させてもらった西さんと平井さん、そして豪雨の山中で何時間も誘導や応援をして下さった方々。長く果てしない道程の中で、へばりそうになる度に走る力を貰い続け、最後まで走りきることができました。本当にありがとうございました。

次のレースは3週間後に控えるハセツネです。まずは体を休めてから、しっかり準備して挑みたいです。そしてまたいつか、瑪瑙山も含めた完全体の信越五岳に挑戦したいです。