Webディレクター解体アドベントカレンダー20日目の記事です。今日はUGC(User Generated Contents)系のサービスでよく議論になる、鶏と卵のジレンマについて書きます。
作者 or 読者
文字や画像や動画など、ユーザーが作成したコンテンツを投稿するサービス開発においてよく議論になるのが、投稿する人とそれを見る人、どちらに力を入れるのかという問題です。作者向けか、読者向けか。
コンテンツを投稿する人というのは、そのコンテンツを見てくれる人がいる場所に投稿します。インターネット上で公開するのですから、多かれ少なかれ、誰かに見てもらいたいという気持ちがあるからです。見てくれる人がたくさんいて賑わっているサービスに、投稿する人は集まりやすいです。
一方、コンテンツを見て楽しむ人たちも投稿する人がいるサービスに集まります。見る人は誰が投稿したかや、そのコンテンツ自体の魅力に引き寄せられて集まってきます。コンテンツが大事であり、それを生み出す投稿する人が大事なわけです。
ここにジレンマが発生します。作者と読者、どっちが先か。もちろん両方大事です。作者は読者がいる場所に集まるし、読者は作者の投稿したコンテンツに集まります。どっちが欠けてもいけません。
でも、最初の立ち上げ時点はどちらもゼロ。そこからどう立ち上げるのでしょうか。そして立ち上げた後は、どっちにどれくらい力をかけるべきなのでしょうか。この問題はUGC系サービスの企画をする時にはいつもつきまとう問題です。
立ち上げ時は作者
立ち上げ時は作者が先です。それが私なりに考え続けた結論です。もちろん同時に読者も集められたら良いでしょう。でもどちらかと言えば作者です。作者がいないと何も始まらないからです。コンテンツも生まれない。だから最初は、読者がいない場所に如何に作者を呼んでくるのかという作戦が必要になります。
圧倒的に使いやすい投稿ツールを作ってツールとして使ってもらうとか、例えば大規模な投稿コンテストを開催するとか、例えば読者はいなくても編集者がいて全部見てるとか。そういう読者以外の部分で何とか使ってもらおうとします。
結局どんなに読者にとって読みやすくて表示スピードが早くて使いやすいサービスでも、面白いコンテンツがなかったら人は集まりません。だから読者を集めるためにもまずは作者なんですね。
潮目が変わる時
立ち上げる時はとにかく作者。もちろん両方に向けた施策を打てるといいけど、やっぱり作者を大事にしないサービスは立ち上がりもしないと思います。だけどどこかで、読者に向けた施策の比重を上げるべき時がやってきます。それはいつでしょうか。そのあたりのさじ加減が難しいところではありますが、一つ目安となる数字があります。それは、PV増に占める支配的な要因がUUかPV/UUかです。
立ち上げたばかりのサービスの場合、まだまだ読者の数が少ないと思います。そういうサービスでは、PVがドーンと上がる時、それは新規流入が増えた時です。端的に言えば、Twitterでバズった時。何か1つのコンテンツが話題になって、SNSからの流入や検索流入がどかんと増える時があります。それに引っ張られてPVが上下する。
この状態の時は、PVを左右する支配的な要素は読者の数であり、読者1人あたりの見たコンテンツ量ではありません。まだまだ読者の数が少ないから、お客さんの数が増えると全体の数字が上がります。サービスの立ち上げ時はだいたいこういう状態になっていると思います。そして、その場合はやはり大事なのは作者です。作者の生み出すコンテンツが、読者を呼んでくるからです。
しかしこれが、だんだんと新規UUの流入増減よりも、1人あたりの見たコンテンツ量が支配的になってきます。読者がだんだんと増えてくると、読者が定着して新規の流入に頼らなくてもよくなってくるわけです。そうすると、読者が見るコンテンツ量が増えれば増えるほど、PVが上がるようになります。PV増に占める主な要因がUUからPV/UUに移ってきます。
そうなったら、今度は読者を重視すべきでしょう。1人あたりの再訪率を改善したり、訪問あたりの閲覧数を改善したり、そうした改善がダイレクトにサービスの成長に繋がってきます。そうなったらしめたものです。後は数字を見ながら改善のサイクルを回し続け、サービスの成長を加速させていけば、更なる成長が待っています。読者も増えるし、作者も喜んでくれます。正のスパイラルです。
でもそこに至るまでは作者の方々の声を聞きながら、地道に実直に作者のために尽くすべきです。作者が先か、読者が先か。私は作者が先だと思います。