Webディレクター解体アドベントカレンダー12日目の記事です。今日から3日間は提案・調整編として、企画を如何に通すのか、自分が考えた企画をどう人に伝えるのか書いていこうと思います。今日はまずその基本として、企画を提案して通すというのはどういうことか書いてみます。
ミニマムな提案
企画の提案と一口に言っても、日々のちょっとした改善から大きな方針転換まで、提案する企画のボリュームは様々です。ではまず一番小さい、ミニマムな企画を人に提案するときに必要な要素は何でしょう。これは普段使っている、GithubでIssueを作る時にデフォルトで入るテンプレートです。
たった数行ですが、これが一番ミニマムな要素だと思っています。それはなぜやるのかと、何をやるのかです。解決策の方には「起票段階で解決案や完了条件があるなら〜」とある通り、こちらは最悪無くても良い。解決しようとしている問題の背景をきちんと伝えられていれば、解決方法は後から考えたり、開発チームに任せることもできます。
何かを提案するとき、一番大事なのはこの部分です。企画フェーズで調査・分析が最も大事だったことと同じです。本当に解決しないといけない問題は何なのかを明らかにすること。そしてそれを言葉で説明すること。それが提案をする時に最も大事なことです。
大きな提案
新たに大きな予算がかかるような企画を通そうとする時は、もちろんこれだけでは足りません。解決しないといけない問題だけを提示されて、解決方法は後から考えますという企画を承認する決裁者はなかなかいないでしょう。
前提を共有した後に解決策を提案して、更に具体的な実現方法までが求められます。企画書や提案書を書く時は、だいたいその順番をそのまま踏襲しています。
- 前提の共有
- 現状分析
- 市場の動向やサービスの現状について。数値の推移などの定量的な分析と、ユーザー動向などの定性的な分析の両面があると良い。
- 課題整理
- この提案で解決しようとしている課題を明確にする。前提共有の中で一番大事なパートで、ここがずれているとこの後の提案全部外してしまう。提案前にこの部分だけでも提案相手と擦り合わせておけると良い。
- 現状分析
- 解決策の提案
- 全体的な方針
- 具体的な提案に入る前にどう課題を解決するのか、分かりやすい言葉で方針(戦略だったりコンセプトだったりする)を簡潔に述べる。ストーリーになっていると良い。
- 具体的な提案
- 提案内容によって構成は異なるがWebサービスの場合はビジュアルで見せる方がイメージが湧くので画面イメージが欲しい。
- 全体的な方針
- 実現方法
- スケジュール・開発順序のイメージ
- 実際のリリースまでに必要なマイルストーンを挙げて、スケジュールや開発順序を明示して、実現までのイメージを持ってもらう。
- 運用体制
- リリースした後の運用や改善をどういう体制でどういう仕組で行うのか、その場合に必要な体制や予算などを明示する。
- 予算の見積りやスキームの提案
- かかる予算の提示と、どう捻出するかや座組みの提案。
- スケジュール・開発順序のイメージ
インパクトを重視して、最初にいきなり画面イメージからドーンと見せる時もあります。でもあくまで変化球。基本はこの順番です。前提を共有して、本題に入って、現実的な手段に落とす。企画を提案するときの鉄板の順序です。
提案からリリースまで
企画を提案する時、提案相手と決裁者が異なる場合があります。特に案件を獲得するときのコンペとか、こういうケースが結構ある。提案する時、企画を人に伝える時は、誰に伝える必要があるかを意識して内容を調整する必要があります。決裁者が担当者の上司の場合、その人はどういうバックボーンで何に責任を持っているどんな立場の人なのか。Webに詳しい人かそうでないかで、使う言葉や盛り込むべき内容が変わってくるからです。
企画を提案して通った後も、その内容を人に伝える旅は続きます。必ずしもこの図の順番である必要はありません。提案前に開発チームに相談してから提案することも多いし、先に関連部署に根回ししておくこともあるでしょう。順番はどうあれ、最後には実際に使ってくれるユーザーに伝えるところまでが1セットです。
リリースするときの告知の仕方やその内容、どんなユーザーにどんな言葉で伝えるのか。伝える相手によって切り取り方は変える必要はありますが、嘘をつくわけにはいきません。企画を立てて承認を得る時から開発チームや関連部署に伝える時、ユーザーに届けるときまで、切り取る断面は違えども1本の芯を通っているべきです。それには、自分の言葉で企画を伝える必要があります。
自分の言葉で伝える
企画を提案する時、企画の内容を伝える時、いつも気をつけているのは自分の言葉で伝えるということです。今流行ってるからとか、市場がどうとか、競合がどうとか、企画を立てた理由は色々あるでしょう。調査・分析が大事とかあれだけ言ってるわけですから、その背景を説明する必要だってあります。それでもこの企画内容が適切だと考えたのは、他ならぬ企画者自身です。自分がこう考えたから、自分はこうすべきだと思ったから、自分はこれが最も良いと思ったから。企画を提案するときの一人称は常に自分であるべきです。
サービスや機能をリリースする時、ユーザー向けの告知は自分で書くようにしています。そして告知文のタイトルや内容は、いつも主語を一人称にしています。
- 「閲覧できるようになりました」ではなく「閲覧できるようにしました」
- 「保存できるようになっています」ではなく「保存できるようにしました」
こうしたちょっとした文面の違いにもまた、企画を人に伝えようという姿勢は現れます。主語はいつも一人称で、自分の言葉を使って伝えること。これが企画を通したり、人に提案する上で大切な姿勢だと思っています。