Webディレクター解体アドベントカレンダー24日目の記事です。今日は面接をする時の心得について書きます。
私が最後に面接を受けたのは今から13年と10ヶ月前、2007年の2月でした。場所は当時はてながオフィスを構えていた鉢山のインキュベーション施設の一角、パーテーションで区切られた簡素な会議スペースです。コッシーから始まって次がなおやん、その次に川崎さんがやってきて、最後に当時の社長、近藤さんという順番でした。ドキドキしながら近藤さんが来るのを待っていた記憶があります。
当時はWeb2.0ブームの真っ最中。「ウェブ進化論」と「へんな会社の作り方」が出版されてちょうど1年経った頃でした。私は大きな会社に勤めていて、小さなベンチャー企業が起こしていたムーブメントに憧れていたミーハーなはてなユーザーでした。会社で有志を募って勉強会を主催し、当時Web2.0と呼ばれていた国内外のサービスを社内に紹介していました。その中でも熱心に取り上げたのが、はてなです。
アンテナやダイアリーやブックマークのユーザーだったから勿論サービス自体も好きだったんですが、はてなの社員のみんなが書くブログの記事を読んだり、配信されていたアイデアミーティングなどの音声データから社内の様子を伺い知れるのが好きでした。特に近藤さんのブログやCNETの連載は熱心に追いかけていました。面接を受ける前にも、上司の結婚式で近藤さんを一方的に見かけたこともあります。他のはてな社員と一緒に談笑する姿を、こっそり遠巻きに眺めていました。ストーカーみたいで気持ち悪いですね。
だから、面接の日は緊張していました。あの日、国内の動画系サービスがYouTubeからAPIへのアクセスを止められた日だったと思います。Rimoも例外ではなく、社内はバタバタと対応に追われていたそうです。少し待っていると、メインオフィスのドアから会議スペースに向けて1人の男性が走ってやってきました。
息を切らせながら「ごめんごめん、お待たせ」と頭を下げながら席につきます。それが近藤さんでした。私はこれまで何度も面接を受けたことがありましたが、面接官が走って会場に現れたことは一度もありませんでした。
衝撃を受けました。会社の社長が一介の志望者を少しでも待たせまいと、走ってやってきたのです。社長までに何重もの階層が折り連なる大企業の末端に属する身だったから、こんな人がいるんだと驚きました。
面接が始まってからも、1つ1つの話を心から楽しそうに聞いてくれ「そんでそんで?」「なんでなんで?」と続きをせがむ姿が印象的でした。何を話したかはあんまり覚えてないんですが、すっかり魅了されたことははっきりと覚えています。
あれから何年も経ち、自分が面接をする立場になってからも、あの日のことをよく思い出します。たとえ面接の場であっても、1人の人間として誠実に相手に向き合うこと。それが近藤さんと初めて会った日に、私が胸に刻んだことです。