黒いパンティー

今日ゴミを出しに行ったら、ゴミ捨て場の隅に落ちていた。黒い綿の生地にピンクのレースの縁取りがされたパンティー。

どうしてむき出しのまま捨てたのだろう。どうしてゴミ袋の中に入れなかったのだろう。ゴミ袋に入れられない理由が何かあったのかな。もし家でパンツが古くなったから捨てようとか思ったら、ゴミ袋の中に他のゴミと一緒に入れて燃えるゴミとして出すだろう。パンツだけ手にもってゴミ捨て場に来て、そっと置いていくなんて考えられない。

もしかして、この場でパンツを脱いで、この場で捨てて、何も穿かぬままこの場を去ったのだろうか。いったい誰が、なぜ…。

捨てられるパンティーの気持ちにもなってみて欲しい。

さっきまでいつものように持ち主様の下着役を任され、今日も私を選んでくれてありがとうって感謝しながら、心地よい体温をその黒い生地全体で感じ、冷たい外気や塵や埃や異性の視線から持ち主様の大事なところを守っていたのに。いきなりゴミ捨て場で剥ぎ取られ、捨てられ、置いていかれるなんて悲しすぎる。

そして、そんなパンティーの写真を朝から撮影している僕の気持ちにもなってみて欲しい。

ゴミ捨て場の隅に捨てられた黒いパンティーににじり寄り、カバンからデジカメを取り出して接写モードに切り替え、両手でカメラを構えて異なるアングルから何度もシャッターを押す三十路の男性。ゴミを出しに行く家事に協力的で家庭的な父の姿はそこになく、通勤途中のサラリーマンや登校中の小学生、ゴミ出しに来た主婦の視線が突き刺さる。きっと今頃、近所の主婦達の井戸端会議の格好のネタになっていることだろう。

早く京都に引っ越そう。