旅行に行くといつも、寝ている妻を起こさないようにこっそり起き出して、1人で朝の街を走っている。前日に地図を眺めてこの道を行ってみようとか、このエリアをぐるっと回ってみようとか、考えているだけでも楽しい。それが海外なら、尚更だ。コロナが流行してから海外に行けない時期が続いたので、今回の台湾旅行は久しぶりの海外だった。
朝起きると雨が降っていたけど、しばらく待っていたら止んだのですぐに着替えて飛び出した。台北駅すぐ近くのホテルに泊まったので、大きなビルがたくさん集まる大都会の街からスタートだ。
雨上がりの朝の街はしっとりしていて、道を行く人も少なくひっそりと静まりかえっていた。
しばらく走ると大きな道路に出た。高速道路の高架下や、幹線道路沿いの壁、いたるところにグラフィティがある。
木の根っこまで餌食になっていた。これはやってる。
川と街を隔てる護岸壁は、オフィシャルなアートで彩られている。扉から覗く街との対比が面白い。
描き足されたやつ、スローアップの塗りが透過していて下地のアートが透けて見える。すごくいい。
扉のここに描くのかっこいい。ちょっとしたタグにもセンスを感じる。
お店のシャッターにも、路地裏の壁にも、街中のいたるところにグラフィティが溢れていた。舞い上がってしまって、朝のランニングのつもりが夢中でグラフィティを探していた。
走り終わって興奮気味に妻に報告した。「台北やばいよ」
お昼は九份へ出かけた。途中で下車した瑞芳駅にも巨大なアートが。
九份の古い街並みにも、ちょっとした隙間にアートが潜んでいる。
帰りに寄った東区のおしゃれエリア。台北駅周辺と少し趣が違う。それぞれのエリアに、それぞれのグラフィティライターがいる。
台北はすごい。何処に行ってもグラフィティがあり、アートがあり、街に溶け込んでいる。朝と昼と夜で、違ったライティングで楽しめる。
明日の朝はどこに行こうかと調べていたら、西門というところがやばいという情報を見つけた。次の日はもっと早く起きて行こうと目覚ましをかけたけど、楽しみすぎて6時半に目が覚めた。
まだ薄暗い中、西門を目指して出発した。
西門に近づくにつれて、だんだんクオリティが上がっていくように感じる。密度もだんだんと濃くなっていく。
そして唐突に、路地裏の駐車場の奥にどでかいピースが現れた。ああもうやばい。
どこまでがリーガルなのかイリーガルなのかわからないけど、とにかく密度が濃い。
スタイルもテイストも様々で楽しい。テーマパークみたいな街だ。
そんな西門のグラフィティの中心が電影主題公園だ。映画館の裏の壁に描かれた巨大なグラフィティに圧倒される。
公園にはこの一帯のグラフィティを手掛けたグループ City Marx のクレジットもあった。
公園を離れてしばらく行くと、少しずつ密度は薄くなっていくものの、街中にグラフィティが溶け込んでいる。
オシャレな洋服屋のショーウィンドー。
自転車が止めてある路地裏。
ゲームセンターや飲食店や洋服屋に、シャッターアートが彩りを添えている。その物量と幅の広さに圧倒されて、西門を後にした。すごい街だった。
その後総督府や中正紀念堂を越えて、永康街から森林公園をぐるっと回って北上した。
西門ほどの密度ではないものの、それぞれのエリアにそれぞれのスタイルのグラフィティがある。見つけるのが楽しくて、細かい路地に潜むアートを探しながら走った。
街に溶け込む、ワンポイントのグラフィティ。
古い家屋や崩れかけた壁に加えられた解釈。
ホテルのすぐ近くには、福岡でよく見かけるスローアップがあった。台北の人が福岡に来たのか、福岡の人が台北に来たのかわからない。家の近所でよく見るものが、遠く離れたこの街に溶け込んでいる。不思議な感覚に包まれてホテルまで戻った。
初めて訪れた街で、全然知らない街の一面を垣間見ることができた気がして、本当に楽しかった。再見、また来ます。