脂肪の先端は冷たい

冬は寒い。特に朝が寒い。あたたかい布団から鉄の意思で早朝に起き出して、薄っぺらいランニングウェアに着替え、意を決して外に出る。吹き付ける寒風。ギュッと拳を握って腕を振り、走り始める。1キロを超え、2キロを過ぎたあたりからうっすら汗が滲み始め、体が温まってくる。こうなってきてようやく、寒さから開放される。後は体が冷えないように、ひたすら走り続けるだけだ。

1時間、10キロちょい走って家に帰る。これだけ寒くても結構汗をかくもので、ランニングウェアを脱いでシャワーを浴びる。体の芯は走ってホカホカなのだけど、体の表面に冷たい箇所が残っていて、お湯をかけると赤くなる。

それが巨大な脂肪の塊がまとわりついているお腹の先端。おへそのあたり。体幹から最も遠く、分厚い脂肪の先にある皮膚だけは体内で唯一、どれだけ走っても温まらないのだ。おへそを中心に直径20センチくらいの赤い楕円が浮かび上がった腹の様子は、マヌケだ。