去年の12月、走る時用にワイヤレスイヤホンを買った。BeatsのPowerbeats Proだ。AirPods Proを持ってたけど、走ってるとどうしても外れてしまうので、何度も指で耳の穴にねじ込まないといけなかった。実際、何度か落として無くしそうになった。
元々、走る時にはイヤホンしない派だった。自然の中を走るのだから、肌で風を感じ、土の匂いをかぎ、足裏で地面の凹凸を味わい、鳥の囀りを聞くのが走るということだろうと。それがルナサンダルを愛する自然派気取りの矜持だろうと。
もちろん、山を走る時はそれでいい。せっかく山に行くんだから、五感をめいっぱい動員して余す所なく味わいたい。だけど日々のルーチンで毎日同じところを走り続けるロード走は、正直飽きる。だいたい毎日走る河川敷のランニングコースじゃ、鳥の囀りとか聞こえないし。
そんなわけでついに、ロードを走る時はイヤホンを解禁した。
最初は音楽を聞いていた。SpotifyにBPMごとのプレイリストがあって、自分の走るリズムに合わせて180BPMのやつをよく選んだ。180BPMは結構早くて、ちょっと気を抜くと1拍目のキック音に足の着地が間に合わなくなる。だから必死で足を回転させる。ある時は10kmずっと180BPMに間に合わせられて、キロ4分半くらい出た。ペース走のいいお供だった。
そのうち音楽もちょっと飽きてきて、Audibleを試してみた。Amazonがやってる本を朗読した音声を販売しているサービスだ。ちょっと意識が高まってる時で、トライアルは無料だしと思ってビジネス書を選んで聞きながら走ってみた。
そしたらこれがやばかった。走りながら体を鍛えるのと同時に、本の知識を吸収することで頭も鍛えられるのだ。どれだけストイックなんだと思ったけど、いきなり時間当たりの成果量が2倍になったような気がして、全能感に包まれた。音声の再生スピードを上げれば、時間あたりの吸収率は更に高まる。これはすごいぞと思って、それ以来平日朝のロード走では毎回聞いている。
今はちょうど「ゼロからつくるビジネスモデル」という本を聞いてるんだけど、これがまたいい。朝走りながら再生していて、面白い話題の時は語られるその内容に夢中になれる。そうすると走っていることに意識が向かなくなって、きつめのペースで走ってても辛くない。また色々なビジネスモデルの事例を聞いていると、ふと自分が今仕事で考えている企画のヒントにつながることもあって、そうすると音声の内容そっちのけで自分の企画を考え始めてしまう。走りながらだとアイデアが浮かびやすいから、夢中になってあれやこれやと考えて、家に帰り着いたらメモをとって忘れないようにしている。
知識が得られて、走るペースをあげてもあまり辛く感じず、アイデアが沸く源泉にもなる。デメリットは夢中になったり耳が塞がるから交通量の多いところだと危ないことかな。そんな問題も室見川の河川敷なら大丈夫。車が通らずに人通りも少ないお気に入りのランニングコースで、頭と体を同時に鍛えよう。