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定性調査とアンケート

Webディレクター解体アドベントカレンダー7日目の記事です。今日は調査・分析の中でも定性調査の概要と種類について、そして定量と定性の両面を併せ持つアンケートについて書いてみます。

定性調査

定性調査はユーザーから発せられる数値以外の情報全てを対象にしています。主に言語を通じて語られるサービスの感想や要望はもちろん、顕在化していないユーザーの潜在的なニーズを引き出したり、言語化できていないサービスの真の価値を明らかにするために、表情や仕草などから情報を読み取ることもあります。

定性調査は直接対面で話を聞いたり直接行動を観察させてもらう「対面型」と、インターネット上のテキストを読んだり分析したりする「テキスト型」に分けられます。あとはテキスト中心ですが、定量の側面も持つアンケートですね。アンケートは定量・定性両面の特性があって特殊なので、個別に詳しく説明します。

  • 対面型
    • グループインタビュー、1対1のインタビュー、行動観察、ユーザビリティテストなど、同じ場所に集まってもらって直接対面(もしくはテレビ通話)で調査・分析する方法。
  • テキスト型
    • サービスのフィードバックや問い合わせフォームなどから直接送られたり、Twitterやブログなどで言及されたサービスに対する意見や感想、要望などを拾い集めて調査・分析する方法。
  • アンケート
    • 選ばれた選択肢の数を定量的に分析する側面と、記入された自由記述のテキストから訂正的に読み解く2つの側面を併せ持つ。

対面型とテキスト型、もちろん両方やるのが望ましいですが対面型の方は実施のコストが高く、そう日々日常的に行えるものではありません。一方テキスト型はエゴサーチしたり、日々届く問い合わせのメールを見たりと実施のコストが低く、日常のルーチンの中に組み込めるものです。

特によくWebサービスで設置されている、ご意見・ご要望のフィードバックフォームから届く意見は切実なものも多く重要です。私はいつもサービスのフィードバックフォームから送られた意見は全て自分のメールアドレスで受け取れるようにしていて、自分のメーラーから1通ずつ目を通しています。1件1件その全てに対応できるわけではありませんが、ユーザーが今何に課題を感じていてどういう要望が多いのか、当たり前のように日々浴び続けているとその潮目や温度感の変化を敏感に感じ取れるようになります。

コストをかけてきちんと設計をして行う定性調査も勿論大切ですが、こうした日常のテキスト型情報の摂取で得た肌感覚をベースにして、その土台に基づいてユーザーインタビューやユーザーアンケートを設計していけると良い調査ができます。

定性情報を言語化する

定性調査では、ただ調査を行うだけでなく、如何に言語化するかが重要です。一昨日の記事では、定量でも定性でも調査・分析は「複雑でカオスなユーザー心理を単純化してデフォルメして、人間が理解可能にする行為」だと書きました。定量調査は数字が結果を語ってくれますが、定性調査の結果は言語です。大量の定性情報を、自分で解釈して自分の言葉で言語化したアウトプットが、最終的な分析結果になります。

この言語化が大事なポイントで、調査を行った感想になってしまってはいけません。感想というのは、自分がこう感じたという、主語が自分の行為です。定性調査の結果を語る時、自分の解釈で自分の言葉で言語化する必要はあるものの、あくまで主語はユーザーでなければならない。主体がすり替わっては本末転倒です。

インタビューを行った結果得られた反応や表情、日々フィードバックで寄せられる意見や要望、そういった情報を一旦全部取り込んだ上で咀嚼して解釈して、ユーザーがサービスに対してどう感じ、どういう思いで使い、どこに課題を感じているのか、そうした分析結果を導き出す必要があります。

言語化を身につけるのに良いトレーニングがあります。それは日々フィードバックフォームから寄せられる意見に、1件1件返事を文章で書くという方法です。実際に返事を送る必要はありません。私は以前、社内向けのグループウェアで毎日のようにフィードバックに対する返答を書いてました。これを日々やっていると、その要望の真意は何なのか、本当は何が課題で何を望んでいるのか考える癖がついて、それを言語化してだからこういう改善を行うといいのではないかという回答にまとまります。実際、そんなに全部の要望に応えられるわけではないので無駄になる考察も多いのですが、日々フィードバックを受け取るのと共に習慣にしていると、定性情報を言語化するための良いトレーニングになると思います。

定量・定性の両面を持つアンケート

定性調査の中で、定量の側面も持つコウモリみたいな存在がアンケートです。一般的にアンケートは定量調査の方にカテゴライズされることの方が多いかもしれません。だけど私は、どちらかといえば定性調査を行う時の脳でアンケートを設計します。それは、ユーザー心理を考慮した定性的な設問設計が必要になるからです。

例えばサービスのユーザー向けに「この機能に満足していますか」とか「新しくこんな機能を開発予定ですが使ってみたいですか」と直接聞かれる設問。こうした直接的な聞き方では、なかなかユーザーの本心を引き出せません。ちょっと昔、リーンが流行った頃からWebサービスを使ってる時にこういうアンケートをよく見るようになりました。

「このサービスを、家族や友人など親しい人にどの程度勧めたいと思いますか?」

このタイプよく見ますよね。人に勧めたいか聞いてくるやつです。直接自分が満足しているか訊くよりも、人に勧めるというある種自分の信頼に関わるような行動に置き換えて訊く方がより正確な評価になるということで、みんなこういう聞き方を採用しています。

これは分かりやすい例ですけど、直接「満足しているか」や「使ってみたいか」を訊くのではなく、より正確な評価が得られやすいように設問を工夫する必要があります。

  • 問. お金を払いたいと思えるものはどれですか
    • お金を払うという高いハードルを課して、それを超えてでも利用したいと思えるものを選んでもらう。
  • 問. 実際に使い始めた時に選んだ理由を教えてください
    • 今から選ぶ時に基準とすることではなく、実際に過去に行った選択の理由を訊く。
  • 問. 普段サービスを使う時に気に入っているものを選んでください
    • サービスのコアバリューを確認したい場合も、普段日常的に意識していることを訊く。仮定の話をしない。

こうした選択式の調査は結果が定量的に得られますが、定性調査で行うユーザーインタビューの設計と似た思考が求められます。

アンケート設計のコツ

アンケートを行う時には、個別の設問だけでなく、全体の流れや聞き方にも様々な工夫が求められます。以下はアンケートを作る際に個人的に工夫していることです。

設問の流れ

属性を聞く設問 -> 本題の設問 -> フォローアップの設問

アンケート全体の流れはだいたいこの順番にしています。

いきなり本題に入る前に、まず回答してくれる方の属性を分類するための質問をします。アンケート結果で属性ごとに差が出るのか比較するため、クロス集計ができるように属性情報を集めるわけです。例えば年齢や職業などの基本属性に加えて、サービスの利用頻度や利用環境、利用目的などを聞きます。

次にアンケートで一番聞きたい本題の設問を持ってきて、最後がアンケートで回答しきれなかった意見を拾い上げるための自由記述の設問や、アンケート回答者に後からユーザーインタビューを行うための、インタビュー参加意向を問う設問で締めます。

パッケージデザインを用いた設問

まだ提供前の機能や企画についての反応を知りたい時がありますが、まだ出ていないものを文字だけで説明するのは難しいものです。そういう場合にパッケージデザインと呼ばれる、その機能をリリースした時に作るバナーのような1枚絵を作って、それを見てもらった感想を聞きます。

パッケージデザインは1枚の画像なので、デザイナーさんに作ってもらうこともありますが、自分でパワポやKeynoteで作る場合もあります。パッケージとは、ユーザーが商品を手にとる時に目にする、そのサービスを象徴するようなキャッチコピーや図案が描かれたビジアルです。Webサービスの場合、広告を打つ時のLP(ランディングページ)をイメージすると分かりやすいかと思います。LPのファーストビューのワイヤーフレームを作ってる気持ちで1枚の画像を作って、それをアンケートフォームに貼り付けて設問に使っています。

狙いを外した時のリカバリーを考えておく

これから開発をしようとしている企画について、開発前に感触を伺って軌道修正の必要がないか確認するためのアンケートを実施する場合があります。いい反応が得られれば良いのですが、思いっきり外してしまった場合に打つ手がなくなって困るので、もし狙っていた企画が外れても挽回するための設問を設けておいて、改善の足掛かりにしています。

挽回するための設問というのは、例えば改めてモチベーションを聞く設問だったり、プランBやプランCを用意しておいてそっちの感想も聞いておくような設問です。たとえプランAへの反応が悪くても、こういうモチベーションが強いならそっちを柱にしてもう一度練り直してみたり、用意しておいた別のプランに切り替えるきっかけにすることができます。アンケートは漠然と聞くだけでなく、ある程度回答傾向をいくつかのパターンごとに予測しておいて、意図をもって質問内容を吟味しておくことが大切です。

アンケートはあまりコストをかけずに気軽に行える良さがありますが、しっかりと意図を持って設計に工夫を施すことで、定量的なデータに加えて定性的にユーザー心理を理解する助けになります。設問内容や選択肢のテキスト1つ取っても、工夫次第で得られる情報量が全然違ってくる。たかがアンケート、されどアンケート。腕の見せ所です。