企画とは何か

Webディレクター解体アドベントカレンダー4日目の記事です。今日は企画とは何か、その周辺領域や企画を構成する要素を紹介しながら紐解いていきます。ちょっと偉そうですが、スタンス気にしてたら何も書けないので見逃してください。

人それぞれ

ディレクター周辺のスキルツリーを「ビジネス」「企画」「プロジェクトマネジメント」「チームマネジメント」の4つのブロックに分けましたが、この内の企画以外の領域はそれぞれ各分野を深く掘り下げた書籍が多数出版されています。だけど企画、特にWebサービスの企画そのものにフォーカスした書籍ってどれくらいあるでしょうか。勿論あるにはありますが、サービスの作り方みたいな開発手法を紹介したようなものや、もっと広めのアイデアの閃き方みたいな本、起業とかリーン開発手法を紹介したシリコンバレー風の本など、なかなかWebディレクターが日々行うWebサービスの企画にフォーカスした本ってあんまり見かけません。

だいたい企画って誰でもできるものです。会社の飲み会の企画とか、週末家族でどこ行くか企画するとか、身近にあって誰もが日常的にやっているのが企画です。だからそのやり方も、企画という言葉が示す範囲も人によってバラバラ。みんなそれぞれの体験を元にそれぞれのやり方で企画しています。企画のやり方に正解も何もない。目的が達成できればいいわけだから。

実際、僕自身も誰から教わるでもなく、自分なりのやり方でずっと企画の仕事をしてきました。だけど、これまた人に教えようとした時に困るんです。去年の夏に会社のインターンで企画の講義をして欲しいと頼まれた時に、どう説明したら良いか悩みました。ああでもないこうでもないと考えて、何とか言語化して資料にまとめて講義をした時に、自分の中でもああこういうことだったのかと改めて腑に落ちた感じがしました。

自分が当たり前だと思っていることでも、言葉にしてみると新たな発見があるものです。企画とは何か。まずはその言葉の定義からです。

何をやるか決めること

企画とは何か。それは「何をやるか決めること」です。あまりに当たり前すぎてそんなこと知ってるよと思われることでしょう。だけど、逆に言えば何をやるか決めるのが企画であって、それ以外は企画ではないとも言えます。それ以外というのは「なぜやるか」や「どうやるか」です。

[名](スル)ある事を行うために計画をたてること。また、その計画。くわだて。 https://dictionary.goo.ne.jp/word/企画/

goo辞書で企画という言葉を調べると、こんな結果が返ってきます。企画とは、計画を立てることであると。確かに企画を立てる人のことをプランナーと呼びますし、planningを翻訳したら計画になります。では、計画と企画は同義でしょうか。特にWebの開発現場において、本当に企画=計画でしょうか。

私は何もないところからいきなり計画を立てられる自信がありません。まず何をやるか決めて、企画をしてから計画を引き始めます。ゼロからイチを生み出すもの。最初に何をやるか決めるもの。それが企画の一番原初的な核の部分だと思います。だから勝手に、企画とは「何をやるか決めること」であると、そう定義しています。英語で「What」です。

企画の周辺領域

Whatの周辺には、WhyとHowがあります。企画は「なぜやるか」と「どうやるか」に挟まれた、何をやるかという部分です。図で表すとこうなります。

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なぜやるか、特に複数の職種の人たちがチームを組んで組織で開発を進める場合に大事になってくる要素です。なぜそのサービスを作るのか。お金のためですか。流行ってるから何となくでしょうか。そんな志で作るサービスが良いサービスになりますか。なりませんよね。でも開発チームに浸透した使命や明確なビジョンがあったら、みんなで同じ方向を向いてサービス開発ができると思います。だからなぜやるのか、Whyが大事になってくる。でも、それは企画ではありません。企画の源になる思想をもたらしてはくれますが、企画そのものではありません。

どうやるか、これも複数人で開発を進める時に大変重要ですよね。人数が増えれば増えるほど大切な要素です。開発費をどう捻出して、開発メンバーをどう集めて、どういう開発フローを経て、どんな技術を採用してどう作るのか。開発を進めるには無くてはならない要素です。でもこれも、企画そのものではありません。どんなに優れた開発チームがどんなに早いスピードで開発を進められても、何を作るのか決める時点で間違っていたらどうにもなりません。誰にもニーズのない誰も使わないものを、どんなに高品質でどんなに安価で作ったって意味がないからです。

なぜやるか、何をやるか、どうやるか。この3つががっちりと噛み合った時に、良いものが生まれます。どれが欠けてもだめだけど、無から有を生み出して動き始めるには何をやるかまず決めないといけない。そうでなければ何も始まりません。だから、企画の一番大事な根源的な要素は「何をやるか決めること」だと思っています。

何をやるか決める方法

何をやるか決める時、みなさんはまず最初に何をするでしょうか。例えば会社の飲み会を企画してって言われたら、最初に何をしますか。何を食べるか、どの辺の場所にするか、お店のキャパシティどれくらいにするか、予算をどうするか。決めることは色々あります。多分みんな最初は調べますよね。参加人数は何人かとか、飲み会の目的は何かとか。彼女をデートに誘う時もそうじゃないですか。彼女の好きな食べ物は何か、趣味は何か、アウトドア派かインドア派かでデートプランは変わってきます。

企画を始める時、一番最初やるのが調査と分析です。企画の大部分はここで決まってしまうと言っても過言ではありません。前提が間違っていたらどうにもならないからです。インターネット上のミームで「顧客が本当に必要だったもの」っていう画像をみたことありませんか。木の枝にぶらさがったブランコ、本当に必要だったのはタイヤがぶら下がったもので十分だったっていうやつです。これは風刺画ですが、顧客が求めてることを調査してきちんと分析できていればこうはならないはずです。

調査・分析で材料が出揃ったら、いよいよ企画そのものを考えるターンです。たまに、企画とアイデアを混同されることがあります。企画って、アイデアをひらめくことでしょ?みたいに。でも思い出してください。企画というのは何をするか決めることです。ひらめいたアイデアが元になって何をするか決めることはあります。でも、決めることとアイデアはイコールじゃない。あくまで何をやるか決める時に元になる一つの種にすぎません。アイデアのひらめきがなくても、調査・分析フェーズで揃えた材料から論理的に組み立ていくことで企画がまとまるケースも多いと思います。論理的構想か飛躍的発想か。企画はだいたいこの2つのどちらか、もしくはその両方を駆使して生み出されます。これについてもまた別途、詳しく説明したいと思います。

きちんと調査・分析をしてユーザーのことが理解でき、その材料を元に何をやると良いか決められたら、最後にその企画を通す必要があります。どんなに良い企画でも、通らないと実現できないからです。だからこの企画を通すところまでが、私は企画の範疇だと思っています。自分の言葉で提案して、実現できるよう調整して企画を通すところまでです。さっきのWhy, What, Howの図に書き加えるとこんな感じです。

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この真ん中のところ、Whatに当たる部分が企画です。これが私の考える企画です。異論も反論もあるでしょう。企画は人それぞれで、定義にも手法にも正解はありません。でも、これが企画です。