スキルツリー各項目の説明

Webディレクター解体アドベントカレンダー2日目の記事です。今日は、昨日紹介したWebディレクターのスキルツリー末端にある各スキルをそれぞれ簡単に説明します。スキルツリーを記入する時に、この項目は何を指しているのかわからないというような時に参照していただければと思います。

便宜上各項目はそれぞれ独立したスキルとして書き出していますが、似通ったものや領域の重複するものもあります。またスキルの単体でそれぞれ独立した1つの専門職として成り立つものも多く、雑なくくりになっているものもあるでしょう。

ただスキルツリーは全体感を把握するためのものなので、あまり各項目の細かな差異や定義は気にせず、何となくこれやったことあるな、得意だな、苦手だなくらいの温度感で記入してみて下さい。

ビジネス

ビジネスのブロックはそれぞれ独立した専門職として成立するものが多く、本来とても1つにくくれるものではありません。またサービスのドメインによって必要となる知識やスキルが大きく異なるため、ここに挙げたものがマッチしない事業も多いと思います。それでも、これまであまり事業全体やビジネスモデルについて考えたことのない方が守備範囲を広げようとする時の道標の1つとして活用してもらえればと思います。

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  • 事業開発
    • 新規事業立ち上げ
      • 新規事業の立案に必要なスキルはほとんど企画そのものです。しかし事業の立ち上げとなると、ビジネスや特定ドメインの知識はもちろん、最後までやり切るだけの胆力や人を巻き込むコミュニケーション能力など、複合的な総合力が問われます。その分難易度も高く、事業立ち上げ経験の有無がキャリアに与える影響も大きいため、個別の項目として切り出しています。
    • 予算管理
      • 与えたれた予算(工期や人員)の中でプロジェクトを回すだけでなく、自ら収支を調整しながら予算を管理するスキルです。単純なお金の勘定や管理に加えて、予算が膨らんできたときにどうするか、どう帳尻を合わせていくかなど対応の引き出しの広さや経験も問われます。
    • 営業・顧客開拓
      • ビジネスの種類によっては特定の顧客に営業をかけて商品を販売したり、プロダクトを誰かに売り込んで購入してもらうものもあります。また他社と協業で事業を行う場合のアライアンスなど、所謂営業のスキルが必要になるケースがあります。
    • 交渉・折衝
      • 一つ上の「営業・顧客開拓」に似ていますが、そちらが新たな関係を切り開く方なら、こちらはそこから条件などを調整してクローズしていく方のスキルです。開発費用やレベニューシェア料率のようなお金の交渉から、納期や契約内容などの協業条件の調整も含むイメージです。
  • マーケティング
    • 市場分析
      • 競合サービスの状況や、自社のプロダクトがそのサービスドメイン内でどのようなポジションにいるのか、現状を調査・分析するスキルです。リサーチャーという専門職種の存在する領域ですが、市場分析と次のユーザー理解の2つに分けるに留めています。
    • ユーザー理解
      • 企画のブロックにも「定性調査」があり、ユーザー理解はそのほとんど包括していますが、定性調査は必ずしも自分で行う必要がないため項目を分けてマーケティングの1要素として項目を設けています。
    • プロモーション
      • これも1つの職業が成り立つ領域ですが掘り下げるときりがないので1つの項目に押し込んでいます。プロモーションが非常に重要なプロダクトを担当している場合などは、この項目を各自で細分化してみてください。
  • ドメイン知識
    • マネタイズ(Web広告・課金等)
      • Web広告はそれ単体で非常に専門的な知識を必要とする領域ですが、ビジネスを考える上でそういったマネタイズ独自の専門性が必要になるケースも多く、マネタイズ全般で1つの広告にまとめてみました。ここも必要に応じて細分化してください。
    • 特定業界(EC・UGC・メディア等)
      • サービスのドメインによっては、特定の業界の専門知識なしにビジネスモデルを考えるのが難しいものもあります。そうした場合には、その業界ならではのドメイン知識が必要になります。そうした特定の分野に特化した専門性というものは身につけていると独自の強みを持つ自分の武器になってきます。必殺技のようなスキルです。
    • 周辺領域(法務・経理・SEO等)
      • ビジネスを考える上で、景表法などの法律の知識や、減価償却などの経理的な知識が必要になる場合があります。サービスによってはSEOが肝になるなど、必要となる専門知識は様々です。自分たちの事業内容に応じて項目を追加してください。

企画

企画のブロックはディレクターやプロダクトマネージャーといった、プロダクトそのものに責任を負う立場の人たちにとって、最も重要なスキル群だと思います。企画は特にふわっとしていて人によってやり方も考え方も全然違う分野ですが、調査分析から企画そのもの、そして企画を提案して通すところまでをこのブロックで扱っています。

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  • 調査・分析
    • 目標設計・KPI設計
      • 調査・分析は基本的に定性と定量に分かれますが、やみくもに数字を取ったりユーザーインタビューしても効果的な解は得にくく、最初の課題設定や目標とする数値の分解が重要になってきます。そのため、調査・分析の最初のスキルとして目標設計を切り出しています。
    • 定量調査
      • 定量調査は数値に纏わる調査やデータ分析を包含した項目です。グロースというのも1つの専門スキルのようですが、定量調査の結果を受けて企画をし、プロジェクトマネジメント的なスキルを生かしながら実行してまた定量調査を行うものなので、一部このスキルに含まれると考えています。
    • 定性調査
      • 定性調査はユーザーインタビューやグループインタビュー、ユーザーテストなどの対面で調査を行うものから、アンケートやお問い合わせなどを通じたテキストでの調査など、数値以外の調査・分析スキルを包含するものとして切り出しています。
  • 企画
    • 戦略策定
      • 戦略策定はスケールの大きな企画であり、これ単体で特定のスキルが必要になるものではありませんが、単体の企画を超える大きな視野や視座を持っているか、対競合戦略や成長戦略などの単体の企画を超えたサービスの道順を指し示すことができるかといった視点で、個別のスキルとしています。
    • 論理的思考
      • 企画そのものを考えるときは、大きく分けると「論理的思考」と「飛躍的発想」のどちらかのルートを通ることになります。そのうちの前者、調査・分析のフェーズで得た分析結果を元に論理的に企画を組み立てていくタイプの企画手法をスキルとして切り出したのがこの項目です。
    • 飛躍的発想
      • 企画を行う際にしばしば、複数の課題を一気に解決しないといけないケースなど、論理的に答えを導くだけではうまく解が見つからない場合があります。そうしたときに、もう一つの企画手法として飛躍的な発想が求められます。
    • UX設計
      • 近年のプロダクト開発において、ユーザー体験の設計はサービスそのものの企画と切っても切れない関係になっています。UX設計は元々プロジェクトマネジメントの設計部分に置いていたのですが、企画と不可分ということもありここにも置きました。企画というのはキャンペーン企画など単発でも成り立ちますが、ユーザー体験の設計は言わば流れのデザインです。ユーザーにどこから来てもらって、どういう体験をしてもらい、どうやってもう一度来てもらうか。サービスを離れたところも含めて体験を一連の流れとして考えるスキルです。
  • 提案・調整
    • 企画書・提案書作成
      • 企画を通すための提案・調整パートの最初に、企画書や提案書を作成するための、ドキュメンテーションのスキルを置いてみました。きれいな資料を作成するだけでなく、誰に向けて何を訴えかけるのかといった、提案時の作戦を練るところからドキュメントの作成までをカバーするスキルです。
    • 文章・告知文執筆
      • 人に企画を伝える時にはもちろん、言葉を用います。後述するスピーチのスキルとは別に、そもそも伝える内容を言語化するという文章力が必要です。そうした自ら考えた企画を通すための言語はそのまま、リリースする時にユーザーへ伝えるための言語としても使えます。
    • プレゼンテーション・スピーチ
      • 企画を通す時には前述した言語化の能力に加えて、それをプレゼンしたり言葉で説明して伝える力も必要になります。特にスピーチにおいては内容以外の部分でスピーチの良し悪しの8割が決まると言われるほど、話し方や表情など、言語外の要素が相手の心象に大きな影響を与えます。
    • 社内調整・社外調整
      • 企画を言語化してドキュメントにまとめ、プレゼンを一発かませばそれで企画が通るとも限りません。たとえ通ってもその後に如何に実行フェーズに移していくかといった部分で調整が必要になったりします。社内の開発チームに説明に行ったり、関連する部署と調整したり、さまざまな調整を行う上でのスキルをこの項目にまとめています。

プロジェクトマネジメント

プロジェクトマネジメントについては、様々な技術書で掘り下げられている特に専門性の高い分野ですが、本スキルツリーではアジャイルでもウォーターフォールでもカバーできるように、広く浅く項目を設けました。

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  • 開発フロー・開発手法
    • 手法への精通
      • プロダクトの内容やビジネス形態、開発メンバーとの相性によってその時々で最適な開発フローは異なります。アジャイルでもウォーターフォールでも時と場合に応じて最適な手法を選択できることが望ましく、引き出しの多さという意味で1つのスキルとして項目を設けました。
    • 体制構築(ツールや運用体制の選択)
      • 開発手法に合わせて、会議体の設計や指揮系統の整備、利用するツールの選定など、実際の開発体制を構築していくスキルです。
  • スケジューリング
    • 見積もり
      • 実際に見積もりを行うのは現場の開発メンバーですが、進め方を定め進行を担当したり、見積もりの管理やバッファの設定、再見積もりが必要になった時の頭出しなど、進行を管理する立場から行う仕事を扱う項目です。
    • マイルストーン設定・ロードマップ作成
      • 中規模から大規模な開発の場合、リリース前に複数の適切なマイルストーンを設定した方が良いケースや、中長期のロードマップを定めておいて全体の進行を管理するケースもあります。そうした少し長めのスパンで全体を俯瞰した視点が求められるスキルです。
    • スケジュール調整
      • 実際の開発現場では当初の見積もり通りに進むことは稀で微調整を繰り返しながら開発を進めていく場合がほとんどです。そうした進行中の調整から、大きく予定が変更になった場合の調整まで、様々なケースに対応できる柔軟性が求められるスキルです。
  • 仕様策定
    • 画面設計・UI設計
      • 画面や遷移はデザイナーが設計する場合が多いですしその方が良いものができると思いますが、プロジェクトのマネジメントをする上で過不足の確認や、工数との兼ね合いで削らないといけないイントラクションの調整など、デザイナーやフロントエンジニアと会話するための基礎知識は必要になるケースもあり、スキルツリーの項目として選びました。
    • 技術仕様・システム設計
      • 技術仕様も同様で、通常エンジニアが設計するものですが、こちらも複数の設計が考えられる場合に取捨選択をしたり、ステークホルダーに選択理由を説明するなど、技術的な素養を求められるケースもあり、設計スキルの1つとしました。
  • 進行管理
    • タスク(チケット)管理
      • 日々のタスクの進捗管理やアサインの調整など、タスク管理全般を範囲としました。単にツールを使ってチケットを切るだけではなく、進捗を確認しながら先回りして調整を行なっていくためのスキルです。
    • ファシリテーション
      • 開発の進捗確認や、振り返りなど開発の進行に不可欠な各種ミーティングを進行していくためのスキルです。
    • 分析・レビュー・振り返り
      • 最初に定めた開発フローを進行しながら振り返り、問題点を分析して常にチューニングしていく必要があります。そうしたレビューと分析を通じて、課題を発見して解決するためのスキルです。
  • 品質管理
    • QA・テスト設計
      • リリース前のデバッグやQAなど、品質管理のためのテストの設計とその実行のための知識とその周辺スキルを扱う項目です。

チームマネジメント

このチームマネジメントは特定の職種に限定されない普遍的なマネジメントのスキルそのものを指すブロックです。機能横断の開発チームや職種別のチームなど、会社や組織によってはディレクターがチームマネジメントやピープルマネジメントまで担当することもあり、ディレクター関連スキルの1つとしてスキルツリーに記載しています。

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  • コーチング
    • ミッション・ビジョンの浸透
      • プロダクトの存在意義や、なぜやるのかに該当する意義をチームへ浸透させるための行動全般です。
    • 目標設定・キャリアパスの提示
      • 短期的な成果だけでなく、長い視点での目標設定や将来的なキャリアパスの提示など、目指す行き先を如何に提示できるかが問われる項目です。
    • 熱意・愛情・思いやり
      • スキルとは少し趣が異なりますが、開発チームや自分の部下に対して本当の意味で関心を持てるのか、情緒的な素質を問う項目です。
  • 育成・教育
    • 行動スキル
      • 専門職の専門的なスキル以外の、組織としてともに開発を進める上でのスキル全般を指します。報告連絡相談などの基本から、日々の課題発見や改善提案、論理思考や説得力など幅広い社会人としてのスキル全般の育成についての項目です。
    • 専門スキル
      • 専門職の専門的なスキルを育成するための教育がどれだけできるかを問う項目です。通常エンジニアの教育はエンジニアが、デザイナーの教育はデザイナーが担いますが、タスクの差配をディレクターが行うケースもあり、教育的な観点が必要になるためスキルツリーに掲載しています。
    • 実務を通じたメンバー育成(アサイン・レビュー等)
      • タスクのアサインや行った仕事に対するレビューなど、日々の実務を通じて行う育成・教育がどこまで意識できているかを問う項目です。
  • メンバー活用
    • 組織戦略・権限移譲・体制構築
      • 直接的なメンバーのマネジメントだけでなく、上司のマネジメントも含む、組織全体の体制構築や組織戦略の策定を担うスキルです。
    • 採用
      • マネジメントを行う立場の場合、採用に関わることも多く、面接や選考などの採用に関わるスキルも項目として設けています。
    • モチベーション促進
      • 本人の特性に合わせた仕事のアサインや、ミッション・ビジョンの浸透など、如何にメンバーのモチベーションを高めながらやる気を引き出せるかもマネージャーとして問われるため、スキルとして切り出しました。
    • 勤務時間・体調管理
      • リモートワークの浸透もあり、なかなか目の届きにくい環境にいるメンバーも増えていくる中で、メンバーの勤務時間や体調の把握をしながらマネジメントしていく必要性も高まっており、項目として設けてみました。