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Webディレクターのスキルツリー

Webディレクター解体アドベントカレンダー初日の記事です。今日はWebディレクターという職種を定義するために作ったRPG風のスキルツリーとその活用方法を紹介します。あとは関連する他の開発メンバーとお互いの担当範囲を明確にする方法や、スキルツリーをスキルアップに役立てる方法について書きます。

曖昧な仕事

Webディレクターという職種に期待される仕事の内容は、開発に関わる他の職種と比べても非常に曖昧です。そもそも何ですか、ディレクションって。英語を直訳すると方向とか指示とかそういう意味ですけど、概念的でふわっとしています。

ディレクションという仕事に含まれる範囲も様々です。受託でホームページ制作を請け負って進行管理をメインに行うWebディレクターもいれば、既存自社サービスの売上増に責任を負う人も、新サービスの立ち上げに挑戦する人もいて、同じディレクターという名前でもやっている仕事が全然違います。同じサービス運用でもサービスドメインによって違うし、同じサービスドメインでも会社によって違うし、更には同じ会社でもチームによって違う。もうめちゃくちゃです。

今から6年くらい前、会社で若いディレクターのメンターをやって欲しいと言われた時も困りました。ディレクションを人に教えるのはいいけれど、何を教えたらいいんだと。そもそも自分の職能を整理できていないのに、人に教えることなんてできないと。

スキルツリー

そこで作ったのがスキルツリーです。RPGでキャラクターのスキルをだんだんアンロックして、必殺技とか魔法とかを覚えていくいくあれのイメージで系統立てて整理できるといいかなと思って作りました。最初に作ったバージョンから項目はブラッシュアップしていますが基本的な形は変えていません。

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使い方

ツリーは大きく分けて4つのブロックに分かれています。「ビジネス」「企画」「プロジェクトマネジメント」「チームマネジメント」の4つです。全体を眺めて、自社のWebディレクターにこのスキルは不要というものも多数あるでしょうし、逆に必須なスキルがないかもしれません。でも一旦脇において、まずこの項目で現在の自身の習熟度を記入してみてください。最初は整理して相対化することで、足りないものや不要なものを洗い出すことが大事だからです。各スキルの説明は明日また改めて記事を書く予定です(追記:書きました)。この項目は何を意味しているんだろうと迷うところがあったら、明日また見にきてください。

めんどくさいけど、まず紙に印刷することをおすすめします。その方が雰囲気が出るからです。テーブルトークRPGみたいで楽しいですよね。画像をダウンロードしてiPadでアップルペンシル使って上から描いていくのでもいいです。右上に自分の名前を記入したら、スキルツリーの末端の項目に自分の習熟度を順番に埋めていきます。ツリーの右側、枝分かれした先の細かい項目からです。記入するのは以下四段階の印です。

  • ◎:得意なもの、人に教えられるもの
  • ◯:できるもの、普段からやっているもの
  • △:苦手なもの、やったことはあるが不安なもの
  • ×:できないもの、やったことがないもの

ツリーの末端のスキルに習熟度を全部記入し終わったら、次はツリーの真ん中のスキル、最後にツリーの4つのブロックのもとになっているところと順番に記入してみてください。枝葉から幹へ、根っこへと順番に辿ることでどのスキルがどこに繋がってくるのか理解しやすいと思います。

全て記入したらこのスキルツリーに足りないスキルがないか考えてみてください。これはあくまで私が必要だと思ったものを体系化したもので、必要なスキルは事業によって、会社によって、チームによって異なります。足りない項目があったら、既存のツリーのどこから枝を生やすと良いか考えて、そこから線を引いてツリーに新たな枝を生やしてみてください。項目を追加したら既存の項目と同様に自分の習熟度を記入します。

次に、このスキルツリーの中で自分が担当していると思う部分をぐるっと線で囲ってください。このスキルツリーに記載された全ての項目を業務で担当されている方もいれば、一部のみという方もいるでしょう。現在のプロジェクトで求められているスキルだけでなく、自分の仕事として本来はここまでカバーできているべきというところも含めてかまいません。

自分の担当領域を線で囲ったら、最後にシートの右上に自分の職種名を書いてみましょう。自分が線で囲った範囲は、何と呼ばれる職種なのでしょうか。自分はこういう職種だという主観でかまいません。名前をつけてみてください。

ここまでできたら、自分のスキルツリーの完成です。次はこのスキルツリーの活用方法を紹介します。

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担当範囲を明確にする

これまでWebディレクターが担うべきスキルの範囲については特に明示せずに説明を進めてきましたが、実際にはこのスキルツリーの内、全ての項目を業務として担当している人ばかりではないと思います。このスキルツリーの項目をどういう職種の人たちで各々どの範囲を担うのか。自分の担当範囲を明確にして、他の開発メンバーとの分担をはっきりさせることが大切です。

担当範囲や職種の名称は会社やチームによってかなり違ってきます。例えばプロデューサーとディレクターという分け方をする会社もあるでしょう。プロデューサーは事業や売上に責任を持ち、ディレクターはプロダクトや企画に責任を持つという分担が多いと思います。スキルツリーで言うとこういう分け方です。

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この例とは異なって、企画まで行うプロデューサーがいたり、企画は任せてプロジェクトマネジメントに専念するディレクターもいるでしょう。逆に企画をメインで行って、マネジメントはエンジニアに任せるというディレクターもいます。それらの役職とは独立して、プランナーと呼ばれる企画だけを行う職種があったり、データアナリストと呼ばれる定量調査・分析だけを行う職種もあります。本当に組織によって様々です。だからこそ、こうして一度整理してみると良いと思います。

担当範囲の分け方として、最近はプロダクトマネージャー(PdM)とプロジェクトマネージャー(PjM)という分担が主流になってきました。広告と課金くらいしかビジネスモデルのなかった頃と違ってWebのビジネスが多様化し、ビジネスとプロダクトは不可分になってきたからです。スクラムの文脈だとプロダクトオーナー(PO)とスクラムマスター(SM)という名称を用いることもあります。開発チームに於いても素早くPDCAサイクルを繰り返すアジャイルと呼ばれる開発手法が一般的になり、開発の進行管理にも強い専門性が求められるため、プロジェクトマネージャーやスクラムマスターがディレクターとは異なる専門の職業として認知されつつあります。スキルツリーで表現すると、こういう分け方になるでしょうか。

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最後にもう1つ、チームメンバーのマネジメントを誰が担うのかも組織によって異なります。詳しくは明後日の記事で書こうと思っていますが(追記:書きました)、機能横断の組織と機能別の組織で専門職のマネジメントを誰が行うのかが変わってきます。機能横断ならプロデューサーやディレクターなど、プロダクトのマネジメントを行う人がチームのマネジメントも行い、機能別ならエンジニアやデザイナーなどその専門職のマネージャーが担当します。チームマネジメントやピープルマネジメントを誰が担うのか。それを確認しておくためにもスキルツリーを活用してみてください。

キャリアプランを描く

このようにスキルツリーは、一人で眺めて自分のスキル分布を把握するために使うだけでなく、他の開発メンバーとの役割分担や担当範囲の明確化に役立てることもできます。加えてこのツリーを自分の上司と共有してキャリアプランを一緒に描いたり、部下の教育を行う際の道標にも使うのも効果的です。

記入が終わった自分のスキルツリーを眺めて、今後伸ばしていきたいところはどこか考えてみてください。そして先程記入したスキルツリーの、伸ばしたいと思っているスキルの項目に☆印を描いてみてください。人によっては1つの専門性を突き詰めたスペシャリストを指向する人と、満遍なくいろんなスキルを伸ばしていきたいと思っている人、得意なところをさらに伸ばしたいと思っている人、苦手を埋めたい人など様々です。まずは自分が自分のキャリアをどうしていきたいのか、どこを伸ばしてどういう道に進みたいと思っているのか、明確に言葉にはできなくても描いた☆印が何となく表してくれます。

自分が上司として育成に責任を負う立場なら部下にスキルツリーに記入してもらって、それを元に今後どこを伸ばしていきたいかという会話をすると良いと思います。そして部下に仕事を任せるときに、本人が伸ばしたいと思っていることや得意だと思っていることを意識しながらタスクの差配をします。実際私も毎週やっている部下との1on1の場で、毎週のアジェンダの一番下にスキルツリーを貼り付けてもらっています。毎週毎週振り返る必要はないと思いますが、目の触れるところに置いておいて、どこを伸ばすためにどういうタスクを振ると良いか考えるようにしています。

一定期間ごとに行う目標設定の時に使うのも効果的です。今後どこに注力しながらスキルを伸ばしていきたいかという本人の希望を把握できていると、目の前の仕事だけでなく少し長めの目線で目標の設定を行うことができます。どうぞご利用ください。